教育の世界に〈オームの法則〉の様な法則はあるのか?

 私が教師をしている時〈教育の法則化運動〉が流行っていました。私はその後一人の授業者としてフリーで活動し予想以上の成果を収めることができました。学校という枠に守られた授業者ではなく、一人のプロの授業実践家としてしてみて、〈教育の法則化運動〉は法則ではなく〈一つの授業アイディア公開運動〉であったと思います。自分ではうまくいったという授業アイディアがあって、それを公開していろいろな人たちに試してもらう運動だったと。

 法則というのは、一定の条件下であれば必ず成り立つ普遍的な規則や原則です。それは誰がやっても成り立つものでなければいけません。振り子の等時性(同じふりこであれば、振れ幅が短くても長くても行って戻るまでの時間は同じ)の法則は、男の人がやった時だけ成り立つということはありません。男女の差も年齢の差もありません、もちろん午前午後といった時間の差もありません。
 アメリカでもコロンビアでも日本でも成り立ちます。

 電気の授業で学ぶ〈オームの法則〉があります。
 電流と電圧と抵抗の三つの関係は必ず〈 電圧V=電流A X 抵抗Ω 〉という関係に従う、つまりどうもがいても、その関係から逃れることはできにないという、恐ろしいまでに確立された法則です。その法則も、誰がいつやっても成り立ちます。

 では、教育の世界にはたとえば「かけ算九九の◯段を77回となえたら必ず覚えてしまう」とか「体育の時にはこうすると、チーム同士の争いが全く起こらない」という様な法則があるのでしょうか?

 かなり考えても、そういう法則にゆきあたらない・・・

 たとえば「〈あなたは◯◯に比べて劣っている〉という評価を続けていると、そう言われ続けた人は、それがいやになっていく」ということは、かなり高い確率でいえそうです、が、法則といえるほど完全になりたつのかわかりません。

 つまり教育の世界には〈法則〉と呼べるものはほとんどない。

 ただし、たのしい教育プランの様に〈この授業を受けた子どもたちは、高い確率で「たのしい」「学んでよかった」と評価してくれる〉ということはあります。

 それでも、子どもたちと敵対している教師が実施したらうまくきません。また、真剣にやらずいいかげんに授業にかけると失敗することも多くなります。

 なので法則だといえるものにはなっていないでしょう。

 それなのに「この方法は正しいのだ」と考えている教師がこんなに多いのはどうしてでしょう。

 私が赴任した学校の校長先生は〈ほめて育てれば子ども必ず伸びる〉と断言していました。

 けれど残念ながらその小学校では子どもたちが全体として伸びている様子は見られませんでした。また校長先生のことをまじめに聞いている先生のクラスはうまくいっているかというと、そういう様子もみられませんでした。

 教育の世界で今必要とされているのは、それが法則であるかの様に〈〇〇が正しい〉と考えるのではなく、それを一つの選択肢として捉えるものの見方・考え方だと思います。

 ほんとうにそう言えるのかをたくさんの教師が実験・実践して確かめる、そのことこそが大切だと思います。

 たのしい教育研究所は、そうやって一つ一つ丁寧にたしかめていったものを、講座などで体験してもらっています。

 いよいよ秋の講座も約10日前に迫りました、今からその日がたのしみです。

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楽しく島言葉(しまくとぅば)の楽しい教材検討会・シンプル島言葉 動画コンテスト試行版のアイディアミーティング

 今週、たのしい教育研究所の知恵袋Tさんを招いて〈たのしく島言葉/しまくとぅば〉検討会を開催しました。動画コンテストの構想のまとめも近づいてきました、それにもTさんがいろいろなアイディアを加えてくれました。

 これは、〈たの研〉の取組に心動かされたTさんが、たのしい島言葉教材の参考になればと作成してくれた大量の資料です、まずこれにスタッフ一同おどろき、感激しました。
〈早口島言葉〉など、すぐにでも教材化できそうなアイディアがいくつも詰まっていてとても貴重な資料になります。

〈たの研〉の担当には、こうやってジェスチャーを交えてティーチしてくれました。


 〈たの研〉の仕事は満載なので、まずは動画コンテストの 企画案をまとめなければいけないのですけど、時間をつくって、Tさんのまとめてくれた貴重な資料をデータベース化したいと考えています。

 琉球の人々が残してきた心はその言葉に強く残っています、それは他の県の方たちにも興味深いものになると思います。
 ご期待ください。

 

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〈願いは叶う〉という教育について/願いや祈りは〈目標〉、大切なスタート-楽しい教育の発想法

〈思いは伝わる・願いは伝わる〉という教えがあって、〈世界の平和を願います〉とか〈家族の健康を願っています〉という言葉をよく耳にします。〈神仏に祈る〉というところから来たのかもしれません。

 私は教師をしていた頃から子どもたちに「祈るとか願うというのは、それは自分の目標であって、スタートラインにたったということ。それだけでは叶わないんだよ」と伝えてきました。

 ところが逆転して祈ること願うことがゴールになってしまっていることがたくさんあります。

 祈ったり願ったりするだけで解決することはなのは実験的に明らかです、それだけでは落ちたネコの小さなな毛一本動かすこともできません。

 たとえば「息子が学校に通えるようになりますように」と願う、祈る。
 その行為や文章を相手が見る、読むことで、学校にいくようになることはあるでしょう。けれどそれは祈りそのものの効果ではありません。
 試しに、その祈りや願いを書いた紙を誰にも見られないところに埋めてみてください。あなたがそういう祈り・願いを持っているとは相手は知らない。それで学校にいく様になったとしたら、それはたまたまそういうタイミングが来たということです。

 息子が学校にいく様な具体的な動きや変化を生じさせることで、変わる。お母さんが苦しんでいる姿を見せる、腕のよいカウンセラーに相談して行動を変えることで、状況が好転することはある。
 そういう具体的な行動が変化をもたらすのであって、そう願う・祈るというのは、出発点にすぎない、そういうことです。

 ただし、その出発点がなくては始まらないのですから、それはすばらしい出発点だということです。

 自分の目標の大切ななスタートラインだということです。

「合格しますように!」と滝に打たれながら何億回願っても、解けなかった二次関数の問題や読めなかった英語の新聞が読める様になるわけではない、その願いや祈り、つまり目標を〈行動〉に変えることが大切です。

 ・◯◯大学に行けますように

 ・将来、幸せになりますように

 ・健康的な人生を歩めますように

 ・学校の先生になれますように  etc.

 その大切な願い・目標を行動に変える、それをしっかり伝えていく必要があると思います。

 以前、大国が隣国に戦争を仕掛けた時から世界の人々が嘆き悲しみ怒りを感じ続けています。結果的に叶わなかったのですけど、私もけが人の救助ボランティアに出かけようと本気で考えました。

 そういう中、日本の学校では、願いを込めた千羽鶴を作って送ったというニュースが流れました。

 驚きました。

〈平和を願う〉というのは出発点です、その願いを達成するために何ができるか。たとえば、戦争を仕掛けた国の代表に一行ずつでもよいから「言いたいことはたくさんあるはずです、まず戦闘をやめて話し合いをしてください」というような手紙をかく。国の代表に書くのが無理なら国連の代表にでもいい。あるいは日本の代表に「早く救助行動してあげてほしい」と書く。
 けがをした人が少しでも元気になる様なメッセージを書く、そういうことなど、子どもでもできることを真剣に探して行動に移す、そういうことが大切ではないかと思うのです。

 けれど先生たちの中には〈祈ることがゴール〉だと勘違いしている人たちがたくさんいる。本人が勘違いしているだけならよいかもしれない、でもそれを子どもたちにも受け継いでしまう・・・
 千羽鶴に自分の祈りを込めて、これからの平和行動のはじまりになるとよいのだけれど、その千羽鶴で平和行動を担った気持ちになってホッとしてしまうことはないだろうか。

 また中東で悲しい戦争が起こりました。

 もしかして戦闘地帯で傷ついた人たちに千羽鶴を送ろうと頑張っている先生たちがいたら、それをやめてとはいわないけれど、加えて別なことも考えてみてはどうかと思います。
 子どもだから祈るくらいしかできない、なんていうことはありません。
 心和む日本の歌を吹き込んでBGMにして流してもらう、痛みを少しでも和らげてもらえるような応援メッセージを送る、ジョン・レノンのイマジンを全員で合唱して、それを両国の代表に送る。

 そういう行動をきっかけにして、自分たちが〈戦争や暴力行為〉を解決行動に選ばないで、知恵を出して解決していく力のある大人になっていくことが決定的に大切です。

 もちろん大人たちは、目を背けず、その悲惨な戦闘が少しでも早く止むような行動を考える。
 私は「戦争で解決するという野蛮な方法ではなく、平和を構築できる様な力をもつ人たち」を一人でも多く育てたいと考えています。
 いろいろなことを考える秋の日々です。
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楽しい国語/万葉集『あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る』額田王の歌について考える

 私にとっては、ごく普通の結論なのですけど、先日ラジオの教育番組を聞いていたら、私が学校で教えられた古典の授業そのままだったので、このサイトに書かせていただきます。

 みなさんは額田王(ぬかたの おおきみ)という人物をご存知でしょうか、もちろん、教科書レベルの知識で結構です。

 この人が作った歌が万葉集に何作も載っています、有名なのが

あかねさす紫野(むらさきの)行き標野 (しめの) 行き野守 (のもり) は見ずや君が袖(そで)振る

 万葉・一・二〇・額田王(ぬかたのおおきみ)

でしょう。

 昔に遡るほど、戦略的な結婚なども多く、ぐちゃぐちゃな婚姻関係が目につきます。ここでも権力者が誰それで、という様な解説がほとんどなのですけど、そういうところはあえてとばして歌の意味を紹介しましょう。

 権力者に寵愛されている額田王に、かつて婚姻関係にあった男性が袖を振っています。それを目にした額田王は「家来たちに見られたらどうするのよ」とうろたえている、というのがこの歌なのだと、古典の授業を記憶している皆さんは、教わったと思います。

 最近私が聞いたラジオでも同じ様な解説をしていました、〈袖を振る〉というのは恋心を伝える風習であったという解説もしていました、本当かなぁ、それはそれとして、歌の解説・解釈、おかしくないですか?

⬇︎

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 万葉集について少し説明させてくださいね。

 万葉集には複数の天皇や皇族によって詠まれた和歌も含まれています。貴族社会の文化的な活動や政治的なコミュニケーションの手段としても重要視されていて、天皇を含む当時の貴族が教養の一つとして親しんでいたのは間違いないでしょう。

 とすると、さっきの歌はおかしくないですか?

 ・・・

 なんでたくさんの貴族が読む様なものに乗るほどの和歌ですよね、「家来たちが見たらどうするのよ」という様なレベルではありません。

 知られたらどうしよう、とうろたえる様なシチュエーションの歌ではなく、これは遊びとして、あるいはフィクションとして作ったものだしか思えません。

 そういう和歌は、この額田王だけでなく、たくさんの人たちが残したことでしょう。

 研究者や学者たちの解釈が教科書に反映されていきます、そういう中でアマチュアの目、つまりごく普通に人間の感覚を大切にしてみていくことで、新しい世界も開けていくと思います。

 たのしい教育は、ごく普通の人たちが腑におちる様に、感動できるようにすすめていく教育です。
 私いっきゅうは〈枕草子〉と〈徒然草〉が好きで、時々触れています。
 沖縄の〈島言葉〉をたのしくとりあげている様に、そういう古典文学の中に残された、心動かされる感覚・感動を伝えるプログラムも作ってみたいと考えています。

 

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