通訳を介して外国人と話をしている夢/安野光雅〈算私語録〉/たのしいブックレビュー

 安野光雅さんの「算私語録」は気に入りの作品です。〈1分〉あればたのしめる内容にあふれているので、同じものを含めて数冊買って、いろいろな処ににおいてあります。本屋さんに入った時にも、つい手に取って読んでしまうことがあります、持ってるのに。

安野光雅 算私語録 朝日新聞社

 先日、古本屋さんに琉球の言葉の資料を探しに行った時にも、つい手にして読んでいました。確か〈その3〉だと思うのだけど、間違っているかもしれません。

 読んで笑ったのは〈夢の話はつまらない。聞かされる方もつきあいで相づちをうっているだけだから周りの人には話さない様にしている〉と始まって「イタリア人と通訳を介して話している夢をみた」という話です。

「通訳している方も実は私なのだから、実は私が訳して私に伝えているのだな」という安野さん一流の落としに笑って本を閉じ、目当ての絵本を買って戻りました。

 でも考えてみると〈話している外国人〉も自分がつくりだしているわけだから、私がつくりだした外国人が語っていることを、私が訳して、私に伝えたということにもなるんだろう、ますます笑えます。

 ところで私はこどもの頃から〈夢〉が大好きでした、今でも覚えている夢がたくさんあります。
 その一つ〈火事の夢〉で、私が消防士になってはしご車で取り残された人たちの救助をしていたんだけど、フッとシーンが切り替わって、次のコマでは私がビルの上で最後に残った一人の役になっていて、そのうち「あっ、そうだ飛べるんだった」と気づいてスーパーマンやパーマンになって空を飛んでいったという様なことがありました。

 小学校に入る前だったとおもうのだけど、もう「夢というのは自分の頭で作り出したものなので、いろいろたのしめるぞ」と気づいていて、眠る時には〈今日も空を飛びたいなぁ〉とか〈サンダーバードの一員になりたいなぁ〉という様に考えていました。

 今は「眠るのがもったいない」という日々なので、夢はほとんど覚えていないのだけど、年に一~二度くらいはスーパーマンの様に空を飛ぶ夢をみます。

 安野さんの「算私語録」に戻りましょう。

「夢の話を聞かされても、聞かされる方はつまらない」というのですけど、私は睡眠中の夢の話を聞くのは大好きです、私の様な人もたくさんいると思います。

 そういうことを含めて「算私語録」は、いろいろな刺激をうける本です。

 夏の読書の一つにお勧めいたします。

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外来種を敵の様に語ることがあるけれど、私たちを含めてほぼ全てが外来種/たのしい環境学の見方・考え方

 海外から沖縄に連れてこられたマングースたちが今は駆除されている悲しさについて書いた記事 https://tanokyo.com/archives/35643 もいろいろな反響が届き嬉しく思っています。こういうセンシティブなことに関しては、たのしい教育研究所として発言しているのではなく、私いっきゅう個人の見解として書いています。

マングース いっきゅう撮影2022

「ではどうしたらよいのだろう」と語る方たちへアイディアのはじめとして「せめてマングースを殺していくのではなく不妊化(子どもができない様にする)していって減らすという方法は取れないのだろうか・・・」という話をしています。

 わかります!
 その間〈ヤンバルクイナはどうする〉〈穀物がかじられる被害はどうする〉という声が大きく、怒られてしまうのも。合わせて〈そういうことができるのか〉という技術的なものを疑う人たちもいるでしょう。

 ただしそういう状況下で、すでにマングースは恩納村や金武町の山で私自身が普通に見かける様になっています。
 行政先導でハブ対策用にマングースを連れて来たのです。もちろん挑戦には失敗もあります、それが失敗だったという結果が出たなら、新しい方法を試して抜本的な解決が可能か試みることは大切だと思うのですけど、どうでしょうか。

 マングースの不妊化については素人(しろうと)の安易な思いつきでいっているのではありません、岐阜大獣医学部の国永先生が〈マングースの否認かワクチン〉の研究を公表してくれています、興味のある方はごらんください。

https://repository.lib.gifu-u.ac.jp/bitstream/20.500.12099/77959/2/vk0528.pdf

 
 それと並行して行政と民間、ボランティアが協力して管理できる範囲の山を〈ヤンバルクイナ保護地区〉に設定して、見つけたヤンバルクイナたちをつれてきて保護するのは不可能か?

 穀物等の保護に〈マングースガード/柵〉に助成金を出すというのは無茶なことか。

「完全ではない」「○○したらどうする」etc.
 反対意見はたっぶりあることを想定しつつ、マングースたちも大切な生命であることもあえて記したいと考えています。

生態系を守る

「生態系を守る」とか「外来種を減らす」という言葉が私たちの周りにあふれています。以前〈緑化活動〉に協力していた頃「とにかくそこにある植物はそのままにしなくてはならない、15m以上移動させてはいけない」と声を荒げて語る人たちがいることを知り、驚きました。

 そういう考え方もあるし、そう語る方たちに十分な根拠があることも認識した上で、まず落ち着いて考えてみたいのです。

 たとえば沖縄で育てている米(イネ)はもともと沖縄にあったものでしょうか?

 1000年くらい前に沖縄に入ったという話です、諸説あるとはいえ、海を越えて持ち込まれたもの、外来種だということは間違いありません。

 サトウキビは沖縄にもともとあっただろう、と考える人もいるかもしれません。

 いいえ、インドからいろいろな国々を経て渡って来たものです。

〈固有種〉という言葉があります、「ヤンバルクイナは沖縄固有の種だ」といわれたりします、けれどそれを〈沖縄で誕生した〉かのように考えてはいけません。

 沖縄はもともとユーラシア大陸と陸続きでした。

 それがプレートの活動によって切り離されて今の様に島としての姿になりました。その頃、陸続きので大陸に住んでいた生き物たちの中に沖縄に取り残された生き物が出てきたわけです。

 沖縄の固有種だといわれている生き物たちは、長い年月の中でも絶滅せずに残ったり、独自に進化をすすめてある程度姿形をかえていったものたちです。

 たとえばヤンバルクイナは沖縄の固有種だと言われています。しかしヤンバルクイナに近い種はたくさんいます。17番がヤンバルクイナで16番が〈ニューブリテンクイナ〉です。

 
 私たちの目にする生物は、ダーウィンが教えてくれた様に「すべて進化という線〈生命の樹〉でつながっている」のです。

 そして歴史的に見る〈生物の移動〉という視点をクエ悪と、ほぼ全ての生物は外来種だといってよいと思います。

「もともとそこに住んでいた種を守るために外来種を駆逐する」という発想の〈もともとそこに住んでいた種〉自体、長い歴史の目でみると、他所からはいってきたものたち、外来種です。

 先に来た者たちは後に来た者たちを排除する権利があるのでしょうか?

 私たち人間だってアフリカから渡ってきた外来種です。

〈すべてが外来種だ〉という認識で環境、生態系、そして人間同士の紛争を含めて考えていくことで明るくたのしく優しい未来を育てていけるのではないか、そういうことを考えています。

 暑い夏の日々はたくさんの生物たちが勢いをもつ時期でもあります。みなさんも一度、生態系を守る、外来種を減らす、ということについて本質的な部分から考えてみませんか。可能な方は親子あるいはクラスで「先に来た生き物たちが後から来た生き物たちと仲良くしていく方法はないだろうか」という話をしてみてはどうでしょう。たのしい教育メールマガジンのボリュームになるのでここではかけないのですけど、〈いじめ〉を含む重要な視点がたくさん出てくるテーマになると思います。

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たのしい宇宙科学『ブラックホール』⇨〈ブラック(黒い)ホール(穴)〉は穴ではないという話

 今回は久しぶりに宇宙の話をしましょう。大分前に作った科学の授業のプログラムで、ブラックホールを扱ったものがあります。宇宙に強い人たちでも「え!」というので、なかなか広がっていかないのですけど、それが「ブラックホールは穴ではない」という話。最近も、ある先生が「え~、ブラックホールって別な宇宙に繋がる穴じゃないんですか」と驚いしていました。

 たくさんの人たちがブラックホールを〈穴〉だと考えるのは、その名前にも原因があるのですけど、そこで目にしている〈イメージ図〉にも問題があります。

 これは写真撮影に成功したというその画像です、まさに穴が空いてみえますね。ウィキペディア〈ブラックホール〉の記事筆頭にある写真です。

 

 ウィキペディアにはこういう図もあります、まさに宇宙に穴があいていますね。

こういう図もよくみかけます、落とし穴の様にトンネルが続いています。

 何もない空間からガスが噴射している図もよく見ます。

 こういう図ばかり見ていると、〈穴〉をイメージさせる名前でなくてもブラックホールは〈穴〉なんだろうと思ってしまう、つまり間違ったイメージを持ってしまうのも無理はありません。

 けれどブラックホールは穴ではありません、ブラックホールは〈天体〉です。

wikipedia
ブラックホール
(black hole)とは、宇宙空間に存在する天体のうち、極めて高密度で、強い重力のために物質だけでなくさえ脱出することができない天体である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB

 

では天体とは何か?

ウィキペディアで検索するとこう説明されています。

https://ja.wikipedia.org › wiki › 天体
天体 ( てんたい 、 ( 英語: object、astronomical object)とは、宇宙空間にある物体のことである。

ブラックホールは〈物体〉つまり『原子の集まり』です。

「ブラックホールは星の一つだ」といってもよいでしょう。

 私たちが普通に見る岩石や金属より、もっと原子が高密度で、原子の中の陽子や中性子などを作る〈クオーク〉がびっしり詰まっているのではないかとイメージしている科学者もいます。何しろ普通の天体よりずっと重く、重力もものすごく強いので光すらすいよせるのがブラックホールです。

 丁寧に調べていくと、誤解を生まない様に〈星〉として描いてくれているものもみつかりますよ。

https://gigazine.net/news/20220220-black-hole-in-the-universe/

 かつてブラックホールは「あるだろう」と予想されている星でした。調査研究がすすみ、その存在が科学的に確かめられました。現在では、この宇宙にとんでもない数のブラックホールが存在していると予想されています。

 夏の夜空、星を見ながらブラックホールのことをこども達に語って見ませんか。

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自由研究:シロオビアゲハの研究

 第一研究所でシロオビアゲハを見つけました。

 私いっきゅうは「沖縄で最も数が多いのはシロオビアゲハではないか」と勝手に予想しています。でも専門家から「○○の種類が最も多い」という情報は発信されません。うかつにそんなことをいうと足をすくわれることがあるでしょうし、そもそも数の研究というのはとても難しいので手を出さないのでしょう。


 それにしてもチョウが舞う姿は優雅で見とれてしまいます。

 こども達に名前を教える時は、その名の通り〈白いオビ〉があるからということで、比較的カンタンに伝えることができます。そしてこどもたちも色々なチョウの種類の中からシロオビアゲハを同定(それであると特定すること)できる様になります。

 ところが〈進化〉というのは面白いもので、シロオビアゲハのメスは遺伝的に2つのタイプに分けられます。

 オスと同じ様に白い帯がある〈通常型〉と白い帯に加えて赤色の斑点があるベニモン型〉です。

 そしてベニモン型といってもいろいろなバリエーションがあります。

※東京のズーネットにある写真がわかりやすいので感謝して利用させていただきます

https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=tama&link_num=25028

   ベニモンアゲハは毒成分のアルカロイドを体内にたくわえていて、鳥などが食べるとまずくて吐き出し、以後、鳥達はこの紅もようをみると食べるのをさける様になります。
 アゲハチョウのメスの中に、このベニモンアゲハに擬態したタイプがいるわけです。

 どうしてオスはそういう擬態をしないのか、またメスの中にも擬態しないタイプがいるのはなぜか?

「進化の途上だから」というのがその答えでしょう。

 生物は環境に適した形で姿形、行動を変えて生きながらえていくのです。

 話を少し戻しましょう。

「シロオビアゲハの同定はカンタンだ」と書いたのですけど、これを知ると、メスの同定は難しいと感じるかもしれません、確かにそうです。でもこういう細かいタイプまで具体的に区別するのではなく「白いオビがあるのがシロオビアゲハ」という見分け方プラス「メスにはベニ模様が入るタイプもいる」ということで特に困らないでしょう。

 進化の途中のタイプを教えるにはもってこいの教材かもしれません。 

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