教育の停滞を突破するもの〈教師編〉

 今回書く内容は最新の〈メルマガ発想法の章〉の冒頭部分です。これまで何度か語ってきたことなのですけど、いろいろな先生たちの相談にのっているうちに、かなり本質に近いものだと思えてきました。このサイトには教師だけでなく子育て中の方、介護士の方、行政にいる方、レストランを経営している方、塾を経営している方、学生の方などいろいろなみなさんがアクセスしてくださっています。ぜひチャレンジングな先生たちを応援していただきたいと思っています。メルマガに加筆して掲載します。

 教育の停滞を突破するために教育行政的なシステムの改革は必須でしょう、けれどそれまでに教育関係者ができることもあります。
「子ども達にこういう教育をしたい、こういう授業をしたい」と自分が感じるものをゆっくり取り入れていくことです。
 もちろん学校の状況によってそういう授業は〈週一本〉〈月一本〉がやっとの場合もあるでしょう、それでも意欲を基にした授業は子ども達や先生たちを元気にしてくれます。
 私は早期退職する前、そういう授業そういう教育、つまり自分がワクワクするものを中心に実践していました。

 指導要領を無視して授業していたわけではありませんよ、理科の「春の虫をさがそう」という単元なら「自分がワクワクするのはどういう授業だろう、自分が子どもの頃わくわく授業ってどういうものだろう? 実際の散歩もいいな、絵本もいいな、授業書〈足は何本〉もいいな」と考えて計画していきます。指導要領の想定しているものを含んだ上で子ども達も教師自身もたのしめるものを組み立てていくのです。

 学校は要領で規定している授業時間よりも多くの時間を組んでいますから、順調にすすめば〈応用編〉として子ども達と教師の興味関心を優先させてやる授業をすることもできます。教科の内容と関連させることはぜんぜん難しくありません。

 現役の頃は丹念に指導要領を読むことはなかったのですけど、たの研での〈合格スーパーバイズ〉では何度も何度も指導要領を読んできましたから、あの頃はもっと自由に授業を組むことができたんだと断言できます。

 

 教科書を終わらせるのが大変だという話をよくききます。けれどたとえば理科の教科書って半年でもわずか数ミリの厚さです、その単元の内容を読み進めるのに10分もかかりません。テストはマッキーノでたのしんでいけば平均90点は難しくありません。

 国語の〈やまなし〉の単元に関連して宮沢賢治の人生に視点を当てたり、社会の〈江戸時代の歴史〉なら仮説実験授業の授業書もあります。算数の単元で利用できるプランもいろいろあります。
〈たの研〉に来る先生たちには「自分がこういう教育をしたい」と感じて教育する人がほとんどですから、笑顔がいっぱいで生き生き元気な人たちがたくさんいます。
 
 不登校の子ども達が増えている現状で、その先生のクラスの子ども達が「先生の授業大好き、学校大好き」といってくれる様になっていったら校長先生や教頭先生がダメ出しするでしょうか? 

 わたしの元には「隣の先輩の先生から具体的なアドバイスがたくさんきて困っています」という相談が複数あります。
 たのしくわかって元気になっていく教育の障壁は管理職や教育委員会ではなく隣の先生である可能性も高いかもしれません。
 年齢が重なっていくと細かいことをいわれずに済むという利点があるのですけど、若いとそうもいかない。
 そういう場合にはそっと少しずつ〈たのしい教育〉を織り込んでいくことです。スペシャル授業ができる時間も週に1~2時間くらいはみつかります。単元を一時間くらい早く終わらせることは難しくありません。テストの後の時間が利用できたりということもあるでしょう、そういう時間を利用する。
 可能なら周りの先生たちをたのしい教育研究所の講座に誘ってみることもいい方法です。
 そうやっていくうちに物理的に年齢は高くなっていく、そうなれば年下の先生たちに「もっとこうやるとたのしくなるよ」とお勧めできる様にもなるでしょう。

 好奇心と元気が重なればやりたい授業はいろいろみつかるものです。学校の先生たちが「こういう授業をしたい」と感じられるものをみつけて、それを子ども達とたのしむことは、停滞した教育界を突破するキーになると思います。
 今回のタイトルは、板倉先生の話の後半をメインにしたものです。
 紹介します。

 引用はここまでにします

 たのしい教育研究所の取り組みがさらに浸透していくように、これからもいろいろ工夫とバージョンアップを重ねていきたいと思います、応援よろしくお願いいたします。

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たのしい楽しい教育プログラム-たのしく学力を高める具体的な方法-楽し教材・楽しい学習

資料の整理整頓は創造する場合にもとても大切
 たのしい教育メールマガジンも今年の最終号が近づいてきて、今年書いた記事の整理をはじめています、半年毎にはやるようにしているのですけど、一つずつの記事を開いて整理していくのは事務的な能力が低い私には大変な仕事です。
 そういうことをするより新しい記事を書いていたいと思うのですけど、メルマガの初期の頃、読者の方から「たとえば体育の教材をさがす時に、どこに出ていたのかわかると助かります」という要望があったことと、板倉先生が『月刊 たのしい授業』を創刊した時、その年の総索引がとても好評で、重要なんだと話していたこととが結びついて、メルマガにも年末にその年の記事一覧をつけることになりました。
 メルマガは電子版なので、検索の時にはキーワードを打てばすぐにどの号のどの章にある記事なのかわかります。
 もう一つ、すでに500号を超えていて、例えば〈映画の章〉で紹介した作品は1000作近くになります、書いた記事を整理しておかないと混乱の元です。
 新しい記事を書く時だけでなく、広く〈創造する〉という場合にも、これまでの記事の整理整頓はとても大切なことです。
 実施してきてよかったと思います。

2022年のたのしい教育プログラムの記事から

 まだ一部なのですけど、整理している私が「あ、こういうものも書いたんだよね」とか「これは今年書いたのか」といろいろな発見をしています。
 メルマガは四章構成なのですけど、その一つ〈たのしい教育プログラム〉の記事の一部を紹介しましょう。

490号 2022-02-02
🔵仮説実験授業「足は何本?」を
やってみませんか
 H先生の授業記録の紹介

491号 2022-02-09
🔵ペーパークラフト(図工・生活科)
 たのしいハサミ・ノリの使い方「ミニオンバッグ」

492号 2022-02-16
🔵ブックレビュー 朝の連続小説(連続読語り)で
 ミヒャエル・エンデ「モモ」がおすすめ

493号 2022-02-23
🔵人気のなぞなぞ・クイズ系
子どもにウケるたのしいクイズ 坪内忠太

494号 2022-03-02
🔵たのしく〈体力づくり〉

  三角トンネルくぐり

495号 2022-03-09
たのしいキャリア教育 読み物教材(国語・総合などで)
🔵沢木耕太郎「鉄塔を登る男」
 働くって何だろう?

498号 2022-03-30
たのしい家庭科・生活科・理科他
🔵野の花いけ花

499号 2022-04-06
🔵たのしい国語 お話めいろ

500号 2022-04-13
🔵たのしい算数 サム・ロイドさんのパズルから

501号 2022-04-20
🔵たのしい理科 植物の給水実験

502号 2022-04-27
🔵たのしいアウトドア入門 身体センサーの話

503号 2022-05-04
🔵たのしい社会 都道府県生産高ランキング

 こうやってまとめているといろいろな教科や活動の時に利用できるように、うまく分散されていると我ながら感心してしまいます。

 授業の章は特別な技能や経験は必要なく、準備0や、印刷すればOK、準備するものでも、学校や家庭にあるもの、100均で入手できるものを中心に書いているので、記事の場所を確認して読めば、明日には授業できるものがほとんどです。

 週に一度の〈たのしい教育プログラム〉からはじめて、こどもたちとの関係をよくし、講座や資料などでゆっくりたのしい時間を増やしていくという様にして、大人自身がこども達とたのしく充実した日々を過ごしている人たちが増えています。
 興味のある方は、ぜひお申込みください。
 スマホの方は記事一番下の〈サブコンテンツ〉をクリックすると、申込みのリンクが出てきます。
 また記事検索に「メールマガジン」と打つとメルマガに関わるいろいろな記事を読むこともできます。

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楽しい言語学-楽しい学力〈韓国語と日本語〉

 前回は〈たのしい英語〉の話だったので、今回は〈たのしい韓国語〉をテーマにとりあげましょう。〈たの研〉は「たのしく島言葉」の取組みをしています、楽しい教育の大きなテーマの一つが「言語」であるといってもよいでしょう。

 私いっきゅうの映画好きは中学生あたりから始まっていて、年々その熱は高まっていますから、いつの時でも〈今〉がピークです。最新の作品も観ますしDVDや映画配信の作品も観ているので、執筆しながらもBGMの様に映画が流れています。仕事の区切りにはしっかり画面に向かうので、1日どんなに少なくても1本は観ています。

〈たの研〉に韓国の作品が大好きな人がいて、最近私も韓国の作品を見はじめているのですけど、映画パラサイトがアカデミー作品賞をとったのは、その作品が特異だったのではなく、韓国の映画芸術の水準がかなり高くなってきたからだということに気づきました、残念ながら今の日本の映画界は韓国に遅れをとっていると思います。

 確かに日本にも名作はたくさんあります、黒澤明や小津安二郎といった世界に誇る監督もいたし世界に誇る作品もあるでしょう。その頃の韓国の映画芸術は日本にはるか遅れをとっていました。
 ところが今の状況で比べると、冷静にみて韓国が上だと思います。

「そんなことはないでしょう」と思う人はだまされたとおもってこの作品をご覧ください、大げさでないことがわかると思います。

・タクシー運転手 約束は海を越えて

サニー 永遠の仲間たち

・マルモイ ことばあつめ

・新 感染

・はちどり

 

 テレビシリーズにも名作がいろいろあります。
〈秘密の森〉
〈ウ・ヨンウ弁護士は天才肌〉

 

 さてそうやって韓国の作品をたくさん観ていると、韓国語の中に日本語と似ている単語がいろいろ出てくることが気になっています。

 例えば

〈約束:やくそく〉は韓国語でも〈ヤクソク〉と発音します。

〈鞄:かばん〉は韓国語で〈カバン〉

〈有料:ゆうりょう・無料:むりょう〉は韓国語で〈ユリョ、ムリョ〉と発音します。

〈簡単:かんたん〉は韓国語で〈カンダン〉

〈記憶:きおく〉は韓国語で〈キオク〉

〈気分:きぶん〉は韓国語でも〈キブン〉

他にも似ている言葉がたくさんあります。

https://koredeok-kankokugo.com/nihongotoniteiruhatsuonnokankokugo/

 このあいだYouTubeを見ていると、私と同じことが気になった人が言語学者にそのことを尋ねる「日本は中国大陸から漢字を輸入していて、韓国もそうなので、似たところはあるのでしょう」と淡々と語っていました、でもそうかな~?

 中国語〈約束〉は中国語では別な言葉で〈承诺〉で〈やくそく〉とはいいません。

〈鞄:かばん〉は〈訓読み〉つまり大和言葉読みです、中国ではそもそも鞄と言わず〈包:バオといいます。
      ※詳しい方でこの解釈に間違いがあれば教えてください

 私は学生時代、第二外国語で中国語をとったのですけど、その頃の不安定な知識ではこの問題を解決することはできず、根本のところから調べ直していくしかないのですけど、きっと韓国語と日本語は似ている言葉の中で〈中国ではこういう言い方はしない〉というものがたくさんみつかるはずです。

 確かに歴史的にみて大国中国の影響は大きいでしょう、けれど韓国映画の名作〈マルモイ ことばあつめ〉にも出てくるように、日本が韓国を統治して〈日本語化教育〉の影響も少なくないと思います、それを強引に押し進めた影響が今の韓国語に色濃く残っているのだと予想しています。

 みなさんはどう予想するでしょうか。

 そういう視点でこれからも自由研究していきたいと思います。きっと私より韓国語に詳しい方がたくさんいることでしょう。ご意見を寄せていただければ幸いです。

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たのしい英語〈中級編〉ミステリーの名著「ザリガニの鳴くところ」の英訳について-楽しい学習・楽しい教材

 メルマガの授業の章に読者の方からの要望で書いた〈こどもと楽しむたのしい英語学習〉の記事が好評です。今回は大人向けの〈英語〉という視点で書かせてください。

 さて読書の時間は減ったけれど読書にかける費用はあまり減っていないと書きました、一冊の本でも紙の本と電子出版のkindleと朗読のAudibleの三つで入手するからです。

 最近読んだミステリーの名作「ザリガニの鳴くところ」は主に原初kindle版で読みました。

 最近またkindle本を探していたら、何と〈ザリガニの鳴くところ〉の原書・英語版が200円で出ていました、驚いてすぐに購入。
 

 きっと特別セールなんでしょう、必要な方は早めに購入するとよいですよ。専用のアプリで読むのですけど、それは無料です。

 さてこの原初版を読んでいて気づいたことがあります。
 紹介する英文自体はそんなに難しくないので少しつきあってください。

 毎週発行している〈たのしい教育メールマガジン〉の映画の章で〈ザリガニの鳴くところ〉を観に行ったのだけど「小説にはない表現があって感動しました」と、紹介したフレーズがあります。

 映画のこの美しい映像とともに語られた言葉です。※web上の予告画像から

Water flows into the sky.
 水は空へながれていく

 映像をみると、まさに水の流れが空に流れていくようです。

 映像も言葉による表現も素晴らしいと思いました。

 私が読んだ小説には「海に流れる」という言葉はあっても「空へ流れる」という表現はなかったので映画のそのシーンは小説家の手を離れた監督や脚本家の演出なのだろうと思っていました。
 ところが最近購入した〈ザリガニの鳴くところ〉の原書版を読んで、また驚きました。

 まずこれが日本語訳された小説のはじまりの部分です、二行目に「水蒸気が空に立ち昇っていく」とありますね。

 下の原文をみてください。
   and water flows into the sky. とあります。
 英文だらけで見辛いかもしれません、二行目の右側から三行目に出てきます。

 

 映画で私が感動した表見・言葉は原文そのままでした。

 つまり日本語訳をした人が間違ってしまったんです。
「水の流れは海に向かうのであってが〈空に向かう〉なんてないでしょ、これはきっと水蒸気が空に向かうといういみなんだ」と理解したんですね。

 水の〈 Water 〉 は手で触ると濡れてしまう様な水で、水蒸気の様に漂っている状態には〈 Vapor 〉という別な単語があります。
 当然、翻訳者は私よりはるかに英語の力はあるわけですからそういうことは重々知っている、でもそれよりも〈水は空には流れない、海に流れる〉という常識、ある意味、日常科学的な常識が優ったので、そう和訳したのでしょう。
 私も含めてアメリカのダイナミックな〈湿地〉のイメージはほとんどの日本人にはないですから、さもありなんという気がしないでもありません。

 日本語の文章と英文とを比べて読んでいくと、どんどんたのしみが広がっていくに違いありません。
 睡眠時間が消えてしまって本をたのしむ時間が増えたら、どんなに嬉しいことでしょう。

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