琉球の言葉から-たのしい言語学

 英語・韓国語と続いた〈ことば〉の記事が好評です、今回は〈たの研〉のある琉球の言葉(沖縄方言・島言葉)にふれたいと思います、お付き合いください。

 歴史を調べたり、今残る建造物や古文書をたどることでそこに住む人たちの価値観や生活の様子などにせまることができます。しかし歴史というのは勝ち残った者たち、権力のある者たちが残したものが多く、それが庶民の価値観などを代表しているか、あやういところがあります。

 そういう中で〈使われている言葉〉にはしっかり庶民の価値観が残されています。

 たとえばその地域に〈闘いや争い〉を表現する言葉がとてもたくさんあるとしたらバトルが多かったと考えて間違い無いでしょう。

 そういう見方・考え方については以前このサイトでも紹介したので合わせて読んでいただければ幸いです、楽しい言語学の根幹の部分です⇨https://tanokyo.com/archives/32325

 さて琉球には〈闘い争い言葉〉が多いのでしょうか、それとも相手を〈元気付ける言葉〉が多いのでしょうか。
 この判定は簡単ではありません、肯定的な言葉には対になるように否定的な言葉が存在する可能性があるからです。

〈たの研〉には島言葉の教材づくりをリードしてくれているミエ先生のチームがいるので、これからの研究テーマの一つにしていただくとして、ここでは私自身の体験として、子どもの頃を中心に、祖父母や親類のおばあさんおじいさんから実際に声をかけられたり、周りの人が声をかけてもらったりしている言葉の中で〈これはいいな〉と感じた言葉、記憶にある表現を思い出して記すところからはじめたいと思います。

  十数年前になるのですけど、こどもたちから「先生、このマンガとってもおもしろい」と手渡された作品があります「ワタルがピュン!」です、たしかにおもしろかった、野球好きでなくてもたのしめると思います。魅力的な登場人物「がっぱい宮城」は口が悪くて、〈しなす~〉と叫びながらワタルを追いかけ回しているシーンがたくさん出ていました。

 島言葉にはそういう争いや闘いの言葉もあるとはいえ、ホッとする言葉もたくさんあります。
 もしかして肯定形と否定形が同数存在するとしても、庶民が肯定的な言葉を大切に使ってきていたとしたら、そこに庶民の価値観が色濃く残されているともいえるでしょう。

 私が実際に声をかけてもらった島言葉、近くで聞いていて「この表現はいいな」と嬉しくなった島言葉を思い出して記してみようと思います。その言葉から伝わってきたイメージも記したいと思います。

なんくるないさ
 ⇨大丈夫、時が経てばできるようになるから

じょーとー
 ⇨いいね、グッジョブ

ちばりよー

 ⇨がんばってよ、応援してるよ

うちちき よー

 ⇨落ち着いてやるんだよ

なとーん どー

 ⇨そうそうそれいいよ

でぃきとーんどー

 ⇨よくできてるよ!

かめーかめー

 ⇨いっぱい食べて元気になりなさいよ!

〈ちゅらさん〉やー

 ⇨清らかだね、美しいね

〈ちむじゅらさん〉やー

 ⇨心が清らかな人だね

〈いいニーセー〉なたんやー

 ⇨立派な青年になったね

〈よんなーよんなー〉ど~

 ⇨ゆっくりでいいんだよ

なま やさ

 ⇨そうそう、それだよ!

いちゃりば ちょーでー

 ⇨出会ったんだからきょうだいみたいな付き合いでいこう

やんど~

 ⇨そうだよね

まじゅん いかやー

 ⇨一緒に行こうね

※雨水のことを〈天水:てんすい〉と表現していた言葉もいい表現だと思う

 こうやって綴りながら浮かんだ言葉だけでいくつも出てきました。

 腰をすえると、もっとたくさん出てくるのは間違い無いでしょう。

 こども達にも楽しく伝えていきたいと思います。

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楽しい言語学-楽しい学力〈韓国語と日本語〉

 前回は〈たのしい英語〉の話だったので、今回は〈たのしい韓国語〉をテーマにとりあげましょう。〈たの研〉は「たのしく島言葉」の取組みをしています、楽しい教育の大きなテーマの一つが「言語」であるといってもよいでしょう。

 私いっきゅうの映画好きは中学生あたりから始まっていて、年々その熱は高まっていますから、いつの時でも〈今〉がピークです。最新の作品も観ますしDVDや映画配信の作品も観ているので、執筆しながらもBGMの様に映画が流れています。仕事の区切りにはしっかり画面に向かうので、1日どんなに少なくても1本は観ています。

〈たの研〉に韓国の作品が大好きな人がいて、最近私も韓国の作品を見はじめているのですけど、映画パラサイトがアカデミー作品賞をとったのは、その作品が特異だったのではなく、韓国の映画芸術の水準がかなり高くなってきたからだということに気づきました、残念ながら今の日本の映画界は韓国に遅れをとっていると思います。

 確かに日本にも名作はたくさんあります、黒澤明や小津安二郎といった世界に誇る監督もいたし世界に誇る作品もあるでしょう。その頃の韓国の映画芸術は日本にはるか遅れをとっていました。
 ところが今の状況で比べると、冷静にみて韓国が上だと思います。

「そんなことはないでしょう」と思う人はだまされたとおもってこの作品をご覧ください、大げさでないことがわかると思います。

・タクシー運転手 約束は海を越えて

サニー 永遠の仲間たち

・マルモイ ことばあつめ

・新 感染

・はちどり

 

 テレビシリーズにも名作がいろいろあります。
〈秘密の森〉
〈ウ・ヨンウ弁護士は天才肌〉

 

 さてそうやって韓国の作品をたくさん観ていると、韓国語の中に日本語と似ている単語がいろいろ出てくることが気になっています。

 例えば

〈約束:やくそく〉は韓国語でも〈ヤクソク〉と発音します。

〈鞄:かばん〉は韓国語で〈カバン〉

〈有料:ゆうりょう・無料:むりょう〉は韓国語で〈ユリョ、ムリョ〉と発音します。

〈簡単:かんたん〉は韓国語で〈カンダン〉

〈記憶:きおく〉は韓国語で〈キオク〉

〈気分:きぶん〉は韓国語でも〈キブン〉

他にも似ている言葉がたくさんあります。

https://koredeok-kankokugo.com/nihongotoniteiruhatsuonnokankokugo/

 このあいだYouTubeを見ていると、私と同じことが気になった人が言語学者にそのことを尋ねる「日本は中国大陸から漢字を輸入していて、韓国もそうなので、似たところはあるのでしょう」と淡々と語っていました、でもそうかな~?

 中国語〈約束〉は中国語では別な言葉で〈承诺〉で〈やくそく〉とはいいません。

〈鞄:かばん〉は〈訓読み〉つまり大和言葉読みです、中国ではそもそも鞄と言わず〈包:バオといいます。
      ※詳しい方でこの解釈に間違いがあれば教えてください

 私は学生時代、第二外国語で中国語をとったのですけど、その頃の不安定な知識ではこの問題を解決することはできず、根本のところから調べ直していくしかないのですけど、きっと韓国語と日本語は似ている言葉の中で〈中国ではこういう言い方はしない〉というものがたくさんみつかるはずです。

 確かに歴史的にみて大国中国の影響は大きいでしょう、けれど韓国映画の名作〈マルモイ ことばあつめ〉にも出てくるように、日本が韓国を統治して〈日本語化教育〉の影響も少なくないと思います、それを強引に押し進めた影響が今の韓国語に色濃く残っているのだと予想しています。

 みなさんはどう予想するでしょうか。

 そういう視点でこれからも自由研究していきたいと思います。きっと私より韓国語に詳しい方がたくさんいることでしょう。ご意見を寄せていただければ幸いです。

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教育の中にひそんでいる〈押し付け〉に気づくこと-たのしい教育の発想法-仮説実験授業研究会代表〈板倉聖宣〉が語ったこと

 週一で発行しているメルマガは4章で構成されていて、ラストは〈発想法の章〉です。今週その章にのせた板倉聖宣先生の話にさっそく反響が届いています。
 歯に衣着せぬ語りの板倉先生の話を読むと「え!」と驚くかもしれませんけど、板倉先生は文科省直属の教育研究所で室長をしていた人物です。

 批判ではなく提案をする組織である〈たの研〉の重要な〈たのしい教育メールマガジン〉に板倉先生が発する言葉を紹介するのはなぜか?
 それは私いっきゅうの自戒であり、教師が多く陥りやすい落とし穴に足をとられない様にするためだったものが、広く〈こども達の笑顔と可能性を広げようと努力する教師たち〉の心を動かす言葉でもあることに気づいたからです。
 メルマガへの反響は若い先生たちからも届きます、こういう考え方を心に留める先生たちが増えて行って欲しいと思っています。

 最新号の〈たのしい教育メールマガジン〉の発想法の章の中から再校正して少し紹介します購読しているみなさんも新鮮な気持ちで読んでいただけると思います。
 板倉先生が2002年に 大阪堺市〈ことばの教育・国語教育研究会〉で語った内容です。

板 倉

 教育はそのほとんどが〈文章〉と〈話し言葉〉で行なわれています、そしてそこに押し付けがたくさん潜んでいます。
 言葉というのは非常に便利なものですが、学校の教師はどうも権力の片棒を担いでいて「自分には押し付ける権利ある」と考えているふしがあります。
 だから子どもたちが分からなかったら「教師は正しくて、子どもがいけない」と考えてしまうことになるのです。
「教科書に書いてある言葉が正しくて、理解出来ない子どもが間違っている」というようなことは私には許せないのです。
 国語でいえば、こども達が理解出来ない文章を書く小説家がいけないのだし、理解が出来ない文章を教科書に載せている編者がいけないのです。
 言葉というものは理解出来るようになっているのですから「理解出来ないような言葉を教科書にのせてはいけない」と思うのです。
「子どもはまだ社会の中に充分に入り込んでいないのだから、大人になった時には理解できる。そのために分からないことがあっても仕方がない。だから学校教育では理解できなくても教えるのだ」という考え方もありますね、そうならそうで結構なのですが、たいがいは、その理解出来ないことを一生持ち続けることになってしまいますね。

 私いっきゅうにも、学校で教えられたことで謎のままなことがたくさんあります、それに溢れているいってもよいと思います。
 中学の社会の先生が〈尾根というのはこれこれこうだ〉と語ったこともさっぱりわかりませんでした、今もあえてわからないままにしています。
 前にも書いた様に英語は特についていけませんでした。
「Takeの意味はこれこれこうでたくさんあって、多くは〈つかむ〉という意味、でもこの場合のTakeは〈撮る〉という意味だ」という様に説明された時に〈こんな不合理な言葉に付き合うのはやめよう〉と考えました。
 先生の言う様に覚えていった人たちはほめられ、こんな風に学ぶのは嫌だと感じた私の様なタイプの人間は先生から冷たくあしらわれていきました。
 もちろん私の様にあしらわれた人たちが増えていき、ほめられていく少数の人たちはその後もどんどん減っていきました。
 映画のおかげでその後自力で学び、そういう様な組み立てパズルの様に教えいた先生たちの方が不勉強なのだと知ったのは10年以上経ってからのことです。
 Takeという単語をネイティブの人たちは「自分のところに取り込む」というイメージで理解していて、みかんをとるのも、自分のところにとりこむイメージ、写真の中に取り込んだりするのもTakeを使う。ちなみに〈薬を飲む〉という行為も自分の中に取り込むというイメージで〈Take medicine〉と使ったりするとわかったときに、やっとすっきり英語が理解できる様になってきました。

 教師になった私は、あの時の英語の先生の様に「わからないあなたたちが悪い」というタイプになっていないだろうか?
 この板倉先生の話で、我が身を振り返る大切な機会にもなりました。
 ここまでにしておきましょう。

 

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たのしい教育の発想法:板倉聖宣(仮説実験授業研究会初代代表)が語る「未来をみるときのスパン」

 最新の〈たのしい教育メールマガジン〉から発想法の部分を少し紹介しましょう、「どれくらい先の未来をみるか」という話です。
 〈たの研〉の活動を考える時の指針にしたい見方・考え方の一つです。

 板倉先生は独自の視点で多大な知識や予想を織り込んでくるので〈たのしい教育メールマガジン〉ではそれを私いっきゅうが整理校正してお届けしています、ご了承ください。

板倉聖宣
 金儲けしようとする人は1~2日でみようとしたり、1~2ヶ月で見ようとしたり、2~3年で見ようとしたりするから、これは大変ですね。
 明日、株が上がるか下がるかとかいうことは、偶然的な問題がきいてたり、あるいは裏情報がきいてたりするでしょう。だから2~3年後を予想するのはとっても難しい。
 株だけでなく、世の中の人たちは5年とか10年で生きている人が多いですね。
 でも〈社会の動き〉というのは、そういう偶然的なことで動くということは少なくないだろうと思います。
 世の中を見る時「こういうものをこれからだんだんと冬になりますから、だんだんと寒くなりますよ」というのは100%当たりますね。
 ところが秋から冬に向かっているから「明日は今日より寒いですよ」なんていっても100%は当たらないですね。
 それに対して「冬は寒し、夏は暑し」というのは厳然たる事実でこれは予言できる。それと似て、これからの世の中は100年後どうなるかということはかなり当たるんですね。

 

司会
 株をやる人とか、土地を買う人とか、スパンが違いますからね。

 

板倉
 世の中は見えないものだと思いがちなんですけども、スパンを長くすれば長くするほど見えてくるんです。
 見えるっていっても、あまり細かいものはダメですね、これは物理学の法則を適用したって見えるというものじゃないですね。

 私は物理学の教育を出発として、今では歴史や経済の教育にも手を出しているんですが100年規模や200~300年規模でものを見ていけば歴史というのはいかにも見事に法則的にいくことを発見しました。
 政府がインチキなお金を作れば、インチキなお金を作ったやつは信用されないし、いくら「いうことを聞かないやつは捕まえるぞ」と脅したって、そういう政府は何年後かにはつぶれちゃう。
 そういう法則は歴史の中ではっきり見えてくるんです。

監修:板倉聖宣『問題解決強化書』
新技術開発センター1991年

 メルマガではこういう毎回こういう話を読むことができます、興味のある方は、パソコンの方は〈サイドバー〉に、スマホの方は一番下の〈サブコンテンツ〉に案内があります。

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