「誕生日占いはどうして間違いだといえるんですか?」というおたより-楽しい発想法入門

 読者の方たちの増加にともなって、おたよりも増えて来ていることは前に書いたと思います、最近はその全てにこちらの考えを丁寧に綴る時間的なゆとりがなくなってきた感じがして、申し訳なく思っています。以前、熱心に読んでくれている方から「誕生日占いが、とても当たっていました。いっきゅう先生はどうして占いが間違いだと思うのですか?」という質問が届きました。以前、誰かの話で、手相ではなく〈足相〉というのがあって、「足の裏占い」というのがあるというのを聞いてびっくりしたことがあります、それにしてもいろいろな占いを作り出していくものですね。
 占いの話はけっこう書いてきたと思います、それは質問も多いからということもあります。


 その方に「もし、誕生日占いが正しいと思うとしたら〈自分の場合が当たった〉ということ以外に、どうして正しいと考えるか、少し書いてくれませんか。よければ年齢も教えてもらえたらうれしいです」という送ってありました。最近その返事が届きました。公開してまずい内容ではぜんぜんないのですけど、許可をもらっているわけではないので、それに対する私の答えをつづらせていただきます。

 先月あたりかな、書いた記憶があるのですけど、今騒がれている〈特殊詐欺〉などに騙されない思考回路を育てる意味でも、大切なことだと思っています。科学者・原子論者をはじめとして私と同じ様に考える人たちはそれなりにいても、子どもたちとしっかり向き合って語る人は少ないのでしょう。その意味でもこのサイトは貴重だと思っています。いろいろな方たちに広げていただければ幸いです。

 今回は〈誕生日占い〉についての質問ですけど、こういうことは占い全般にも言えることです。占いの種類以上に、その非科学性についてあげられると思うのですけど、時間の関係で、おもいつく順番にいつくつかあげてみます。

⭕️その日その時に生まれた人といってもかなり条件が異なる

何月何日に生まれたということが一致していても
〈男性・女性〉
〈北海道の寒い地方・暖かい沖縄〉
〈双子・そうでない〉
〈健康・ハンディをもっている〉
〈しつけに厳しい家庭・自由奔放な家庭〉
〈経済的に恵まれた家庭・困窮した家庭〉
〈大家族・親一人・親がいない〉
 etc.

 とてもたくさんの違いがあります。
 そういうことは無関係で「あなたは周りの人たちと比べると、おっとりした性格です」という様なことが言えるのか。

⭕️微妙な表現で信じ込ませている

「あなたは周りの人たちと比べると、おっとりした性格です」という言葉にもあるように、占いというのは、当たり障(さわ)りなく誰にも当てはまりやすい様な表現をすることがたくさんあります。
 マーケティング(どうやって商品やサービスなどをたくさん売れるようにしようかという戦略)でよく利用される「バーナム効果」と呼ばれている現象があります。
 簡単にいうと「多くの人に当てはまることをいわれているにもかかわらず〈これは自分のことを指しているのだ〉と感じてしまう心理的効果」のことです。 ※こういうものをいちいち◯◯効果と呼ばなくてもいいのにね。◯◯効果と呼ぶとありがたく思う人たちも出てくるからでしょう・・・中身はとてもシンプルです

 たとえば「あなたは見た目に気を使って、周りの人に好感を持たれるよう気をつかっていますね」とか「あなたは周りの人たちの気持ちを考えてあげられる人ですね」といわれた時はどうですか?
「いや、自分はそういう人間ではない」と言える人は何人いるでしょう。

⭕️はずれた時のいいわけがちゃんと準備されている

 たとえば誕生日占いで「◯月◯日生まれの人は日本のトップ3の大学に入ることができます」と書いてあったとします、そういうことはきっと書く勇気がないと思うけど。
 当たらなかったら「本当は力があるのに、努力がたりないと落ちることがあります」とか「占いは100%ではないので、いろいろな条件ではずれる場合があります」という様なことがきっと書いてあることでしょう。

⭕️ たいていのことは偶然当たることがある

 たとえばクラス30人の子どもたちに「みなさんは今日の夕食で自分の好きな料理が出るでしょう」と言ったとします。きっと「うちの先生の言ったことが当たった」という子がでるでしょう。

 バーナム効果も作用します。そうでなくても大抵の親は子どもが喜んで食べてくれるものを提供したがるものです。中には嫌いな料理が出た子もいるかもしれません。それでもその後好きなデザートが出るかもしれません、すると「当たった」という子が増えるでしょう。

⭕️ 裏付けがない

〈誕生日占いが正しい〉と仮定します。そうすると、本屋さんに並んでいるいろいろな誕生日占いの本には同じことが書いてあるはずです。でもそういうことはありません、興味のある人は何冊か開いてみてください。

 そしておそらくどの本も「この本はとてもよく当たる」と書いているはずです。それなら何をもって正しいと証明しているのでしょうか?
 そういう証明は書いてないでしょう。
 中には「これは古くから伝わる秘伝だから」とか「これはたくさんの人によって確かめられてきた」と書いてあるかもしれません。秘伝だから正しい、なんて何の証明にもなりません。「たくさんの人によって確かめられてきた」って誰が確かめたのか、いつ、どういう実験によって証明されたのか、書いているはずはありません。

 考えてみてください。

 生まれた日によって運命が決まるというなら、〈◯月◯日生まれと◯月◯日生まれは長生きだ〉とか〈◯月◯日生まれと◯月◯日生まれは寿命が短い〉という占いもできるでしょう。
 大地震や大津波は、誕生日別におそいかかるわけではありません。
 戦争も、生まれた日を選んで、その人に攻撃をしかけてくるわけではありません。

 長く生きるのは、その人がタバコ好きなのかどうかなど健康的な生活や、運動好きなのか、ストレスを溜めやすい人か気晴らしがうまい人か、空気や水がきれいなところに住んでいるか、親や親類が長生きの家系なとかという遺伝的なもの、定期的に健康診断を受けて、悪いところを直そうとしているか、ほったらかしにしているかなどが絡むのであって、子どもの日の5月5日に生まれた人は長生きします、という様なことはありません。

 誕生日占いにかぎらず、あれだけ大変なことになった「コロナ感染症の世界的流行」を事前に占ってくれた人たちはいませんでした。それが科学的に正しいというなら、こんな安上がりなことはありません。その対策を立てられたのにね。
 あの日「ダイヤモンド・プリンセス」に乗ったら危険だと事前に教えてくれたらよかったのに。

 また長くなってしまいました。

 こういうところでどうでしょう、ご意見ご感想があれば、遠慮なくどうぞ。
 そうそう、以前書いた「〈占いを信じやすい人は、特殊詐欺などに騙される率も高いのでは無いか〉という言葉にドキッとしました」という感謝の便りもありました。

以前の様に手早く丁寧な返事はできなくなったのですけど、必ず読んで、短くても返事をする様にしています。時にはこうやってしっかりサイトで返事を書くこともあります!

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「いい質問ですね」という上下感覚-たのしい教育の発想法、子ども達への言葉

 以前,アメリカで宇宙飛行士の講演を聞いた時、「That’s a good question/いい質問ですね」というフレーズが何度も出てきて気になったことがありました。
 気づいてみたら日本のテレビ番組などでも、そう語る人たちが増えてきていますね。


 この間、テレビで流れたある授業のワンシーンにもそのフレーズが出てきたので驚いてしまいました。

 質問に〈良い質問〉があるとしたら〈悪い質問〉や〈取るに足りない質問〉があるということでしょうか。

 私もいろいろなところで授業や講演などをしてきたのですけど、こちらはたくさんの人たちの前で話すことに慣れている上に、話の内容を整理して、ああでもないこうでもないと考えた上で臨んでいるのに対して、それを聞いた側は、そういう話の内容にはじめてそういう話を聞いて、よくわからないところとか、質問する側は勇気を出して、一生懸命考えながら話をしてくれます。

 授業でもまさにそうでしょう。

 語り慣れた教師と違って、子どもたちははじめてその話を聞いたり、もっとそれを知りたいということが聞いたり、意味がわからなくて聞いたりするわけです。

 がんばって手を上げて聞いてくれたその質問に、ある子の質問には「それはいい質問ですね」といい、別の子にはそういうことはを言わない・・・

 アメリカでの講演の話に戻りましょう、宇宙飛行士の次に宇宙工学の専門家が講演をしていました。宇宙ステーションの居住環境についてとても興味深い話をしてくれていて、面白く、講演後に手を上げて質問してみました。

 その時、彼は「Thanks for asking that./聞いてくれてありがとう」と言ってから詳しく話をしてくれました。
 あ~、気持ちいいいい方だな、私は〈いい質問ですね〉よりずっとこっちの方が好きだな、と感じて、日本にもどってから真似ることにしました。

 他にも「その質問は、先生も考えさせられるなぁ」とか「その気持ち、よくわかる」という様に伝える様にしていました。

 可能な方はご利用ください。

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ノウハウも大切、原理・哲学・発想法を大切に学ぶことも大切-楽しい教育の発想法

 最近の〈たのしい教育メールマガジン〉に書いた内容の反響が届いています、このサイトを読んでくれていめるまメルマガの読者の方も多いので、少し書かせていただきます。

 こういう時はどうしたらよいのか、というノウハウを学びたい人はたくさんいます。
 子どもたちがいうことを聞いてくれない、という先生から「立って歩いている子になんて言ったらよいですか」という様に。
 私は空手の指導者でもあるので「顔を殴ってきた時はどう受けたらよいですか」という様な質問をたくさん受けてきました。

 ノウハウつまり具体的な対応はとても大切です。

 ところがノウハウというのはある特定の状況で成り立つものがほとんどです。
「立って歩いている子になんて言ったらよいか」という時にも、その子の学年や、勉強が苦手なのかどうか、友達関係はどうかなどいろいろなファクターによって対応に差が出てきます。

 空手の技もそうです、逃げられる状況か、相手が力のある人なのか、防ぐものがあるかないかetc. いくつかのファクターで違いが出てきます。

 そういう時の具体的な対応・ノウハウを学びつつ、たとえば「子どものプライドを傷つけない様に声をかけることが大切です」という様な原理的なものを学ぶ方が応用範囲が広がるでしょう。

 原理的なものはとても大切です。

 最新号の〈たのしい教育メールマガジン〉の発想法の章にこうかきました。

 最近、学校関係の方から相談にのってほしいとたのまれ、いろいろな話をしてきました。巨大な壁を前に、何をどうしていけばよいのか打つ手が描けないとのことでした。確かに巨大な押し付けを前にすると個人としての打つ手はとても限られています。
 学校だけでなくいろいろな組織でも、もしかすると家庭でも〈抵抗できない強い力〉が存在することがあります。自分はそうではないと考える・そうしたくないと考える、けれど「こうしなさい」と押し付けてくる、そういう力です。
 その時、どうしたらよいのでしょう?

 こういうことはノウハウでは解けないでしょう。

 哲学・発想法など原理的なものを学んでいく必要があります。

 巨大な力を前にした時・・・

 みなさんも考えてみませんか。

 そして教育に関わる原理的なものと、実際のたのしい授業の方法とを学びたいと思ったら、ぜひ〈たのしい教育メールマガジン〉を購読してみてください。読者が全国に広がっている人気のメルマガです。

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楽しい科学の歴史③〈1700年代の科学の歴史には何があったか〉-楽しい学習・自由研究ネタ・たのしい授業・楽しい授業・楽しい自由研究・楽しい学力・楽しい教材・楽しい学力向上

 お便りを基にした三回シリーズになりました、長くなったので、とりあえずここでいったんしめておきたいと思います。みなさんのお便りを基に、続けるか考えてみたいと思います。気軽にご意見ご感想をお寄せください。
 1800年代と1700年代の科学・技術の発明発見の数が大きく違うという話から広がってきたのですけど、なぜこんなに違うのか?

 それにはいろいろな答え方があるでしょう。

 そして「こうだからだ!」とシンプルに結論づけるのは難しいでしょう。

 とはいえ「なるようになったのだ」では未来につながる知恵を得るのは難しくなります。
 たのしく賢くなっていく視点でみていきたいと思います。

 前回あげた科学の歴史年表にも出てくると思うのですけど、1700年代には重要な研究がまとめられています、その後のいろいろな科学技術の発見の基礎になっていく研究です。たとえば1800年代に提唱されたダーウィンの進化論は1700年代のリンネの分類表をベースにして誕生したものです。

  • カール・リンネの分類法(1735年):カール・リンネは、植物や動物を分類するためのシステムを考案し、それが現在の生物学の分類法の基礎となっています
  • ハレー彗星の予測(1705年):エドモンド・ハレーは、彗星の周期的な出現を予測し、彼の名前がつけられたハレー彗星が76年周期で戻ってくることを示しました

  • ダニエル・ベルヌーイの流体力学(1738年):ダニエル・ベルヌーイは、流体の挙動や圧力に関する法則を発見し、それが今日の流体力学の基本原理となっています

  • ウィリアム・ハーシェルによる天王星の発見(1781年):天文学者ウィリアム・ハーシェルは、太陽系の7番目の惑星である天王星を発見したんだ。これは、古代以来知られていた惑星以外で最初に発見された惑星なんだよ。

  • ジョゼフ・プリーストリーによる酸素の発見(1774年):ジョゼフ・プリーストリーは、実験を通じて酸素ガスを発見し、それが燃焼や呼吸において重要な役割を果たしていることを明らかにしたんだ。

  • アントワーヌ・ラヴォアジエによる質量保存の法則の発見(1789年):アントワーヌ・ラヴォアジエは、化学反応において質量が保存されることを示す法則を発見し、それが現代の化学の基礎を築く大きな発見となったんだ。

  • ベンジャミン・フランクリンの雷の研究(1752年):ベンジャミン・フランクリンは、避雷針を発明し、雷から建物や人々を守る方法を提供しています。特に静電気の性質や導電性に関する実験が有名です

  • ジョン・ミシェルによるブラックホールの理論(1783年):天文学者ジョン・ミシェルは、ある程度の質量が集まると光も抜け出せないほどの強い引力が働く天体が存在するという理論を提唱。この理論は、後にブラックホールとして知られるようになりました

  • ジョセフ・ブラックによる熱量と温度の区別(1760年代):ジョセフ・ブラックは、熱量(カロリー)と温度を区別することで、熱の性質や伝達に関する理解が進みました

区切りの1800年にはボルタの電池も登場しました。

  • アレッサンドロ・ボルタ(ヴォルタ)の電気の発見(1800年):2種類の金属板の化学反応を利用して電気を生成する方法を発見し、それが現在の電気学の基礎を築いています

画期的な〈基礎研究〉がたくさん登場したのが1700年代でした。

それらがなくては1800年代の目覚ましい発明・発見はありませんでした。
人間の思考や作り出すものは、その前に誕生したものたちの上に構築されるものだからです。
人間の思考や技術というものも〈進化〉していくからです。

 ではその100年前を遡るとどうなのか…1600年代には何があったのか?

 今につながる〈近代科学の礎(いしずえ)〉が気づかれた年代だといってもよいでしょう。

 筆頭が〈ガリレオ・ガリレイ〉の数々の研究です。

・地動性の決定的証拠を明らかにした

・望遠鏡で月の表面の状態をスケッチし、それまで人々が「天上の世界」と敬っていたものが、地球の様にデコボコであることなどをリアルに伝えた

・木星に衛星があることを発見した

・自由落下の研究・ふりこの周期性 etc.

 とても重要な研究が発表されています。

 ガリレオの研究をもとにニュートンが万有引力の法則、運動方程式を発表したのも1600年代です。

 またガリレオの弟子であったトリチェリが〈大気圧〉を発見し、気象学や物理学に大きな影響を与えたのも1600年代です。

 ニュートン自身も、ロバート・フックにあてた手紙に「もし私が他の人々より遠くを見ることができたとすれば、それは巨人の肩に乗っていたからです」と書いています。

If I have seen further it is by standing on the shoulders of Giants.

 科学や技術の発展を見ていく時、こうやって過去の業績をたどる視点は大切であると同時に、とてもたのしいことです。

 今回の一連の流れで紹介したのは1600~1800年代です。

 その上にたって1900年代はさらに画期的な科学や技術の進歩がありました。コンピュータもインターネットもスマホも月面ロケットも全て1900年代です。

 では1600年代の前はどうだったのか?

 実は宗教の支配による弾圧が科学や技術の発展・進化を止めていった時代が長く続いていました。

 1600年代のガリレオにさえも、宗教弾圧がおよび、裁判で有罪となって自宅幽閉の処分を受けてしまったほど、その影響は強いものがありました。

 そういうことは、自分でも予想を立てていろいろ調べていけると思います。

 何か発見したことがあったら、教えてくださいね。
 今日はここまで!

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