「私たちの背中をみて子ども達は何を学ぶか」ー最新メルマガから〈楽しい学習・楽しい学力・楽しい教材・楽しい学力向上〉、ブックレビュー:城山三郎「素直な戦士たち」

「私たちの背中をみて子ども達は何を学ぶか」をテーマに最新メルマガの〈授業の章〉を綴りました、今回はその部分から少し取り出して紹介しましょう。

 親や先生のいう通りそのまま従う子ども達を育てること、作家城山三郎が問いかけた著書のタイトルを借りれば〈素直な戦士たち〉を育てるのではなく、チャレンジングな子ども達が育っていくことが必要だという話。そして子ども達が何か新しいことに挑戦しようとした時、親は教師はどういう様に接していったらよいのか、それが前回のテーマでした。

 今回は、子ども達の眼に映る私たちの後ろ姿について考えてみたいと思います。

 

大人たちの挑戦
 今の社会を実質的に動かしているのは子ども達ではありません、私たち大人です。私たちのが会社や学校で組織の一員として働き、政治家を選び、ほとんどの税金を出してこの社会を支えているのです。
 その私たち大人が〈昨日と同じ今日〉〈去年までと同じ今年〉〈数年前・数十年前と同じこれから〉を生きていくとしたら、日本のこの停滞はそのまま続くことでしょう。
 そういう私たちの後ろ姿を見ていくこどもたちはどういうことを学んでいくでしょう。

 引用は以上

※城山三郎の「素直な戦士たち」は名作です、本の表紙は初めの頃とかなり違ってしまい、大気な違和感を感じます。購入したら表紙は裏返してから読むとよいと思います

 

 大人はいろいろなものごとに縛られていますから、自由気ままにチャレンジとはいきません。けれどそういう中でも自分のオリジナリティーを発揮して、子どもたちの笑顔と元気の向きに、これまでと違う挑戦をしてみる、そういうチャレンジ精神は残しておきたいと思う今日この頃です。

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寺田の寅さん〈寺田寅彦〉/楽しいブックレビュー 寺田虎彦〈チューインガム〉/もう一人の〈寅さん〉寺田寅彦/楽しい学習・楽しい学力・楽しい教材・楽しい学力向上・私の寅さん

 忙しくなって読書量は激減したとはいえ一時期より明らかに増えてきました。わくわくドキドキ系から科学系哲学系まで幅広くたのしんでいます。気に入りの作家の一人は〈寺田寅彦〉、100年くらい前に活躍した人物ですです。

wikipediaから引用校正してみましょう。https://ja.wikipedia.org/

寺田 寅彦/てらだ とらひこ
1878年明治11年)11月28日1935年昭和10年)12月31日
日本の物理学者随筆家俳人。吉村 冬彦(1922年から使用)、寅日子、牛頓(ニュートン)、藪柑子(やぶこうじ)の筆名でも知られる。高知県出身(出生地は東京市)。

東大物理学科卒。熊本の五高時代、物理学者田丸卓郎と、夏目漱石と出会い、終生この2人を師と仰いだ。

東大入学後、写生文など小品を発表。

以後物理学の研究と並行して吉村冬彦の名で随筆を書いた。

 随筆集に『冬彦集』(1923年)など。

 何ヶ月か前、DVDで〈フーテンの寅さん〉を観た日に〈寺田寅彦随筆集〉を読んだことがあって「あ、寺田寅彦も寅さんだな」と気づいたことがありました。

 時代のもつ背景と写真がとても貴重だった状況が重なって寺田寅彦は難しい人物に映るかもしれません、でも寅彦のエッセイなどに出てくる真剣な遊び心、誠実さ、人好きなところ、不器用なところetc. 私にとって寺田寅彦も親しみを込めて〈寅さん〉です。

 フーテンの寅さんはたくさんの名言を残しています、たとえば

何て言うかな、ほら「あ-生まれて来てよかったなって思うことが何べんかあるだろう」
そのために人間生きてんじゃねえのか

第39作「寅次郎物語」(1987)

 寺田の寅さんも名言をたくさん残しています、有名どころは

天災は忘れた頃にやってくる

 弟子の中谷宇吉郎が朝日新聞 1938年7月9日 第7面に「天災は忘れた頃に来る。 之は寺田寅彦先生が、防災科学を説く時にいつも使われた言葉である。そして之は名言である」と書いてとても有名になりました。

 ということで今回は寺田の寅さんのエッセイの話です。

〈たのしい教育メールマガジン〉に寺田寅彦「茶わくの湯」という作品を詳しく紹介して、その抄編をこのサイトにも載せたことがありました。

たのしい読書案内「科学絵本 茶わんの湯」寺田寅彦 窮理社2,200円 学校の図書館に一冊!

 寺田の寅さんの紙の本もたくさん持っているのですけど、出先とかポッと空いた時間が読書タイムになるので電子書籍Kindleで読むことが多くなります。

 以前紹介した〈茶碗の湯〉のとなりがチューインガムです。

 寺田の寅さんの〈チューインガム〉という短めのエッセイがあって、私の手元にある全集では、先に紹介した〈茶碗の湯〉のとなりに収録されています。

 100年くらい前にすでに日本にチューインガムがあったことに知的好奇心がゆれ、ガムの歴史を調べてみました。それはいずれ書くとして、エッセイはこうはじまります。もうすでにチューインガムに対して良いイメージがないのだろうという書き出しです。

 銀座を歩いていたら、派手な洋装をした若い女が二人、ハイヒールの足並を揃えて遊弋(ゆうよく)していた。そうして二人とも美しい顔をゆがめてチューインガムをニチャニチャ噛みながら白昼の都大路を闊歩(かっぽ)しているのであった。

 

 読んでいくと、寺田の寅さんは、実はアメリカの税関でチューインガムをニチャニチャ噛んでいる職員にカバンの底の底まで徹底的に探られたとのこと。

(アメリカに)上陸早々ホボケンの税関でこのチューインガムの税関吏のためにカバンを底の底まで真に言葉通り徹底的に引っくり返されたのであった。これが、ついちょっと前に港頭にゆる有名な「自由の神像」を拝して来た直後のことなのである。
 カバンは夏目先生からの借りものであった。先生が洋行の際に持って行って帰った記念品で、上面にケー・ナツメと書いてあるのを、新調のズックのカヴァーで包み隠したいかものであった。その中にぎっしり色々の品物をつめ込んであった。細心の工夫によってやっとうまく詰め合わせたものを引っくら返されたのであるから、再び詰めるのがなかなか大変であった。これが自分の室内ならとにかく、税関の広い土間の真中で衆人環視のうちにやるのであるからシャツ一つになる訳にも行かない。実際に大汗をかいて長い時間を費やした後に、やっと無理やりに詰め込む事が出来たのであった。

 カバンに入れたものをひっくり返されて、その後それを詰めようにも詰められなくて焦ったところも目に浮かんでくる様です、ちなみに私も同じような経験が何回かあります。

 日本への土産にドイツやイギリスで買って来たつまらない雑品に一つ一つ高い税をかけられた。その間に我が親愛なる税関吏はみなくチューインガムをニチャニチャ噛みながら品物を丹念に引出し引っくら返しては帳面に記入するのであった。アメリカ人にしても特別に長い方に属するかと思われるこの税関吏の顔は、チューインガムを歯と歯の間に引延ばすアクションのために一層長く見えるのであった。

 顔の長いその職員の顔がチューインガムを噛む仕草でさらに長く見えたというところなど、笑えます。

 寺田の寅さんはアメリカの入管でよほど頭にきたのでしょう、「日本人もチューインガムの流行で生理的心理的にアメリカ人に近付いていってしまい、日本魂も消滅してしまうのではないか」と心配したりします、おいおい。

 チューインガムの流行常用によってその歯噛みの動作の反応作用から日本人が生理的並びに心理的にだんだんアメリカ人のようなものに接近して行くというようなことはあり得ないものか。そういう日が来れば我国の俳諧は滅亡するであろう。

 そうして同時に日本魂もことごとく消滅してしまうであろう。こんな極端な取越苦労のようなことまで考えさせられるのである。

 日本の著名な科学者の中でとてもよい文章を綴る人をあげると、寺田の寅さんはそのトップ集団にいます。いろいろな人たちが寅さんの文章に親しんでくれることを期待しています。

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たのしい教育研究所のたからもの/卒業生が読み語った絵本

 たのしい教育研究所の関係者の方たちから「この先生、とてもセンスがよいのでぜひ教員採用試験に合格させてほしい」とたのまれ、いっきゅうofficeで〈合格SV〉を開催し本務になった先生たちがたくさんいます。〈たの研〉が送り出した宝物の先生たちです。
 その先生たちが、子育てなどで忙しかったりする中、たまに〈たの研〉に顔を出してくれます。

 これはその一人S先生が、好きな絵本を読み語ってくれているところです。

読んでくれたのは「きみのことが だいすき」 いぬい さえこ 作

 ほのぼのするだけでなく、学校でも家庭でも、子どもたちに伝えてあげたい大切なことを言葉にしてくれています。

 〈たの研〉の読み語りスペシャリスト〈ナノ先生〉も、以前から講座などで紹介したいとリストアップしてくれていたそうです。

「いっきゅう先生、先生が知っている頃の学校もとても忙しかったと思うけど、今はさらに忙しくて、先生たちはますますゆとりがなくなってきているんですよ」
 そういう話を聞いて悲しい思いをしていたのだけど、学校で家庭で、こどもたちにいろいろな作品を読み語ってくれる人たちが増えていくといいなぁ~

 こども達に、美しいもの・よいものをたくさん味わってほしいです。

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読書のすすめ/安野光雅著「絵のある自伝」を手にして考えたこと

 所用で東京のあちこちを飛び回っています、雪が降るかもという予報が外れて残念。阿佐ヶ谷の街を歩いているとき古本屋さんをみつけました。

「そういえば本屋さんに通りかかったら必ずというほど入っていたなぁ」と思い、用も済んだ後だったので、ずいぶん久しぶりに入ってみました。

 いかにも古書店の店主という様な白髪の店主が奥に座っていて、客は私の前にも誰もあません。

「みせてくださいね」という私に

「どうぞ」と返し、ヒーターを強くしてくれました、優しい人です。

「最近、こういう古本屋さん、少なくなりましたよねぇ」と話すと

「いえ、中央線のあたりはそうでもありませんよ」という返事、嬉しいことです。

 店にどういう本があるか質問などして、しばらくやりとりしたあと、落ち着いて中をみてまわりました。

 ちょうど堀田善衛さんの本があったので〈方丈記私記〉を探してみたのだけど見つからず、近くにあった安野光雅の〈絵のある自伝〉を買いました。これも単行本を誰かに貸したままになっているので、ちょうどよし。

 人間が親しんできたもので役立たないものは基本的にないと思います。
 私が子どもの頃から親しんできて、とてもたくさんの楽しみを与えてくれて、いろいろな状況を突破する中で強く助けてくれたものがあります。 

 それが〈本〉なのは間違いありません。

 一人の人生では決して味わえないくらいたくさんの感覚や感情、ものの見方考え方、行動やそれに伴う楽しさ、厳しさ、強烈な人物やごく普通の人たちの個性や行動、おそらく行けないだろういろいろな場所、食べたことのない料理etc.

 そういうものを味わわせてくれた最大の媒体は〈本〉でした。

 こども達の周りに本があふれてほしい、そして本を読むことを強制したり、これがいいあれはダメとコントロールする人ではなく、本の楽しさを伝えてくれる人が増えてほしい。
 そうすると、たとえ今、本を手にしなくても、その魅力はきっと子ども達に伝わって、いつか自然に手にする様になるだろうから。

 そんなことを考えながら、数年ぶりの古本屋さんらしい古本屋さんを後にしました、新年の大切な出来事の一つです。

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