教科書の表記が絶対正しいというわけではないという話( 。」)③-たのしい国語

 原稿用紙の使い方で作文嫌いを生まないように、という話はいろいろな方たちの心に響いたようです、いろいろ好意的なお便りをいただいています。とはいえ先生たちはあいかわらず、かぎカッコで閉じる時は句点を打ってから( 。」)と指導しないといけないでしょう、どうしたらよいのか? その話をして閉じることにします。

 今回のテーマは「こっちの表記が正しいくて、あっちの表記は正しくない」というために書いたものではありません、タイトルにあるように「教科書の表記が絶対正しいというわけではない」という話です。

 カッコで閉じる時に句点(  )を省く人が多いとはいえ、正岡子規のように句点+とじカッコ( 。」)する文人もいますし、一般の人もいるでしょう。

 学校で指導する時には「学校では原稿用紙の使い方として、これこれこういう指導をするけれど、そうでないものは間違いだというわけではありません。たとえば句点+ 」 について、句点なしの人たちもたくさんいます。新聞だって句点なしでカッコを閉じています。

 そういうことを並列して伝えるとよいのです。

 そもそも学校の表記が句点+とじカッコ( 。」)なのは何を根拠にしているかというと・・・

 1946年3月に〈文部省教科書局調査課国語調査室〉が作成した「区切り符号の使ひ方(案)」です。案のまま確定されない状態で、80年以上ずっとそれを踏襲しているわけです。

https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/sanko/pdf/kugiri.pdf

 時代とともに変わっていく言葉もあれば、変わっていく表記もあります。私は「」より〈〉符を多用します、読みやすいわかりやすいという声も聞きます。自分にしか適用されない符号だと困るのですけど、周りの人たちがわかりやすいものなら、使ってかまわないでしょう。

 いろいろな表記方がある、という流れで柔軟に対応できる子どもたちを増やしていって欲しいと思います。くれぐれも、原稿用紙の使い方を徹底して作文嫌いを量産することだけは避けて欲しいと願います。

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教科書の表記が絶対正しいというわけではないという話( 。」)①-たのしい国語

 前に〈かぎカッコと句点〉について書きました、会話部分をカッコでくくって、その閉じの部分「◯◯◯◯  。」が気になるという話です。句点〈 〉も文を閉じる記号で、閉じカッコ〈 〉も同じく閉じる記号です。無駄であるだけでなく美しさにかける。

 その記事の中で《 作家本人は 」 でシンプルに閉じているのに、それを教科書に載せると時 。」 に変えてしまっているのか》という宿題が残されていました。もしそうだとすると、作家本人はそう書いていないのに、教科書で日本中の子どもたちが目にするので、まるで本人がそのように書いたと考えてしまいます。

 これは私が親しんでいる高校の国語教科書にある夏目漱石の「心」の一節、中程に有名な言葉〈精神的に向上心のないものはばかだ〉という言葉が出ています。「 」で括られていて、句点+」ですね。

では夏目漱石の本は、そうなっているのでしょうか?

残念ながら本屋さんにいく時間的なゆとりもなくなっているのですけど、便利なことに電子書籍があります、kindleで調べてみましょう。その言葉は左側に位置しています。

 kindleだけで判断するのは早計でしょう、とはいえ、結果の一つはみつけたことになりますね。

 全集なども含めて、作家本人は私と同じようにシンプルにかぎカッコのみで閉じているのに、教科書に載る時には〈句点+ 」〉になっているのか、実は本人がそうしていたのか、はっきりするでしょう。

 推理小説のように謎を解く、こういうディテクティブ(捜査)もたのしくてやめられません ´ー`)
 こういう過程の一つひとつも、自分の頭で考えて確かめていくという〈騙されない人間になるためのステップ〉です、興味ある方は一緒にやってみませんか。

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たのしい国語①〈たの作3〉低学年・特別支援クラスの子どもたち、書くのが大嫌いという子どもたち向けの新しいプログラム

 メルマガで公表したところ、すぐに反響が大きかった〈たの研 授業書〉たの作3 の紹介をしましょう。今回は小学校低学年の「書きはじめ」の子どもたち、「書くことが嫌い・大嫌い」という子どもたち、特別支援の子どもたちを対象にしたプログラムです。

 ところでみなさんは書くことは好きでしょうか?

 少し時間をとって考えてみていただけませんか。
 時と場合によると考える人もいるかもしれませんけど、〈どちらかといえば〉で考えてください。また、友だちにLINEを送るという時の書く、ではなく学校の勉強に出てくるようなもの、ペーパーにまとめるような場合を想定してください。

ア.書くことがすきだ

イ.書くことはきらいだ

 好きだという方は、これまでの人生のどういう流れの中で好きになったのか、ぜひ教えていただきたいです、それは〈たの研/たのしい教育研究所〉のプログラムの大きな示唆になると思います。

 さて、私がこれまで出会ったたくさんの先生たちの言葉から類推すると〈書くことが好きだ〉という人より〈きらいだ〉という人が圧倒的に多いと考えています。

 教師はいろいろなものを書くことになります。研究授業の時には指導案というものをまとめます。指導要録もあります。個別の支援計画というものもあります。授業の計画はメモ書き程度とはいえ、毎週毎週かかされるとつらいものもあります。だって年間の計画はすでに提示されているのですから。

 私は学校にいる頃からレポートや週報などをたくさん書いて来たので、先生たちから「いっきゅう先生、これ、どうやって書いたらいいかなぁ」といった相談がたくさんきました。「書くことって憂鬱なのよ」という先生がいかに多かったことか。

 私いっきゅうは、このサイトを書いているだけでなく、いろいろな執筆を同時並行ですすめているのですけど、書くことが大好きです。

 書くことのたのしさはとてもたくさんあります、その一つの大きなものが

A 自分の中で新しいものごとが組み立てられていくたのしさ

です。

B 周りの人たちが喜んでくれる姿をみることができる

というのもとても大きな一つです。

 すでに今回で3冊目となる《たの作-たのしい作文指導プログラム》は、大きくその2点を組み込んで作成されています。

 たの作3の一枚を紹介しましょう。※絵は〈たの研〉が利用しているA.I.で作成したものです、絵を含めて全て〈たの研〉に著作権が在します

 完成品となるまでには、いろいろなこどもたち先生たちの評価を経ていく必要がありますから、まだ時間がかかります、お待ちください。

 書くことが好きだ、嫌いだという話はたのしい教育にとって、とても大切なことを含んでいます、次回は無理でも続けて書いてみたいと思います、おたのしみに。

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学校秀才の怖さ〈鶴見俊輔の言葉〉「戦争が残したもの」/たのしいブックレビュー

 気に入りの女性作家〈米原万里:よねはら まり〉さんの書評集『打ちのめされるようなすごい本』を前に紹介したのですけど、そこで取り上げられた数々の本は私の心を動かすものがたくさんありました。今回はその一つ『戦争が遺したもの/新曜社』、戦後思想界の巨人〈鶴見俊輔/つるみしゅんすけ〉に上野千鶴子小熊英二が質問する形で構成され本です。

  米原万里さんが引用した部分が心動かします。

鶴見俊輔

試験で優秀な成績を修め、欧米の知識を詰め込んだ秀才が権力の座につける仕組みを作ってしまった。

秀才は模範答案を書こうとする。

自由主義が流行れは自由主義の、軍国主義が流行れば軍国主義の模範答案を書くような人間が指導者になった。

そういう知識人がどんなにくだらないかということが、私が戦争で学んだ大きなことであった。

 これまで優等生の怖さを綴ってきたことがあるのですけど、自身が戦争を体験してきた鶴見俊輔の言葉は強く重い。

 前に書いたように、自らの頭で考えて真実に近づいていく力のある人たちが増えていかなくては、弱い者たちを含めてごく普通の人たちの幸せと豊かさの向きに進むのは難しいでしょう。

 著者たちのことをよく知らない方のために、参照資料をのせておわります。出典は紀伊国屋書店のサイトです。

著者等紹介

鶴見俊輔[ツルミシュンスケ]
1922年、東京生まれ。哲学者。15歳で渡米、ハーヴァード大学でプラグマティズムを学ぶ。アナキスト容疑で逮捕されたが、留置場で論文を書き上げ、卒業。交換船で帰国し、海軍ジャカルタ在勤武官府に軍属として勤務。戦後、丸山真男などと『思想の科学』を創刊。アメリカ哲学の紹介や大衆文化研究などのサークル活動を行なう。京都大学、東京工業大学、同志社大学で教鞭をとる。60年、安保改定に反対し、市民グループ「声なき声の会」に参加。65年、べ平連に参加し、アメリカの脱走兵を支援する運動に加わる。70年、警官隊導入に反対して同志社大学教授を辞任。主な著書に『戦時期日本の精神史』(岩波書店、大仏次郎賞)、『夢野久作』(リブロポート、日本推理作家協会賞)など。1995年度朝日賞受賞

上野千鶴子[ウエノチズコ]
1948年、富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了。平安女学院短期大学助教授、京都精華大学助教授などを経て、現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授。専門は女性学、ジェンダー研究で、この分野の指導的理論家の一人。主な著書に『近代家族の成立と終焉』(岩波書店、サントリー学芸賞)など

小熊英二[オグマエイジ]
1962年、東京生まれ。1987年東京大学農学部卒業。出版社勤務を経て、98年東京大学教養学部総合文化研究科国際社会科学専攻大学院博士課程修了。現在、慶応義塾大学総合政策学部助教授。主な著書に『単一民族神話の起源』(新曜社、サントリー学芸賞)、『“民主”と“愛国”』(新曜社、日本社会学会奨励賞、毎日出版文化賞、大仏次郎論壇賞)など
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784788508873

 

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