現場で教師をしていた頃作った〈薬と毒〉という「たのしい教育プログラム」があります。担任の先生養護教諭の先生に人気のプログラムで、中にこういう一説があります。
犯罪のニュースで〈まやく〉と聞くと〈悪魔の様な薬⇨魔薬〉とイメージしてしまう人もいるのですけど、正しくは「麻薬」です。麻薬は医学用語で「麻酔作用のある薬」を意味することばです。
麻酔薬の乱用が問題となり、その乱用を取り締まるうちに、麻酔とは逆の作用をもつ〈向精神薬〉その他もふくめて麻薬と呼ぶ様になっていきました、本来の医学・科学的な意味から外れていったことになります。
こういう「言葉の問題・言葉の感覚」を研ぎ澄ますこと、言葉を丁寧に使うこと、本来の意味で整理していくことは法律の世界でも大切なことだと思います。
そのプログラムを作成したあと読んだ小説の一説に驚いたことがありました。
ミステリーの女王アガサ・クリスティーの小説「そして誰もいなくなった」です。
この中の重要な登場人物の一人、老婦人がこう語ります。
近頃の若もの達はしまりがなくてみていられない。
眠れないといっては睡眠薬、歯を抜くときには麻酔注射・・・
「え、この老婦人、歯を抜く時に麻酔を使わないでぬくの?」
すごすぎますね。
この小説が世に出た1939年、今から80年くらい前には登場人物に語らせたそのことと同じ感覚をもっている人、つまり〈虫歯を抜く時に麻酔を使わないままで抜いてもらう人〉は他にもいたわけでしょう。
実はこの小説、日本語訳がよくなくて、私は途中で投げ出してしまいました。
今度、我慢して最後まで読んでみようかと考え始めています。
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