板倉聖宣『科学的とはどういうことか』の紹介①/読者の方の要望に応えて

 以前紹介した〈板倉聖宣著『科学的とはどういうことか』仮説社〉について、もう少し中身を知りたいという要望が届いています。有料メルマガでは詳しく紹介したのですけど、このサイトでは別な部分から紹介してみましょう。
 気に入った方はぜひ入手することをすすめます⇩クリック

 板倉聖宣先生はおそらく科学の本、科学的な見方考え方に関する本を日本で最も多く書いていると思います。膨大な著書の中で、この『科学的とはどういうことか』は小学校高学年の科学に興味関心を持った子どもたちから中学、高校生、そして大学生大人まで幅広い読者を対象にした科学入門の本です。
 板倉先生の本はどれも読みやすいのですけど、この本は幅広い年齢の読者を想定しているので、その中でも特に読みやすく書かれています。

 メルマガで紹介した内容に少し手を入れて、半分くらい紹介します。

いっきゅう筆

 みなさんは霊視などをはじめとする、いわゆる〈超能力〉を信じているでしょうか。

 ア.超能力は確かにあると信じている

 イ.もしかすると超能力というものがあるかもしれないなぁ、と思っている

 ウ.超能力はおそらくないと思う

 エ.超能力はぜったいにないと思う

   どうしてそう思いましたか?

 霊視のように未来のことを予知するという能力といえば、占いもそうですね。
「A型の方は赤系の服を着けると幸せが訪れます」的な占いが公共のテレビで流れていることには何とかならないのかと思っているのですけど、みなさんはどうでしょう。
 A型の人たちは何千万人もいて、その中にはラッキーなことがあった人もいるため、うやむやになってしまいます。
 けれどたとえば「心臓病で苦しんでいる人たちは赤系の服を着ると良いことが起こります」なんて語る勇気のある占い師はいないでしょう。だってそれは何の根拠もない作り話だからで、医学界からの逆襲にあい、商売が成り立たなくなるでしょう。だからそういうように正否がハッキリするステージに立つことはありません。
 そういうことに目くじらを立てるのは大人気ない、占いなどの未来予知は、遊びとしてつきあえばよい、と思っている人たちは、そういう情報にさらされていく中で本当にそれらを信じてしまい、いろいろなグッズを買ったりしていることを知らないのでしょう。本屋さんに行けば、そういうスピリチュアル系の本がたくさん出版されています、遊びでなく本気で信じている人たちがたくさんいるという証でしょう。
 未来予知を超能力だとすると、科学はかなりの超能力を与えてくれます。〈10年後の5月29日12:00にハレー彗星がどの位置にあるか〉ということも正確に予測することができます。もちろん隕石が衝突して軌道を変えてしまう可能性はゼロではないとはいえ、その計算はかなり的確です。DNA検査で「あなたは20年以内に心臓病を発症する危険が70%あります」という予測ができます。そして「今から脂質を減らして一日一時間程度の運動を取り入れてください」という具体的な解決策を提示することもできます。
 やはり庶民が頼ることができるのは「科学」しかないのだと私は思っています。

 板倉先生が「超能力で行方不明の少女の死体が透視されて発見された」というテレビ番組について書いた話があります。
 メルマガで随分前に板倉先生の「私の新発見と再発見」から《超能力と私》という話を載せました。けっこう反響があったのを覚えています。今回はそれとは別な話です。

 何回かに分けて紹介しましょう。

「超能力であたった」という話 
追試ができなければ科学にはならない

板倉

 スプーン曲げ事件から一年、1976(昭和五十一)年5月のことです。こんどはNETテレビが「超能力で行方不明の少女の死体が透視されて発見された」と大騒ぎを演じました。少女の死体発見というのですから、新聞やテレビもそれをニュースとして流さないわけにはいきません。そこでこのニュースは一度に有名になりました。
 NETといえば朝日新聞社系のテレビ局です。ユリ・ゲラー、スプーン曲げ事件のとき、そのトリックをあばく主役を演じたのは朝日新聞社の「週刊朝日」だったから話は少しややしくなりました。その事件がテレビや新聞紙上をさわがせていたとき、私はちょうど出張中で、その新聞も見ていませんでしたが、研究所に行ってみると、またなにやら超能力の話題で人々がさわいでいます。

 そのうちに『週刊朝日』の記者の人から電話がかかってきました。「これについてどう思うか、意見を書け」というのです。それで、その記者のほか何人かの人からくわしい事情をきき、新聞にのった記事を見ました。それらによって事件のあらましを説明するとこうなります。
 NETテレビのバラエティ番組「水曜スペシャル」では、視聴率を高めるため、オランダの「透視術者」クロワゼット(67歳)を招きました。この超能力者は、とくに行方不明になった少女の行方を透視する能力があるというので、実際にためしてみようというのです。

 そのとき、当時行方不明になっていた美和ちゃんは「自宅近くの湖面、黄色いものが突き出た、ボート置き場の近くに死んでいる」と「透視」され、NET取材班が現地に行って、5月5日午前5時半ごろ、美和ちゃんの死体を発見したというのです(ただし、この話、どこまでが本当の事実なのか保証の限りではありません。

 

続きをおたのしみに!

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五味太郎のものの見方・考え方から@コロナの前は良かったのか?

 コロナの渦(うず)に世界が巻き込まれていた頃、有料メルマガで絵本作家 五味太郎さんが語った「不安との向き合い方」を紹介しました。

 今でも原文を読むことができます。※画像をクリックするとサイト(wish news)にジャンプします

 コロナの前も社会には問題がたくさんありました。

 今もたくさんの社会問題があります。質問者に対して五味さんが真っ先に語ったのが次の言葉です。

五味
それで、まず聞くけど、逆にその前は安定してた?

コロナ禍じゃなかったときは、居心地がよかった?

 

 、今読んでもあせない切れ味です、読んでみませんか。

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おすすめブックレビュー 太田愛著『未明の砦』Kadokawa@メルマガ最新号から

 今回は最新のメルマガから紹介しましょう、社会派の本格ミステリー小説です。単にパズルを解くかのようなミステリーではなく、読みながら今の社会の問題とそれを突破するヒントを見つけることができると思います。
 内容は〈おすすめ映画の章Plus〉の1/4くらいです。

小説仲間からの紹介『未明の砦』

 最近小説仲間のAさん(県外在住)から「これおすすめです」と紹介されたのが『未明の砦』太田愛さんの2023年の作品です。


 Aさんとは映画とミステリ・サスペンス小説好きという点で嗜好が一致しています、今回の作品は私が大好きな社会派ミステリでした。

 一気に読了。
 ラストはメルヘンチックでうまく進みすぎの点が気になったのですけど、おすすめです。

 第26回大藪春彦賞を受賞しています。
 出版社KADOKAWAの紹介には「書き過ぎだ」と思うほど内容がしっかり書き込まれています、引用しましょう。

 その日、共謀罪による初めての容疑者が逮捕されようとしていた。動いたのは警視庁組織犯罪対策部。標的は、大手自動車メーカー〈ユシマ〉の若い非正規工員・矢上達也、脇隼人、秋山宏典、泉原順平。四人は完璧な監視下にあり、身柄確保は確実と思われた。ところが突如発生した火災の混乱に乗じて四人は逃亡する。誰かが彼らに警察の動きを伝えたのだ。
 所轄の刑事・薮下は、この逮捕劇には裏があると読んで独自に捜査を開始。一方、散り散りに逃亡した四人は、ひとつの場所を目指していた。千葉県の笛ヶ浜にある〈夏の家〉だ。
そこで過ごした夏期休暇こそが、すべての発端だった。
 自分の生きる社会はもちろん、自分の人生も自分で思うようにはできない。見知らぬ多くの人々の行為や思惑が作用し合って現実が動いていく。だからこそ、それぞれが最善を尽くすほかないのだ。共謀罪始動の真相を追う薮下。この国をもはや沈みゆく船と考え、超法規的な手段で一変させようと試みるキャリア官僚。心を病んだ小学生時代の友人を見舞っては、噛み合わない会話を続ける日夏康章。怒りと欲望、信頼と打算、野心と矜持。それぞれの思いが交錯する。逃亡のさなか、四人が決意した最後の実力行使の手段とは。最注目作家・太田愛が描く、瑞々しくも切実な希望と成長の社会派青春群像劇。

本の帯より近しい友人からの紹介の方がよい

 本の帯は賞賛にあふれています。

 けれど売りたい側の広報にはあまり左右されない方がよいでしょう。
 映画の広報でもわかるように「全米が涙した」という、すぐにウソだと思える謳い文句はたくさんあります。

 そういう情報より、信頼する小説仲間からの紹介の方がずっと確かだと思います。
 このメルマガも皆さんにとって信頼できる情報源でありたいと思っています。
 読者のみなさんの中で社会派小説に興味があるという方は、だまされたと思って手にしてみることをおすすめします。

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教育は人間的行為である/たのしい教育の発想法@板倉聖宣が遺してくれた言葉たち

 前回の板倉聖宣先生(仮説実験授業研究会初代代表・元文科省教育研究所室長・元科学史学会会長)の講演の続き、メルマガ創刊第2号(2012年)で編集紹介した内容です。

元気な頃の板倉先生

教育は人間的行為である
板倉聖宣
 人聞は、自分自身が自分自身の評価をする権限があると思うのです。

 自分が賢くなったかどうかということを、他人に評価してもらうのではなく、自分自身が評価する権限があります。
 小学校低学年の子どもたちにとって〈字を覚える〉のは大変たのしいことです。算数ができるということは大変たのしいことです。

 自分たちがそういうことを勉強したことによって、たくさんの問題が解けるということを知っています。

 看板の字が読めたり、あるいは新聞に書いてあるいくつかの漢字が読めたり、自分たちの絵本が読めたりする。そうして「自分が賢くなったんだ」という判定を下すことができます。
 こういうふうに、多くの問題は判定を下せると思うんです。


 もちろん全ての問題に判定を下せるかどうかは私もここで断言することはできません。ものによっては、自分がこういう勉強をしていったい役に立つのかどうかもわからない、わからないけれども先生から見れば「それは勉強すれば役に立つよ」ということもないわけではありません。
 でもそれは今日の教育が効果的でないためにそういうことがおこるんだと私は考えています。

 しかし基本的には、教育がもう少しまともになれば子どもたち自身、教育を受ける者自身が〈その教育のよしあしを判定することができるようになる〉、そしてそれを一つの大前提として研究を進めることができるんではないかと私は思います。
「子どもたちがたのしく実力がつく」ということの他にもう一つ、教育の研究、授業の研究で重要なのはその教育が先生方にとって「楽にできる」ことです。
「授業が楽にできる」ということは、どうも奉呈ほうてい思想の影響でたいへん悪いことのようにとらえられたりいたします。

 「教職は聖職である」ということに大反対する組合の幹部なども「楽に授業ができるということはよくないんじゃないか」なんていったりします。

 楽にできることは罪悪である、苦しまなければ人間の価値がないというのが日本人的発想であるように思います。
 しかし私たちは「楽に授業ができるということが根本的な原理であること」を出発点として研究を進めたい。

 楽に授業ができて、子どもたちが喜び、子どもたちの実力がつくーーとれが私たちの授業研究の大前提でございます。

 だから私たちは、授業研究をしてAの授業法、あるいは授業内容とBの授業法、あるいは授業内容のどちらがよいかということを決めるときには、その2つの授業をやってみて「先生がどちらが楽か、たのしいか」そして「子どもたちがどちらがたのしいか」「どちらが頭がよくなったと思うか」の3つを聞いて判定することにしています。


 ごの判定の基準は、きわめて主観的なものです。私は、「主観的であるからこそこれは客観的なんだ」と主張します。

 教育は人間的な行為です、「人間」が問題なんです。

 ペーパーテストで何点とれたかというのは、これは教育の問題ではありません、その人間自身がどれだけかしこくなったか、どれだけたのしいか、教える人間も教わる人間もどれだけたのしいかということが、その主観を通して表現されたときにはじめて教育の評価ができるんだと私は思っております。

 板倉聖宣先生のものの見方・考え方に興味をもった方は、まとまった一冊を読むことをおすすめします。
 私がいろいろな子どもたち保護者の方たちにたくさん推薦してきた本『科学的とはどういうことか』です⇨ https://amzn.to/3UT5eza

 

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