楽しい医学 麻薬というのは麻酔薬のこと/アガサ・クリスティー「そして誰もいなくなった」

 現場で教師をしていた頃作った〈薬と毒〉という「たのしい教育プログラム」があります。担任の先生養護教諭の先生に人気のプログラムで、中にこういう一説があります。

 犯罪のニュースで〈まやく〉と聞くと〈悪魔の様な薬⇨魔薬〉とイメージしてしまう人もいるのですけど、正しくは「麻薬」です。麻薬は医学用語で「麻酔作用のある薬」を意味することばです。

 麻酔薬の乱用が問題となり、その乱用を取り締まるうちに、麻酔とは逆の作用をもつ〈向精神薬〉その他もふくめて麻薬と呼ぶ様になっていきました、本来の医学・科学的な意味から外れていったことになります。

 こういう「言葉の問題・言葉の感覚」を研ぎ澄ますこと、言葉を丁寧に使うこと、本来の意味で整理していくことは法律の世界でも大切なことだと思います。

 そのプログラムを作成したあと読んだ小説の一説に驚いたことがありました。

 ミステリーの女王アガサ・クリスティーの小説「そして誰もいなくなった」です。

 この中の重要な登場人物の一人、老婦人がこう語ります。

近頃の若もの達はしまりがなくてみていられない。
眠れないといっては睡眠薬、歯を抜くときには麻酔注射・・・

「え、この老婦人、歯を抜く時に麻酔を使わないでぬくの?」
すごすぎますね。

 この小説が世に出た1939年、今から80年くらい前には登場人物に語らせたそのことと同じ感覚をもっている人、つまり〈虫歯を抜く時に麻酔を使わないままで抜いてもらう人〉は他にもいたわけでしょう。

 実はこの小説、日本語訳がよくなくて、私は途中で投げ出してしまいました。
 今度、我慢して最後まで読んでみようかと考え始めています。

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楽しい読書〈速読〉について考える「好きな音楽を三倍速で聴いて、その音楽を味わったことになるのか?」本を守ろうとする猫の話 夏川草介 小学館

 何年か前、ふらりと入った本屋さんで手にした本がありました、「本を守ろうとする猫の話」夏川草介 小学館(2017)です。猫も好きで本も好きなのでは自然に手にしたのでしょう、確か飛行機の中で読み終えたと思います。

 中身は〈読書道徳〉物語というようなものです。不思議なネーミングですけど、それがあっていると思うな。邪(よこしま)な読書をたしなめ、読書の良さを伝える物語です。

 読みやすい文章で、著者はテレビで大ヒットしたらしい「神様のカルテ」も書いています、私は読んでいませんけど。

 最近ある人と話したことがあるのですけど、私が活字中毒になりはじめた頃、たくさんの本を読みたくて自然に読むスピードが早くなっていきました。
 けれどしだいにその速さがイヤになって、強引な方法で速度を落としたことがありました。実際に時計で測ってたいたので、今の読むスピードもほぼはっきりわかります、〈一時間で100ページ〉くらいです。それは結果的にとても便利で、手にした本を今から読むと、だいたい何時くらいに読み終えるか予想できます。

 どうやって速度を落としたかというと、本を読む時、蛍光ペンを持って全ての文章にラインしながら読むという面倒な方法です。

 その時は早く読むことが感覚的に〈イヤ〉だったのですけど、もう少し詳しくいうと「風を感じる気持ちよい散歩のように、本をじっくり味わいながら読めなくなった」と感じるようになっていったからです。

 実はその時の私の感覚を、この本「本を守ろうとする猫の話」の主人公、高校生の〈夏木林太郎〉がとてもみごとに表現してくれています。

 第二章〈切り刻むもの〉の中にベートーベンの第九を聴きながら速読でたくさんの本を読んでいる人物が登場します。
 林太郎はその人物のBGM機器に手を伸ばして〈第九〉を三倍速にしてしまいます。それを聴いた速読にかける人物は反射的に「何をする、第九が台無しじゃないか」と叫びます。

ベートーベンの〈第九〉を三倍速にして聴いて、それで第九を聴いたことになるのですか?

 みごとです。

 古本もたくさん出ている様です、この冬、読みたくなった方は手に取ってみてください。

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読者の方からのお便りから-楽しい教育プラン<宇宙兄弟>の言葉から

 県外に住んでいる読者の方から心のこもった熱いたよりをいただきました。《よしたけしんすけ》さんの絵本について検索している時にこのサイトに出逢い、以来毎日読んでくれているといいうことです。
 「わかりやすく学べるので毎日読むのがたのしみです。これからもよろしくおねがいします」という言葉に加えて、自分の住んでいるところで何気なく使っていることばの中にも差別的なものがあることに気づいたと具体的に書いてくれましたが、それはあえて省略させていただきます。

 以前にもこの〈たのしい教育研究所〉の公式サイトはブログ全体でトップクラスのアクセス数であることを書いたのですけど、先日はアクセス数が1日<3000件>に迫る勢いを見せていました。
 以前契約していたサーバーの時に具合が出てアクセスできない状態が長く続いてしまい、それまでの読者の方たちの多くが離れてしまいました、その以前には1日のアクセスが3000件を超えることもあったのですけど、サーバーを引越して新しく始めてから初の数字だと思います。

 これからも普通の人たちの感覚でたのしく綴っていきたいと思います、応援よろしくお願いします。

 さて今回は〈たの研〉初期の頃にいろいろな学校で実施した「キャリア教育」の教材を少し紹介させていただきます。

 こども達にもヒットしていたマンガで映画化された「宇宙兄弟」を使って準備運動的にとりあげた教材です。

 初めてあった子ども達も笑顔になって、その後の授業もたのしくすすみました。

 スクリーンでこの画面を出して、四角の中に入る言葉を自由に予想してもらうのです。

 一番はじめにこの授業をしたのは粟国島にある〈粟国中学校〉のこどもたちでした。いくつもの学校で実施したので、記憶違いもあるかもしれませんけど
・本気の料理には価値がある
・本気の勉強には価値がある
・本気の〈恋ばな-恋話〉には価値がある
 etc.

 自由にいろいろな言葉が飛び出てきて、みんな笑顔になりながら授業がすすんでいきました。

 一息ついたらマンガのシーンを紹介します。

「本気の失敗には価値がある」!

 

四、五問出すのですけど、二問目までにしましょう。
これはあえて正解が出やすいように出した問題です。

 ちょっとだけ無理なことに挑戦してこーぜ!

 今は古本で安く手に入りますから、数冊揃えて教室に置いておくのもよいと思います。
 キャリア教育ということでなくても、こども達はそこからいろいろなことをたのしく学んでいってくれるからです。
 ちなみにすでに40巻以上出ているようですけど、私が読んだのは十一巻までで、その後のストーリーほ把握していません。その後の巻を置く場合には自分でまず読んでみてからにしてくださいね。
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子ども達を科学嫌いにしない〈仮説実験授業の教材観〉板倉聖宣の発想から-楽しい学習・楽しい教材

 メルマガに〈たの研10年目〉について書いたところ、さっそく反響が届いています、うれしいことです。

 そこに書いた「教材を含めて〈たの研〉にあるたくさんの財産を維持することに全力を尽くすのではなく、また初期設定に戻して、いろいろチャレンジングなことをはじめていきたいと考えています。

 新しいタイプのたのしい教育プログラムに手を伸ばしていく予定です。そういう中で、もう一度初心にかえって学び直すことも大切です。

 私が教材を作る時、読み込んでいた資料の一つを紹介しましょう。たのしく学力を高めていきたい、本物の学力を身につけてもらいたいという方たち、楽しい教材・楽しい学習を模索している方たちにも役立つものだと思います。

板倉聖宣

 仮説実験授業の授業書が〈いっさいの押し付けを排除する〉ということをうたっていたのは「言葉の押し付け」をしないように細心の配慮をしてきたからです。

 じつは仮説実験授業の授業書だって、その〈案〉の段階では言葉の使い方が適切でないことが少なくありません。

 仮説実験授業研究会の授業書改訂の席に参加すると、たいていの人は「授業書の一語一句について適当かどうか」を延々と論議しているのをみて驚いてしまいます。

 仮説実験授業の授業書は、そういう言葉遣いの一つひとつを詳しく吟味して、言葉の使い方に繊細な配慮がしてあります。そうやってどんな子どもたちもおしつけや違和感を感じずに、気持ちよく授業を受けることができるようになっているといってよいと思うのです。

 そういう細かい心遣いをしてはじめて「科学というものは何と心温かくできているのだろう」と感じさせてはじめて、子ども達を科学嫌いにしなくてすむようになるのです。

 
 仮説実験授業研究会ニュース2017年6月の内容を再校正
                    文責きゆな

〈たの研〉のメンバーと一緒に、このことを丁寧に確認しつつ進んでいきたいと思います。

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