チベット旅行記/青空文庫・Kindleで読めます

 知人とkindle(キンドル:電子書籍サービス)の話になり私のアウトドア系の座右の書 河口慧海(かわぐち えかい)「チベット旅行記」を紹介しました。

 実際の本は講談社学術文庫と旺文社文庫の二つを持っているのですけど、講談社の本は4分冊

 旺文社文庫の本は一冊で上の四冊本の厚みがあります。もう一冊買っておこうかと調べてみたら古本で5000円近くの値がついています、いつの間にか貴重な本になっていました。

 

 河口慧海は明治期のお坊さんです。

 当時の日本にある仏教の本は、漢語つまり中国経由のものばかりでした。慧海はそれらの仏教の経典が、同じ箇所所を訳しているはずなのに本によって異なる意味になっていたり、訳されてなかったり、順序も違っていたりしているのが気になり、本来の仏典、古代インドのサンスクリット語で書かれた仏典を求めに旅立つことを決意します。

 原書はブッダのふるさと仏教の生まれたインドに渡ればよいと考えるところですけど、インドに行っても原書はほぼ手に入らないらしい。今はネパールやチベットにそういう経典が残っていて、特にチベット語に訳された経文は文法の上からも意味の上からも中国訳より確かだという。

 そこで彼はチベットに入ることにします。

 当時のチベットは鎖国していて日本から行っても捕まるに決まっています、そこでいろいろな知恵を絞って入るのですけど、その道程は並大抵のものではありません。登山の本や映画を数々手にしてきたのですけど慧海さんのチベット旅行記は、その作品の中に入れてもトップクラスに読み応えがあります。

 登山などのトレーニングなど積んでいないはずなのに、30キロほどもある重い荷物を頭の上に束ねてチベット氷河から流れ来る身が切られるほど冷たい川を渡る。

 渡ったはよいものの、あまりの冷たさに身体の震えが止まらず動かすことができない、そのまま死んでしまうのではないかというようなレベルの話が何度も出てくる、アドベンチャーものとしても優れものです。

 さてさて古本で5000円の値がつくチベット旅行記ですけど青空文庫とkindle(キンドル/電子書籍サービス)で無料で読めます。登録でお金がかかるわけでもないので、興味のある方は入手してみるのをお勧めします。ちなみにKindleも青空文庫が作成したデータを利用している様なので書きづらいのですけど、レイアウト的に読みやすいのはKindleです。

青空文庫「チベット旅行記」

https://www.aozora.gr.jp/cards/001404/files/49966_44769.html

Kindle「チベット旅行記」※この本をクリック⬇︎

 朝日新聞社の記者に語ったものを文字起こししたものなので全体は読みやすいのですけど、はじめの本人が書いた文章は読みにくいです、飛ばして良いと思います。

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星野道夫〈ジリスの自立〉、読者の方からの便りをきっかけに

 3つ前に書いた星野道夫の「ジリスの自立」を読んだ方から、便りが届きました。その人も同じエッセイを読んでいるようで、その部分の写真を送ってくれました、もしかすると高校生なのかな、そうではなくても子どものような心をもった人なのだと思います。※作成中に手違いで二日前、四時間ほど途中の記事がUPされていました、その時より写真や文章がふくらんでいます

 「もう一度中身が知りたくなって本を開きました」とありましたから、その後の展開が気になっている方もたくさんいるかもしれません、紹介しましょう。
 気に入ったらぜひ星野さんのエッセイを一冊手にしてみてください。

 星野道夫の〈ジリスの自立〉は、いくつかの本に収録されています、小学館「アラスカ 永遠なる生命」、文春文庫「果てしない旅の途上」、新潮社「星野道夫著作集4」、他にも出ているかもしれません。

 ジリスというのは、アラスカに住んでいる大きなリスで、ホッキョクジリスといいます。

 私もマッキンリーでテント生活をしている時によくみかけました、近くまで来てくれるのですけど、リスとは思えないほどの体格です。耳を別にすればうさぎくらいあるんですよ。

 鳴き声は鳥の様で、ホッキョクジリスが鳴いていると気づくまで数日かかりました。

 たまに開くサイトですけどホッキョクジリスの声もあります、よければ聞いてみてください。※ジリスの下の〈Listen〉のボタンをクリック

http://www.adfg.alaska.gov/index.cfm?adfg=arcticgroundsquirrel.printerfriendly

 

 アラスカのマッキンレー国立公園には、毎日たくさんの観光客が訪れ、ジリスたちは食べ物がもらえると知っているので、たくさん寄ってきます。


 公園のレンジャーは、ジリスたちに何とかエサをやらないようにと呼びかけているのですけど、可愛らしいジリスのしぐさに、食べ物をあげる観光客は後を絶ちません。

ここから星野さん文章・・・

ある年のこと、奇妙な立て札が立った。
何故、奇妙かというと、その立て札はわずか10センチほどの低さで、身体を曲げて
わざわざのぞき込まない限り見えないのだ。

その内容は「ジリスたちよ!」で始まる。
ジリスたちへの警告だったのだ。

「‥‥おまえたちは、そうやって人間から餌をもらってばかりいると、だんだん体重が増え、動きも鈍くなり、いつの日かイヌワシやクマの餌になってしまうんだろう‥‥」

私は笑ってしまった。

何だろうと思ってサインを読む観光客も苦笑いを浮かべている。

 

ふと、日本の動物園で見た、クマのおりの中にひっきりなしに人々が食べ物を投げ込む光景を思い出していた。

そこに書かれていた「動物に餌をあげないでください」というサインは、何と力のないメッセージだったのだろう。

 そんなことは、だれもが知っているのだ。

 思わず動物に餌をあげたくなってしまうのも人の自然な気持ちなら、餌をやってはいけないのだと感じるのも人の素直な気持ちである。

 正論に力を持たせるのは大変だ。

 余裕を持ったちょっとしたユーモアが時に人の心を大きく動かしてゆく。

 星野道夫という才能は、極北の地で大きく花開きました。今でも、その優れたエッセイを読むことができるのは豊かなたのしみです。

 写真も一緒にたのしむなら「アラスカ 風のような物語」小学館 がおすすめです。「風のような物語」というタイトルも心ときめかせてくれます。中にはまさにアラスカの風を感じる写真と文章が詰まっています。

アラスカ 風のような物語(小学館文庫)

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本そのものの魅力を超えて〈たのしい読み語り〉

 私いっきゅうは〈活字中毒〉だった時代があって、気をぬくとすぐにその症状が復活してしまうので、大量の本を処分してきたのですけど、つまりは本の魅力を十分すぎるほど知っているからです・・・おそらくタバコをやめようと努力している人たちもこんな感じなのでしょう。

 私自身これまで何度も〈読み語り〉を子ども達とたのしんできたのですけど、一人で黙って読む世界とくらべて、躍動感喜怒哀楽は格段に上回ります。

 読み語りする人と、それを目の前で固唾を呑みながらきいている子どもたち・大人達・・・
 その関係の中で高まっていくからです。

 さてこの写真をご覧ください、秋風がかけぬけてく屋外で、たくさんの子どもたちに一斉にではなく少数ずつ読み語りしています。
 手にしているのは「かがみの絵本」。

 

 こどもたちは、前のめりでたのしんでくれています。

きょうの おやつは (福音館の単行本)

 

 たのしい読み語りにも、これからますます力を入れていきたいと思っています。

 このサイトには読み語りにおすすめの本もブックレビューしてしています、興味のある方は過去の記事を検索してみてください。

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たのしい読書案内〈アライバル〉

久しぶりに読書案内をさせてください。
 私いっきゅうのとっておきの絵本の一つが〈アライバル〉、この一年で読んだ本の中でとても心動かされた一冊です。

    ショーン・タン作「アライバル」、大型の絵本です。
 2750円、映画の1.5倍くらいします、でもその価値は十分あると思います。私は5回読んで、読むたびに、心を震わせていました。

 表紙をめくるとたくさんの人たちの顔が出て来ます。その表情からも決して愉快なものではないことが伝わってくるでしょう。

 第1章の冒頭には、ある家族の写真と時計や帽子、珈琲の注がれたコップなど家の中の家具などが描かれています。


 ページをめくると、その家族の写真を大切に包み、女の人と男の人が手を重ねているシーンになります・・・

 女の子を起こして軽い食事をとらせたのでしょう、三人は路地をどこかに向かって歩き出します、そして壁には竜の尻尾の様な影が映し出されています。

 上空から見ると巨大な怪獣が街を徘徊していることがわかります。これは実在するものなのでしょうか、抽象的なイメージなのでしょうか。
 今のところわかりません・・・

 気づいたでしょうか、この絵本に言葉は登場しません。
 全て精緻なスケッチで作成されています。

 ストーリーは一人ひとりの頭の中でつながっていきます、そして私がつむいだストーリーと、みなさんがつむいだストーリーはきっと異なっているでしょう。
 つながらない部分は、何度か読んでいくうちに「これはこういうことか」という様に腑に落ちていきます。

 すでに5回読んで、これから6回目に入ります。
 絵に隠れた細かい表現も、毎回発見がなってて、どきどきしながら読んでいける力作を、みなさんも読んでみませんか。

注文できます➡︎アライバル

 

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