長く続くことはよいこととは限らない- 板倉聖宣1994年 月刊たのしい授業〈続刊のことば〉から

 応援してくださる皆さんのおかげで、たのしい教育研究所(RIDE)は10年目を迎えています。〈たの研〉を強く応援して下さった板倉聖宣先生が創刊した『月刊たのしい授業』が11年目を迎えた時「長くなるとマンネリになり、創造性が失われるおそれがある」と語ったことがありました。
 今回はその言葉を紹介させていただきます。〈たの研〉の代表として強く意識しておきたいと考えています。

 板倉聖宣

 本誌『たのしい授業」は1983年3月に創刊されました。そこで本誌もこの4月には創刊以来11年目を迎えることになります。

 ふつう何事も「長く続くことはいいことだ」と思われているようです。しかし私は必ずしもそうは思いません。

 伝統が長くなると、とかくマンネリになり、創造性が失われる恐れがあります。ときには古い伝統を投げ打つ覚悟をしないと、新しい試みに挑戦することができにくくなる恐れもあります。

〈たのしい授業〉という言葉がごくごく当たり前になれば、本誌の役割の大半は失われたことになるかもしれません。そうなれば私たちはその時代の新しい要求に即した新しい雑誌を出したほうがいいのかも知れません。

 そんなわけで本誌は創刊以来、毎年新学期を迎えるたびごとに、本誌の発行を継続するか否かについて決意を新たにして、継続するなら継続の意志を鮮明にして、古くさくなった伝統を捨てても新しい課題に取り組む覚悟を語るようにしてきました。

 それも本誌の一つの伝統とも言えるわけですが、古い伝統を見直す伝統は引き継いでいきたいと思っています。

 月刊たのしい授業1994年4月号 続刊の言葉から抜粋

 ちょうど〈たの研〉もこれまでの伝統を見直し、新しい取り組みをすすめようという話になっています。
「古い伝統を見直す伝統」という言葉を胸に刻んですすめていきたいと思います。

 読者の皆さんのご意見・ご感想も大きな応援の一つです、気軽に送っていただけたら幸いです。

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子ども達を科学嫌いにしない〈仮説実験授業の教材観〉板倉聖宣の発想から-楽しい学習・楽しい教材

 メルマガに〈たの研10年目〉について書いたところ、さっそく反響が届いています、うれしいことです。

 そこに書いた「教材を含めて〈たの研〉にあるたくさんの財産を維持することに全力を尽くすのではなく、また初期設定に戻して、いろいろチャレンジングなことをはじめていきたいと考えています。

 新しいタイプのたのしい教育プログラムに手を伸ばしていく予定です。そういう中で、もう一度初心にかえって学び直すことも大切です。

 私が教材を作る時、読み込んでいた資料の一つを紹介しましょう。たのしく学力を高めていきたい、本物の学力を身につけてもらいたいという方たち、楽しい教材・楽しい学習を模索している方たちにも役立つものだと思います。

板倉聖宣

 仮説実験授業の授業書が〈いっさいの押し付けを排除する〉ということをうたっていたのは「言葉の押し付け」をしないように細心の配慮をしてきたからです。

 じつは仮説実験授業の授業書だって、その〈案〉の段階では言葉の使い方が適切でないことが少なくありません。

 仮説実験授業研究会の授業書改訂の席に参加すると、たいていの人は「授業書の一語一句について適当かどうか」を延々と論議しているのをみて驚いてしまいます。

 仮説実験授業の授業書は、そういう言葉遣いの一つひとつを詳しく吟味して、言葉の使い方に繊細な配慮がしてあります。そうやってどんな子どもたちもおしつけや違和感を感じずに、気持ちよく授業を受けることができるようになっているといってよいと思うのです。

 そういう細かい心遣いをしてはじめて「科学というものは何と心温かくできているのだろう」と感じさせてはじめて、子ども達を科学嫌いにしなくてすむようになるのです。

 
 仮説実験授業研究会ニュース2017年6月の内容を再校正
                    文責きゆな

〈たの研〉のメンバーと一緒に、このことを丁寧に確認しつつ進んでいきたいと思います。

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たのしい楽しい教育プログラム-たのしく学力を高める具体的な方法-楽し教材・楽しい学習

資料の整理整頓は創造する場合にもとても大切
 たのしい教育メールマガジンも今年の最終号が近づいてきて、今年書いた記事の整理をはじめています、半年毎にはやるようにしているのですけど、一つずつの記事を開いて整理していくのは事務的な能力が低い私には大変な仕事です。
 そういうことをするより新しい記事を書いていたいと思うのですけど、メルマガの初期の頃、読者の方から「たとえば体育の教材をさがす時に、どこに出ていたのかわかると助かります」という要望があったことと、板倉先生が『月刊 たのしい授業』を創刊した時、その年の総索引がとても好評で、重要なんだと話していたこととが結びついて、メルマガにも年末にその年の記事一覧をつけることになりました。
 メルマガは電子版なので、検索の時にはキーワードを打てばすぐにどの号のどの章にある記事なのかわかります。
 もう一つ、すでに500号を超えていて、例えば〈映画の章〉で紹介した作品は1000作近くになります、書いた記事を整理しておかないと混乱の元です。
 新しい記事を書く時だけでなく、広く〈創造する〉という場合にも、これまでの記事の整理整頓はとても大切なことです。
 実施してきてよかったと思います。

2022年のたのしい教育プログラムの記事から

 まだ一部なのですけど、整理している私が「あ、こういうものも書いたんだよね」とか「これは今年書いたのか」といろいろな発見をしています。
 メルマガは四章構成なのですけど、その一つ〈たのしい教育プログラム〉の記事の一部を紹介しましょう。

490号 2022-02-02
🔵仮説実験授業「足は何本?」を
やってみませんか
 H先生の授業記録の紹介

491号 2022-02-09
🔵ペーパークラフト(図工・生活科)
 たのしいハサミ・ノリの使い方「ミニオンバッグ」

492号 2022-02-16
🔵ブックレビュー 朝の連続小説(連続読語り)で
 ミヒャエル・エンデ「モモ」がおすすめ

493号 2022-02-23
🔵人気のなぞなぞ・クイズ系
子どもにウケるたのしいクイズ 坪内忠太

494号 2022-03-02
🔵たのしく〈体力づくり〉

  三角トンネルくぐり

495号 2022-03-09
たのしいキャリア教育 読み物教材(国語・総合などで)
🔵沢木耕太郎「鉄塔を登る男」
 働くって何だろう?

498号 2022-03-30
たのしい家庭科・生活科・理科他
🔵野の花いけ花

499号 2022-04-06
🔵たのしい国語 お話めいろ

500号 2022-04-13
🔵たのしい算数 サム・ロイドさんのパズルから

501号 2022-04-20
🔵たのしい理科 植物の給水実験

502号 2022-04-27
🔵たのしいアウトドア入門 身体センサーの話

503号 2022-05-04
🔵たのしい社会 都道府県生産高ランキング

 こうやってまとめているといろいろな教科や活動の時に利用できるように、うまく分散されていると我ながら感心してしまいます。

 授業の章は特別な技能や経験は必要なく、準備0や、印刷すればOK、準備するものでも、学校や家庭にあるもの、100均で入手できるものを中心に書いているので、記事の場所を確認して読めば、明日には授業できるものがほとんどです。

 週に一度の〈たのしい教育プログラム〉からはじめて、こどもたちとの関係をよくし、講座や資料などでゆっくりたのしい時間を増やしていくという様にして、大人自身がこども達とたのしく充実した日々を過ごしている人たちが増えています。
 興味のある方は、ぜひお申込みください。
 スマホの方は記事一番下の〈サブコンテンツ〉をクリックすると、申込みのリンクが出てきます。
 また記事検索に「メールマガジン」と打つとメルマガに関わるいろいろな記事を読むこともできます。

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怒り・憎しみについて考えてみよう-PEALカウンセリング・楽しいカウンセリング入門-ミステリーの名著〈ブラックサマーの殺人〉から

 誰でも怒ったことがあると思います、それが軽いものであった場合には少し時間をおけば過ぎていくものでしょう。けれど大きく深いものであった場合〈憎しみ〉にまで発展していくことになります。すると日々の生活にも影響してくることになります。

 最近読んだミステリーの中に心に刻んでおきたい言葉に出逢いました、メルマガに書こうかと思っていたのですけど、その〈発想法の章〉は仮説実験授業を創造した板倉聖宣先生の話が続いているのでお蔵入りにならないうちにここで軽く紹介させてください。

〈憎しみ〉についていのチェロキー・インディアンの寓話で、最近手にしたM・W・クレイブン著
「ブラックサマーの殺人」の中に出てくるエピソードです。

 クレイブンの前作〈ストーンサークルの殺人〉が抜群に面白く、そこで活躍した刑事ワシントン・ポーと若き女性分析官ブラッドショーが登場するので迷わず手にしました、実に面白かった。
 ただし私の様に映画を含めて数々の作品に触れてきた人にも〈ハード〉に感じる内容です、そういうものも大丈夫だという人は、まず一作目の〈ストーンサークルの殺人〉から手に取るとよいと思います。
〈ハードな内容は遠慮したい〉という方は前回触れた「ザリガニの鳴くところ」をお勧めします、名作です。

 閑話休題
「ブラックサマーの殺人」の中にこういう回想シーンが出てきます。
 老いたチェロキーインディアンが、誰かへの憎しみをたぎらせながら訪れた孫にこう語ります。

「ひとつ話をしてやろう。
 
わたしもひどい仕打ちをしてきた相手に憎しみを感じたことはある。

 しかし、憎しみは心を疲弊させるだけで、自分を傷つけてきた相手にとっては痛くもかゆくもない。

 いうなれば毒をあおりながら、敵の死を願うようなものだ。

 わたしは何度もその感情に立ち向かってきた。

 自分のなかに二匹のオオカミがいて、わたしの魂を支配しようと争っているとでもいおうか。
 一匹は善良で害をあたえるようなまねはしない。
 まわりの連中と折り合いをつけながら暮らし、なんでもないことに腹を立てるまねはしない」

 

「もう一匹のオオカミはどうなの、じいちゃん?」

 

「うむ。
もう一匹は悪いオオカミだ。
 
そいつはいつも怒りに燃えている。

 ほんのささいなことでも感情を爆発させてしまうんだ。
 怒りと憎しみがあまりに激しく、まともにものが考えられない。

 しかも、その怒りは無意味だ。
なにひとつ変えることができないのだからね」

 

 少年は祖父の目をのぞきこんだ。
「どっちのオオカミが強いの、じいちゃん?」

 

 老人はほほえんだ。
「わたしが餌をあたえたほうだよ」

 

いっきゅう

「憎しみは心を疲弊させるだけで、自分を傷つけてきた相手にとっては痛くもかゆくもない。
いうなれば毒をあおりながら、敵の死を願うようなものだ」という部分は重い言葉です。
 願いというのはこちらの一方的なもので、願いそのものに何かを動かす力はありません。たとえばクリスマスプレゼントに〈土佐の剣鉈:けんなた〉が欲しいといくら強く願っていても、自分の心の中にあるだけではそれが枕元にくることはないでしょう。アウトドアに詳しい人でも〈ナイフ〉の種類に詳しいわけではありません、こういうナイフがあること自体知らない人が多いのですから。周りの人に伝えてもプレゼントしてもらえる可能性が少ないと思います。

 

 私の小学校の頃「みなさん、願いは必ず叶います」と本気で語っていた先生がいて、こども心にも「もしそれが本当なら戦争なんて起こらないし、ギャンブルで借金地獄に陥る人はいないでしょう」と考えたものでした。

 叶わない願いを続けながら自分自身は〈毒〉を飲み続ける…
 相手ではなく自分の寿命を縮めていることになるのです。
 実際〈怒り〉などの感情は循環器系によくない影響を与えます、血圧も高くなるでしょう、睡眠時間も減っていくでしょう、実質的にも毒といえば毒です。

 怒り・憎しみにとらわれている時
「それは自分の心を疲弊させるだけで、自分を傷つけてきた相手にとっては痛くもかゆくもない」と気づくことはきっと難しいかもしれません、カウンセリング的なアプローチが必要になる場合も多いと思います。


 PEALカウンセリングではそもそもその怒りは解決していく必要があるものかを整理して、必要があるという場合は〈怒り〉などの感情を利用せず問題解決していく選択肢を一緒に考えながらすすめていくことになります。

 ただしカウンセリングを受けないまでも、ここで書いたおじいちゃんと孫の話を心にとめておくことで、新しい変化も生まれてくるとおもいます。一人の人間として心にとめておきたい言葉だと思うのですけど、どうでしょうか。

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