たのしいブックレビュー『遺伝子』=ダーウィンさんとメンデルさんの謎

 前回からの続きです、どうしてダーウィンさんは自分の進化論にとって決定的に重要な実験をしていたメンデルさんの研究に触れていないのか、知らなかったのか、という話です。

 最近読んだ本

 シッダールタ・ムカジー著『遺伝子(上)』早川書房

 にこうあります。

 もしダーウィンが彼の膨大な蔵書を注意深く探したなら、ブルノに住むほとんど無名の植物学者の書いたパッとしない論文への言及に目を止めたかもしれない。

 1866年に無名の雑誌に掲載された「植物の交雑実験」という控えめなタイトルのその論文には、ドイツ語がびっしりと並んでいた上にダーウィンがとりわけ嫌っていた〈数表〉がいくつもあった。それでもダーウィンはあと1歩でその論文を読むところだった。

 1870年代初めに植物の交雑に関するある本を読みながら、彼は50ページと51ページと53ページと54ページに膨大な書き込みをしていたのだ。しかしなぜか、エンドウの交雑実験に関するブルノで発表された論文について詳細に論じられている〈52ページ〉には何の書き込みもなかった

 もしダーウィンがエンドウの論文を実際に読んだなら、とりわけ家畜、栽培植物の変異を書きながら、パンゲン説を作り上げようとしていた最中に、その論文は、彼に自らの進化論を理解するための決定的な洞察を与えたはずだった。

 彼はおそらくそこに含まれた意味に魅了され、その研究者が行った優しさあふれる作業に感銘を受け、その論文の持つ奇妙な説得力に胸を打たれたに違いなかった。

 直感的な知性によって進化論を理解するための理論が含まれていることをすぐに見抜いたはずだ。さらにその論文の著者が自分と同じ聖職者であり、自分と同じように神学から生物学へと壮大な旅をして、そしてまた自分と同じように、地図の端から起こした人物だということを知って喜んではずだ。その人物とは聖アウグスト修道会の修道士、グレゴール・ヨハン・メンデルだった。

 〈とても広い空白〉の章ラスト部分

 生物学の研究者の間では「ダーウィンがメンデルの論文を読んだ証拠は見つかっていない」と言われているのですけど、ムカジーさんはダーウィンの書き込みにまで言及しているので、ほぼ確かなことなのでしょう。とはいえ確かではない可能性もあるので「かなり確かだろう」という段階でとめておいて、今後その書き込みの写真が出てきた時に決定打とした方がよいと思います。
 ちなみにこのムカジーさんは一流の研究者であり、ピュリッツァー賞も手にした人物で、ネットなどでみる様な怪しい人物ではありません。

 さて、ムカジーの著書によるとダーウィンは数表をとりわけ嫌っていた、とのこと・・・

 ダーウィンさんが数表を嫌っていなかったら、その当時の人たちに対して進化論をさらに説得力ある文章で説いていったに違いありません。

 あの頃、たのしい教育研究所があったら、ダーウィンさんにたのしく算数・数学の力を高めてあげられたのに・・・
 そんなことを考えていました。

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ダーウィンとメンデル/たのしい発想法入門 たのしいブックレビュー〈シッダールタ・ムカジー著「遺伝子(上)」早川書房〉

 ダーウィンの『進化論』の翻訳をゆっくり進めているのですけど、どうしてダーウィンは〈進化論〉を補完する強力な実験結果を提示していたメンデルの研究を無視したのか、とても気になっていました、大豆の実験で遺伝の法則を驚くほどシンプルに見せてくれたメンデルの研究は、ダーウィンの進化の研究の支えるものとなったでしょう。

 二人は違う時代に研究をすすめていたからでしょうか。

 いいえ、写真に記したように、二人は同じ時代に生き、ほぼ同じ年代に亡くなっています。

ダーウィン 1809年2月12日 – 1882年4月19日

メンデル 1822年7月20日 – 1884年1月6日

 ダーウィンさんがもしメンデルの遺伝子のアイディアを知ったとしたら、自分の進化論の研究がもっと早くすすんだと思います。

 どうして生物学で世界的な発見をした両巨頭のアイディアが交わらなかったのか・・・

 とても遠い処に住んでいたから気付かなかったのでしょうか?

 いいえ、ダーウィンはイギリス、メンデルはオーストリア、どちらもヨーロッパです。ダーウィンらみると、メンデルの住むオーストリアは、イタリアに行くより近い場所にあります、手紙や論文、著作物が届くのに不利だということはありません。

 
 メンデルさんが、あえてダーウィンさんに論文を送らなかったのでしょうか・・・

 メンデルさんは自分の研究が世に認められてないのでたくさんの人たちに論文を送ったと言われています。ダーウィンさんだけ避けたとは考えづらい・・・

 みなさんは、どうしてだと思いますか。

 以前からのその謎が、解けた気がしています。

 最近読んでいる本 シッダールタ・ムカジー著「遺伝子(上)」早川書房に、二人の関係がとても詳しく書かれていました。 つづく

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〈リング・キャッチ〉子ども達の教材開発②-自由研究が本物の研究/たのしい学力向上

前項の続きです、未読の方は一つ戻ってお読みください。たのしい教育研究所(RIDE)に来た、こどもの自由研究の実験結果が届きました。

 私は夏休み自由研究の審査もしたことがあるのですけど、形式的に整ったものがほとんどです。〈なぜこの研究に取り組もうと思ったのか〉〈研究の目標〉〈研究の方法〉〈観察・実験〉〈考察〉〈今後の展開〉という様に・・・

 見栄え・ビジュアルを意識した研究発表も多いので目を引きます。

 それはそれで良いのです。

 たのしい教育研究所が目指しているのは、形式見栄えなどより、まず本人の〈たのしさ〉です。形式や見栄えは必要に応じて、あとで身につけていけばよいことです。

「何しろこの研究がたのしいんです」が一番です。

 今回〈たの研〉に届いた写真とメモ用紙には、生き生きたのしむ気持ちがあふれていました。

 これがAさんが実験した実験道具です。

〈金属球のチェーン〉〈毛糸〉〈ひも〉〈糸〉が写っています、この中のどの素材の成功率が高いのか、がテーマです。

 

実験結果

 このペーパーに実験の流れと結果が書かれていました(加工済)。

 

 見ていてとてもたのしい研究成果でした。
 たとえば実験の様子をまとめる中でこういう絵が描かれています。

 今は〆切ものに追われていて、ゆとりがないのですけど、さっそく自分でも試してみようと思います。

 担任の先生を通してAさんには「〈たのしい教育研究所ジュニア研究員〉という名前を使ってよいです」と伝えてもらいました。

 Aさんの担任の先生の様に、たのしい研究を応援してあげる大人たちが増えていってほしいです。まず読者のみなさんが、そういう人になってくれることを期待しています。

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日本の実力「自動車大国 日本」の実力は?② 楽しい社会

 前回の問題からの続きです、未読の方は戻ってお読みください。日本の自動車メーカーの電気自動車・EVの売り上げ台数は世界の中でどの程度でしょう?
 みなさんの予想はどうでしたか。

 自動車産業の調査会社「マークラインズ」(東京)のデータによると2022年上半期のEV売上はこうなっています。

 2022年上半期のメーカー別のEV販売台数を本紙が集計したところ、テスラが首位で55万台超。

2位は中国EV大手の比亜迪(BYD)の30万台超で、米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)がそれぞれ20万台超で続いた。

日本勢は3社連合の6位が最上位で13万台超だった。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/219477

 日本の〈三社連合〉というのは「ルノー・日産自動車・三菱自動車」の連合のことです。

 自動車全体で世界トップの販売数をほこるトヨタはどこにいったのでしょう?

 トヨタはEV売上2万台で〈28位〉です、トップ集団から何周も遅れているといってよいでしょう。

 これから世界の自動車業界はEVにシフトしていく流れです、するとトヨタの売り上げ台数は相対的に落ちていくことになるでしょう。

 日本が加わった3社グループの〈13万台〉も、トップ「テスラ」の〈55万台〉の23パーセントに満たない上に、三社合わせてということですから、単純に一社あたりで計算すると〈約4.3万台〉です、トヨタよりは売れている計算になりますから、トヨタがかなりEVで遅れをとっているかがわかります。

 EVに搭載される電池はリチウム電池が主力です、それが〈全固体電池〉にシフトしていくと、日本の自動車産業が巻き返していく可能性はあります。日本は全固体電池の研究で世界をリードしているからです。

 日本が元気になっていくためには教育がカギを握っていくことは間違いありません、学ぶことをたのしむ事が決定的です。
 その中で日本の現状を知ることも、きっとプラスに働くでしょう。

 日本全体の元気のためにも、たのしい教育研究所が元気に活動していきたいと思います。みなさんの応援をたのしみにしています。

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