ミミズとダーウィンさん-楽しい自由研究・楽しい科学・楽しい学力

 庭に桃の木を植えようと思って土を掘っていたら、中でウネウネ動く生き物が姿を現しました、ミミズです。

 ミミズがいい土を作ってくれるありがたい生き物であることは、ご存知の方も多いでしょう。大きくわけるとこの四つの働きで土が改良されていきます。

  1. 土壌の混合: ミミズは土を食べ、消化した後、糞として排出します。この過程で、有機物と無機物が混ざり合い、土壌の構造が改善されます。これにより、水分や空気の循環が良くなり、土壌の栄養分がより利用可能になります

  2. 有機物の分解: ミミズは、落ち葉や枯れた植物などの有機物を食べることで、土壌の有機物を分解します。これにより、土壌の栄養分が増加し、植物が利用できる形になります

  3. 土壌の通気性の向上: ミミズが地中を移動することで、土壌に通気性のあるトンネルが作られます。これにより、土壌の酸素供給が向上し、根や微生物が活発に働くことができます。また、水はけも良くなり、水はたまらずに適度な湿り気が保たれます

  4. 微生物活動の促進: ミミズの消化活動により、土壌中の微生物に利用可能な栄養分が増えます。これにより、微生物の活動が活発になり、さらに土壌の有機物の分解や栄養サイクルが促進されます

 実は進化論のダーウィンさんは、ミミズにとても注目していました、『種の起源』の中でもミミズに言及していますし彼の最後の著書は『ミミズによる腐葉土の形成』です、『種の起源』よりたくさん売れたといいます。

 ダーウィンさんは、この本の中でとても面白い実験をしています、こどもみたいです。

 ミミズのミミズが音や振動にどう反応するか、という感覚能力の研究で、息子にファゴットを演奏させ、ミミズがどう身動きするかを調べました。ファゴットって、大きな楽器ですよ、低い音で調べたのです。

ファゴット wikipediaより

 また、目がないミミズが、光に対してとても敏感であることも実験で確かめています。

 興味のあるみなさんは、ぜひ調べてみてください。

 そろそろ自由研究の相談も届き始める季節です。

 ミミズは、あまり好まれる生き物ではないので、ダーウィンさんの研究の追実験(光を当てると土に潜るのか、など)をしてみるのも、おもしろいと思いますよ。

 ダーウィンさんの頃はなかった、赤外線の実験も、TVリモコンなどで簡単にできますから、見えない光をあててみるというのも面白いと思います。

 いつもいうように、必ず〈自分の予想〉を立ててからはじめましょう。外れてもあたっても賢くなります、そして何より自分自身がたのしくなりますよ。

① 毎日1回の〈いいね〉クリックで「たの研」がもっと強くなる!⬅︎クリック

② たのしい教育を本格的に学ぶ〈たのしい教育メールマガジン-週刊有料を購読しませんか! たのしい教育の実践方法から発想法、映画の章ほか充実した内容です。講座・教材等の割引もあります(紹介サイトが開きます)

③ 応援として〈SNSや口コミ〉でこのサイトを広げていただければ幸いです!

たのしい読み語り「ぼく モグラ キツネ 馬」チャーリー・マッケジー

 今年のアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞した「ぼく モグラ  キツネ 馬」をアップルTVで視聴しました、素晴らしかった。実は以前、原作の絵本を手に取ったことがあります。その時、帯に記された

「うっかり読み聞かせすると、途中から出てくるのは言葉ではなく涙です」

という言葉を目にして、すぐそのまま棚に返してしまいました。
 涙ものが苦手だからです。「涙すると書けばすばらしい本だと感じてくれる」っていう勘違いは、やめた方がよいと思うんだけどな・・・

 アニメーションが素晴らしかったので、さっそく絵本を購入しました、マッケジーさんの筆のタッチをそのままの味わいたかったので、原作の英語版です。

 つけペンで絵も文字もかいているので、少し読みづらいけれど、それがマッケジーさんの描いたそのままの形なので、ゆっくり味わいながら読んでみました。
 あまり意訳せずに、原文そのままに近い形で訳してみましょう。

「キミは大きくなったら、どうなりたいの?」

「やさしくなりたい」少年はいった。

 

「これまでの言葉の中で、一番、勇敢だったものは何?」少年が尋ねた。

「〈助けて〉だね」、 馬はいった。

 

ぼくたちが守らなくてはいけない、たくさんの美しいものがある・・・

 

 一枚一枚の絵と言葉に、とても心が動かされます。

 私はアニメーションを観て、涙が湧いてきたのですけど、絵本では涙は出てきませんでした。

 涙は流れなくても心洗われる作品です、お勧めします。

 図書館にはきっとあると思います。

 もちろん日本語版をどうぞ、購入する方はこちらから。

 原作は〈The boy, the mole, the fox, and the house〉、「少年、もぐら、きつね、そして馬」 です。
 日本語版では〈少年〉を「ぼく」と訳し、第一人称で主人公にしてしまっています。マッケジーさんの書いたものにアレンジを加えていることに違和感があったり、この訳でいいのか、ということはありつつ、きっとマッケジーさんが「OK」っていったのだろうから、それでもよいのでしょう。

 基本的な表現で、しかも感動的なので「中学の英語の教科書に使うとよいのに」と思います。

 よければいつか英語版も手にしてみてください。

① 毎日1回の〈いいね〉クリックで「たの研」がもっと強くなる!⬅︎クリック

② たのしい教育を本格的に学ぶ〈たのしい教育メールマガジン-週刊有料を購読しませんか! たのしい教育の実践方法から発想法、映画の章ほか充実した内容です。講座・教材等の割引もあります(紹介サイトが開きます)

③ 応援として〈SNSや口コミ〉でこのサイトを広げていただければ幸いです!

花の名前=「わすれな草」に覚えた違和感が数十年を経て解決/牧野富太郎『草木とともに』KADOKAWA

 この花は、あまりみたことがないかもしれません。とても詩的な文学的な名前なので、いろいろな唄にも登場するのですけど、こうやってしっかり見たのは、私もおそらく数回くらいです。

wikipediaに感謝して

 「ワスレナグサ=わすれな草=勿忘草」 ※勿(~してはいけない)

 

 分類や和名・英名はこうなっています、〈ムラサキ科〉という科名があったのか

分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : キク類 asterids
: シソ目 Lamiales
: ムラサキ科 Boraginaceae
: ワスレナグサ属 Myosotis
学名
Myosotis L. [1]
和名
ワスレナグサ(勿忘草、忘れな草)
英名
Forget-me-not
scorpion grass

〈Forget-me-not:フォーゲット ミー ナット〉という花の名前は、さだまさしの唄で耳にしていて、しばらくしてからそれが「ワスレナグサ」というのを知りました、上のwikipediaの解説にも出ています。

 ところで〈 Forget me not 〉は「私を忘れないで」という意味です、とすると〈わすれな草〉はおかしいなぁ、〈忘れないで〉を「わすれな」とは表現しないはずだから、とずっと思っていました。

「忘れ名 草」とは読めるけど、それは〈忘れないで〉ではありません。きっと「わすれるな」を「わすれな」と短縮したのでしょうね。

 今ためしに古語辞典を開いても「わすれな」や「勿忘」の単独の使い方は載っていません、オンライン辞書(Weblio古語辞典)で調べても、やはりそうです。

古語辞典で「わすれな」に一致する見出し語は見つかりませんでした。

 

古語辞典で「勿忘」に一致する見出し語は見つかりませんでした。

 直接web検索したり〈ChatGPT〉で確認しても、やはり「わすれな」という表現は確認できませんでした、これは「ワスレナグサ」の花でのみ成立しているようです。その後そこから派生してミュージシャンのグループ名や商店街の名前になっている例はあります、けれどそれは今回の語源の話とは別です。

 牧野富太郎のことは学生時代から知っていたのですけど、うちの研究所を強く応援してくれた故 伊波善勇先生と交流する様になってから、著書や図鑑を手にするようになりました。

 最近、牧野富太郎の著書「草木とともに 牧野富太郎自伝」の朗読を聞いている時に、ワスレナグサの花の名前にまつわる胸のつかえが下りました。

「ワスレナグサは洋名 forget me not の直訳名であるが、この草はもとより日本に産しない草であるから、従って〈和名〉というものはない」

「そのワスレナグサというのは川上瀧彌(かわかみ たきや)が名付けたものであること」を前置きして、こう書いています。

ワスレナグサというとあまりに俗に流されすぎてよくないので〈ワスルナグサ〉とした方がよいと思う。

「与(私)を忘るな」といわねばならぬのではないか。

〈忘るな草〉→「ワスルナグサ」なら forget me not. の訳として何の違和感も感じません。

 私は牧野訳に一票です。

 すでに「ワスレナグサ」という名前が広まって、辞書にも採用されていますし、〈ワスルナ〉より〈ワスレナ〉が新しい感じがしますから、牧野さんや私に賛成してくれる人は少ないでしょう。

 とはいえ、私が子ども達に伝えるとしたら

「先生が好きな牧野富太郎という植物学者は『この花を〈忘るな草〉と呼んだ方がいい』って言ったんだよ。意味的にもスッキリするから、先生もその方がよかったとおもう」

 というでしょう。

 わすれな草(「忘るな草」牧野訳)と書くのもよいと思います。

 こういう話は、テスト勉強には一切役立ちません、採点する先生すら知らない話でしょうから、テストに「ワスルナグサ」と書いたら✖️をもらってしまいます。

 けれど人間の知的興味関心は、こういうところからスイッチが入ることも多いのです。そうやって調べているうちに、ムラサキ科のわすれな草(忘るな草)にさくら色の花もあることに気づきました。

理科教材データベースより(感謝)http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/html/kyo/index.html

① 毎日1回の〈いいね〉クリックで「たの研」がもっと強くなる!⬅︎クリック

② たのしい教育を本格的に学ぶ〈たのしい教育メールマガジン-週刊有料を購読しませんか! たのしい教育の実践方法から発想法、映画の章ほか充実した内容です。講座・教材等の割引もあります(紹介サイトが開きます)

③ 応援として〈SNSや口コミ〉でこのサイトを広げていただければ幸いです!

カラス⇨タイワンシロガシラ⇨すずめ/たのしい畑人Hさんの話 

 連休中「急ぎで採れたてのトウモロコシを届けたい」と応援団のHさんから連絡が入りました。

 待っているとトウモロコシの入った箱を抱えたHさんがやってきました。 

「あと数日おこうと思っていたけれど鳥たちが食べ始めたので急いで収穫をはじめた」とのこと。

 Hさんは自らも〈たのしい教育派〉です、どの鳥がどんな風に食べているのか、隠れて観察していたのだそうです。

 その話がとてもおもしろかったので紹介しましょう。

 まずカラスがやってきて、トウモロコシの実に乗った。

 するとカラスの重さで幹がたわんできて、トウモロコシの実がポキリと折れて地面に落ちる。

 カラスはトウモロコシの皮を口ばしで摘んで器用にむいていく、ちょうどこのくらいむいて黄色い実がみえてきた。

 すると二、三粒つついて飛んでいってしまった。

カラス wikipedia

 

 近くで待機していたのだろう、シロガシラ(タイワンシロガシラ)がやってきて、カラスよりたくさん食べて飛んでいきました。シロガシラはそれほど力がないので、カラスがトウモロコシの皮をむいてくれるを待っていたのでしょう。

シロガシラ 国立環境研究所

 シロガシラが飛び立つのを待っていたスズメがすぐに数羽やってきて残された粒を食べている、すずめは身体が小さいので、皮の隙間から見えている粒を丁寧につついていたとのこと。

スズメ wikipedia

 なるほど一つの食べ物をめぐって何層にも段階があるのだと感心しつつ、被害が広がっていかないように、一週間くらい早く収穫することにしたそうです。

 採れたてを食べて欲しくて〈たの研〉に持ってきて
「この話、みんな信じてくれないと思うんですけど〈たの研〉の方たちは信じてくれますよね」
と語ってくれたのが、ここに書いた話です。

 もとろんHさんの人柄を知っている私は100%信じます。

 もしHさんがそのままにしていたら、その後、他の動物がやってきて食べていくでしょう、最後に残ったものは微生物が食べるという様に、自然は実にうまく連携プレイしながら成り立っています。

 たのしいHさんに拍手!

① 毎日1回の〈いいね〉クリックで「たの研」がもっと強くなる!⬅︎クリック

② たのしい教育を本格的に学ぶ〈たのしい教育メールマガジン-週刊有料を購読しませんか! たのしい教育の実践方法から発想法、映画の章ほか充実した内容です。講座・教材等の割引もあります(紹介サイトが開きます)

③ 応援として〈SNSや口コミ〉でこのサイトを広げていただければ幸いです!