辛い人生を過ごすのか/板倉聖宣のものの見方・考え方

 教師になった頃、板倉聖宣の〈ものの見方・考え方〉に触れていなかったら、どういう人生だっただろうと考えることがあります。教育行政の中で着々と上を目指していたのでしょうか、大好きな車の運転を生業にしているのかもしれません。

 私の周りにも「板倉聖宣先生の本を読んだことがあります」という人は何人もいましたから「触れていなかったら」というより、その頃すでに私の心の奥で、板倉先生の〈ものの見方・考え方〉を求めていたということなのでしょう。

 今回は、1991年に西日本の「たのしい授業入門講座」で板倉先生が語った内容を、私いっきゅうが再校正してお届けします。かなり以前の〈たのしい教育メールマガジン〉で紹介したものの一部です。

「たのしい人生を送ろうと思ったら、学校の時代くらいは厳しいことをやらないとたのしくならないよ」とか「会社に入ると耐え忍ばなければならないし、結婚すると耐え忍ばなければならない。つまりいろんなところで耐え忍ばなければならないんだから、学校からずっと耐え忍び方の練習をする必要があるのだ」という考え方がありますね。
 それに対して「結婚生活はたのしいよ。社会に出たらたのしいよ。だけど、少しでもいい会社に勤めて月給を高くして、少しでもいい学校に入ってプライドを持って生きようと思ったら厳しさを耐え忍ばなければいけないよ」という考え方もあります。
 つまり「手段として〈厳しい授業〉に耐え忍ぶ。そうするとたのしい人生が待ってるよ」という考え方です。

 私が子どもの時は、人生全体が厳しい時代でした。その厳しい人生を乗り越えるために、学校の時は厳しくやっていこうという考え方でした。
 しかしそういう考え方は今は通用しないですね。
 たのしい人生を切り開くために、学校時代は厳しいことをやっていく。ところが生涯学習なんて恐いことが出てきましたね、生涯学習するんですから、もし学習が厳しいもので耐え忍ばなければいけないんだったら、生涯厳しい人生で、たのしい人生がつぶされちゃう。「たのしい人生」でなくて、また「厳しい人生」に舞い戻ってしまいます。
 私どもの学校時代は小学校6年生が義務教育で、その6年間を耐え忍べば、娑婆に出られたんです。
 だんだんこれが長引いてきて、今や高等学校ぐらい出ないといけない。いや、かなりの人が大学を出てる。短ければ耐え忍びますが、学校生活が大学までいったら随分時間がある。さらに、「生涯学習」なんて言って一生涯耐え忍ぶことを勉強しなければならないんですから、大変ですね。

 楽しいと、周りから厳しいと思えるようなことにあえて入り込んだります。

 〈たの研/たのしい教育研究所〉は忙しいので、さぞ大変だろうと思う人もいるかもしれません。

 けれど、スタッフのみんなは、そのたのしさを感じながら充実した日々を過ごしています。

 今の子どもたちが、たのしく元気で笑顔で過ごすことができる。そういう活動が、苦しく辛いことはありません。
 活動を応援してくれる方が増えてくれることを期待しています。

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満足度99.9%=原子論者アルキメデスの科学+わくわくモノづくり+島言葉で美味しいおやつ

 たのしい教育研究所にはたくさんの講師依頼がきます。いろいろな活動の中、その中のわずかな依頼にこたえるのがやっとです。今日はY自治会に仲間と行ってきました。

 当初伝えられていた人数の二倍以上にふくらんだ参加者に喜びつつ、準備していた素材・材料がギリギリで、急遽、組み立て直しスタートしました。

 これは『アルキメデスの科学』をたのしんでくれている様子です。
 浮力の根本原理を本格的に学ぶ新作プログラムで、2歳の子から6年生、お母さんお父さん、主催者、先生まで、前のめりになってくれました。

 

 これはマシュマロスライムをたのしんでいる様子です。

 

 スライムを知っている人も知らない人も、不思議な手触りにたっぷりたのしんでくれました。

 島言葉でたのしむおやつ作り「ゆーぬく団子」は盛り上がりMAX。
 素朴な味わいは、不思議と大人から子どもまでみんな喜んでくれます。
 しかも健康と美容にとてもよいというのは、鬼に金棒でしょう。

 今の小学生の子をもつ保護者の方たちは、ほぼ例外なく「はじめて食べました」といってくれます。
 リタイヤしたくらいの年齢の方たちの中には「ユーヌクは、子どもの頃、食べたことがあります」という方たちもいるのですけど、それはトロトロのタイプです。〈たの研〉のゆーぬく団子は、名前どおり団子タイプで、串に刺して味わったり、大きさを変えたりと、バリエーション豊かです。

 2歳、4歳の子もいたので、満足度は少し下がるかとも思ったのですけど、評価・感想の集計をすると満足度100%でした。

 〈たの研/たのしい教育研究所〉では『こども未来スクール』をいろいろな場所で実施しています。
 とくに遠隔地にいるみなさんを優先しています。

 ご希望の方は、まずお問合せください⇨ http://tanokyo.com/me-ru

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平和な社会をつくるために歴史をたどる/板倉聖宣『ヒトラーと民主主義』

 あと半月ほどで終戦記念日がやってきます。まちがいなくほぼ全員が平和が好きなのに、今でもいろいろなところで悲惨な戦闘が続いています。どうしてでしょう…
 今回は平和について考える内容を紹介します。

 板倉聖宣先生(仮説実験授業研究会初代代表/元文科省教育研究所室長/元日本科学学会会長/たのしい教育研究所 初期から支援者)が『ヒトラーと民主主義』というタイトルでまとめた冊子のはじめの部分を書き抜いてみます。その研究がはじまった時に板倉先生が研究会で紹介したものです。

板倉先生が沖縄に来てくれた時の一枚

はじめに

あなたは「ヒトラー」という人の名を聞いたことがありますか。
 その人は、どんなことをした人だか、知っていますか。

 多くのひとは「ヒトラーという人はとても悪い人だ」と、どこかで聞き知っていることでしょう。
 簡単にいうと、ヒトラーは「ドイツの独裁者になって、第二次世界大戦を始めた人」として知られています。
 だから〈とても恐ろしい人〉と言われているのです。
 それだけではありません。ヒトラーは「ユダヤ人を皆殺しにしようと計画して実行した人」として知られています。〈何も悪いことをしなくても、ユダヤ人だから〉という、それだの理由で虐殺したのです。
「ユダヤ人は劣等民族だから、生かしておいてはいけないから」というのです。
 たくさんの人を狭い部屋に閉じこめて、その中に毒ガスを入れて一時に大量に殺したというのです。
 ヒトラーは、どうしてそんなことができたのでしょうか。
 ひとりでは戦争など始めることはできません。いくら「あいつらは悪者だから戦争をしかけてドイツの領土にしてしまえ」と叫んだところで、みんなが賛成しなければ、戦争など起こせません。
 いくら「ユダヤ人は劣等民族だから絶滅してしまえ」とけしかけても、他の人びとが、それもたくさんの人びとが、それに賛成しなければ〈大量殺人〉などという恐ろしいことは実現で
きるはずがありません。
 それでは、ヒトラーはどのようにして、他の人びとをその気にさせることに成功したのでしょうか。
 自分の言うことをきく〈少数の狂気の集団〉に多数の人びとを脅迫させて、従わせることに成功したのでしょうか。
 現代の社会は、大なり小なり「民主主義的な社会」になっています。そう簡単に独裁者が現れて、たくさんの人びとを意のままに動かすことはできないようになっているはずです。
 それなのにヒトラーは1933年にドイツの独裁者になることに成功しました。
 そして1939年には、ほとんど全世界を相手にして戦争を始めたのです。日本もそのドイツと手を結んで、第二次世界大戦に参加してしまいました。そして「特定の民族を皆殺しにしよう」などという恐ろしい事業に協力してしまったのです。
「どうして、たくさんの人びとがそんなことに協力してしまったのか」そのナゾを明らかにしておかないと、私たちもそんな愚かなことをしてしまうようになるかも知れません。

 そんなことが心配になって、この冊子にまとめることにしました。

 戦争などは、狂気の人間がはじめるものだと考える人がいます。
 けれどそれは違います。「ひとりでは戦争など始めることはできません。いくら〈あいつらは悪者だから戦争をしかけてドイツの領土にしてしまえ〉と叫んだところで、みんなが賛成しなければ、戦争など起こせません」という言葉は、私たちが強く意識しておかなくてはいけないものでしょう。

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楽しさと寂(さび)しさ/楽しいPEALカウンセリング/楽しい国語・楽しい哲学・楽しい古典

 以前PEALカウンセリングの中で私が話したことに少し触れたところ、それを聞いた方からも大きな反応があったので、少し紹介します。
 「寂しい」ことは悲しいこと辛いことだと反射的に考えてしまう人がほとんどでしょう。でも本当にそうでしょうか?
 私が過ごす時間の中で執筆の時間はとても長いので、その時間は孤独に過ごしています、寂しい時間といってもよいでしょう。
 ところでもともと日本では〈わびしいこと〉〈さびしいこと〉を肯定的に、あるいは美的なものとして考えてきました。
 『わびさび』という言葉を聞いたことがあ人もいると思います、「わびしい」「さびしい」というのは、この『わびさび』のことです。別サイトの言葉を引用してみます。

 日本特有の美意識である「侘び寂び」。

「侘び」とはつつましく、質素なものにこそ趣があると感じる心のこと。

 一方、「寂び」とは時間の経過によって表れる美しさを指します。この世のものは時が経つにつれ汚れたり、欠けたりして変化しますが、それを劣化と否定的にとらえず、変化が織りなす多様な美しさを「寂び」と呼び、肯定するのです。

 絢爛さや豪華さ、シンメトリーを美とする西洋の美意識に対して、「侘び寂び」に象徴される日本の美は、質素さや閑寂さ、非対称や余白を重んじます。こうした「侘び寂び」の美意識は、禅や茶の湯、絵画や庭園、美術工芸品など、日本文化と日本人の価値観に大きな影響を与えています。

https://www.the-kansai-guide.com/ja/article/item/16213/

 さびしさは辛いことだとだ、と考えてしまうのは、もしかするとメディアのせいかもしれません。一人でいてはいけない、孤独は辛い、仲間と協力して活動することが生き甲斐を感じることだetc. テレビなどの中にはそういうコンテンツに満ちています。
 けれど、それはほんとうか、立ち止まって考えてみることも大切でしょう。

 私は2週間くらい山に入ってほとんど誰とも語らず過ごしたことがありました、今でもたのしいすばらしい想い出の一つです。

 敬愛する河口慧海(チベット旅行記を著した僧侶)も瞑想で自分の心の中を澄ます、心の中で対話することを続けながら苦難の旅を続け、仏典を持ち帰るという目的を達成しました。

  かつての同僚で、映画館に一人では入れない、という人がいました。
 きっと一人で座っているのは寂しい姿だと考えているからでしょう。
 レストランに一人で入るのに躊躇するという人もいました。

 そうかなぁ~

 山をあるいて木の実の色に感動した時「これはいいなぁ~」という言葉にならない声が染み入ってきます、自分の声です。
 一人でいると自分の心の中を見つめることにもなります、自分と対話することもあります。
 自分の心の中を見つめることも、慣れてくると、たのしくなってきます。

 逆に、仲間と一緒、友だちと一緒の楽しみばかり、家族みんな一緒のたのしみしか求めないとしたら、そちらの方が心配になります。
 周りの人は都合よく自分と付き合ってくれるわけではありません。

 ここでPEALカウンセリングの流れを展開することはできないのですけど、問題意識として考えていくきっかけにはなると思います。

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