たのしい教育の発想法-日垣隆の方法から〈四分割マッピング〉

 メルマガで日垣隆さんの『折れそうな心の鍛え方/幻冬社 ※廃版』を紹介しました。日垣さん自身がウツ病と診断されるだろう状況に陥り、医者や薬に頼らずどのように脱していった方法を具体的にまとめた著書です。著作権の関係で、本文ではなく目次を中心に取り上げました。

 PEALカウンセラーからみて乱暴な方法だと思える内容もありつつ、共感できる部分もあります。

 読者の方から「図書館になかったので古本を探したら見つかったので注文しました」という知らせも入りました。

 別な方から

「迷ったら縦軸・横軸の四分割で考えるとうまくいく」というのはどういうことですか? 

という質問もありました。

 ポジショニングマップとかマトリックス思考法とか、いろいろな呼び方がついている、縦横2つの軸にそれぞれの尺度を設定して分類する方法です。

 これはどういうモバイル製品を開発するかについての検討会で、市場大手の製品を〈デザイン性(縦軸)と重量(横軸)〉で四分割したポジショニングマップです。

 

 こういう客観的な評価を心理的な面で論理的に評価しようというのが、日垣さんのさっきの話です。ただしそれは日垣さんが気づいたというわけではありません。

 日垣さんのエピソードをかいつまむとこうです。

 自分は飛行機に乗るたびに「落ちませんように」と祈ってしまう癖があったが、あるとき思い立ってマッピングをしてみた。
 縦軸は「祈る⇔祈らない」、横軸は「落ちる⇔落ちない」
すると、ゾーン1(上右)は「祈って落ちない」
ゾーン2(上左)は「祈らなくて落ちない」
ゾーン3(下右)は「祈って落ちる」
ゾーン4(下左)は「祈らなくて落ちる」となる。
パターンはこの四つしかない。
 見ると、祈ることと落ちることはそれぞれ独立していること、祈ろうが祈るまいが落ちる確率は同じだということに気がつき、笑ってしまった。
 以来、私は飛行機に乗っても祈らなくなった。

 日垣さんの提案は、深い悩みや倦怠感にとらわれているとき、衝撃を受けたときは「ごく当たり前のこと」ができなくなり事態を悪化させることもおこるから、このマッピング方法を覚えておくと、イザというとき強い味方になる、というものです。

 ある目標を縦軸、今の仕事を辞める辞めないを横軸に描いて整理してみる。
 こどもの賢さ(学力)を縦軸、苦しい・たのしいを横軸に描いて整理する。

 それを描くうちに頭の中が客観的に整理される、そういうことは期待できるでしょう。

 子どもたちにも、伝えることができそうです。

 

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たのしい理科「北極は何極(N,S)でしょうか?」

 大学入試とかに問題を出すと面白いと思うんだけど、「北極は何極でしょうか?」という問題を出すと、多くの人たちが間違ってしまいます。
 ひっかけ問題だから、ではありません。
 とても真っ当な科学上の問題です。

科学的に整理してみましょう。

1)理科の実験で確認したことでしょう、N極とS極は引きつけ合います、N極同士、S極同士は反発します。地球上のごく普通の場所であれば、誰がいつ、どこでやっても同じ結果になります。

2)地球上で方位磁石のN極が指し示す方向が北極です。

1+2から「北極自体はS極」だということがわかります。

このことは、科学上間違いのない事実です。

ではどうしてたくさんの人たちが「北極はN極だ」と勘違いしてしまうのでしょう?

 多くの人が間違ってしまうのは、学校で習う理科の学習も大きく影響していると思います。

先生)北極は?

子ども達)N極!

先生)南極は?

子ども達)S極!

そうやって覚えた人たちも多いのではないでしょうか。

かくいう私も仮説実験授業の『じしゃく』という授業をするまで、そのことを強く意識していませんでした。

指導要領の理科にはこうあります。

第3学年の目標及び内容
磁石には形や大きさが違っていてもいつも南北の向きに止まるという性質があることを捉えるようにする。その際,北の方向を指している端を「N極」,南の方向を指している端を「S極」と名付けていることに触れるようにする。

文科省学習指導要領

 ここで終わらず、地球というダイナミックな空間で意味付けて、解説編に

フィールドに置かれた方位磁石は北極に向けてN極を示すが、それは北極自体がS極だからである。授業では仮説実験授業の授業書『じしゃく』をとりあげることをすすめる。

というような説明を加えたら「お~、地球全体に磁石の力がゆきわたっているのか」と感動してくれる子どもたちもたくさんでるのじゃないだろうか。

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おすすめブックレビュー『存在のすべてを』/あえて「人情ミステリー」と名付けたい

 本好きのメルマガ読者の方からすすめられて読んでみたら、すぐにのめり込んでしまいました、おすすめの一冊『存在のすべてを/朝日新聞出版』を紹介します。
 あえて〈人情ミステリー〉名付けたのだけど、ラストまで読んだら同意していただけると思います。

「本屋大賞」とあるけれど、私はその権威を感じていません。『月の満ち欠け』や『コンビニ人間』などで懲りていて、最近も「成瀬は天下を取りにいく」も途中でやめたし。やはり最も頼りになるは、息の通じたビブリオ・フィル(biblio phile/本を愛する者)からのおすすめです。

 Google Booksの紹介を引用しましょう。

平成3年に発生した誘拐事件から30年。当時警察担当だった新聞記者の門田は、旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「今」を知る。

再取材を重ねた結果、ある写実画家の存在が浮かび上がる。

質感なき時代に「実」を見つめる者たち。

圧巻の結末に心打たれる、『罪の声』に並び立つ新たなる代表作。 Google Books

 まとまったボリュームで試し読みできますよ⇨ 試し読み『存在のすべてを』

 骨太のミステリーだという感じがすると思います。それを〈人情ミステリー〉と書いてしまったら、〈長屋人情もの〉のような話に思えてしまうかもしれません。でも私の読後感はまさにそれでした。

 表紙の帯をとると、絵画がデザインされています。重要な登場人物たちが生きる世界が、美術界です。かつての名司会者 久米宏さんが推薦していることを知らずにいる人たちも多いことでしょう。

 読んだ人のほとんどが「デパートで絵画の個展を開いた時、売上の4割がデパート、4割が美術商、残りの2割が画家、10万円で売れた絵も、画家の手に渡るのは2万円」という話に驚くでしょう。しかも親分子分的な縛りが恐ろしく強く、世に出るためにはかなりお金がかかってしまう。小説家が下調べなくそういう話を挿入することはないだろうから、きっとそういう世界なんだ・・・

 とはいっても小説家も印税は10%だから、クリエイターの方達がそれだけで食べていくというのはとても厳しいということがわかります。

 のめり込めるミステリー小説を探している方は、この作品を手にしてはどうでしょう、ビブリオふィルの私がおすすめします。

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子どもに支持される授業をやれば大丈夫/板倉聖宣のたのしい教育の発想法@敬愛する加川勝人さんのレポートから

 定期的に〈たのしい教育メールマガジン〉の記事の整理整頓をしていて、今ちょうどその日々です。過去の記事を読むと、書いた本人なのにのめり込んでしまいます。〈たの研〉の日々、授業の章、映画の章、発想法の章の4つをそれぞれ一冊ずつにまとめて本にしたいものだ、店頭に並んでいたら私が真っ先に買うことでしょう。

 本当はこの公式サイトも、どういうジャンルが多いとか少ないとか人気だとかいうことを整理整頓したいのだけど、何しろ毎日、その日の最後あたりに綴るので、「これは既に書いたのか」とか「ジャンル的に偏りがあるからこうしよう」というようなゆとりがありません。

 といっても以前「以前同じような記事がありました」という話が一件あったけれど、確認すると、それと関連した別な内容を伴っていたので落着。誤字脱字など、申し訳なく思いつつ、ゆっくり減っていくだろうと楽観しています。末長くお付き合いください。

 今回は〈たのしい教育メールマガジン〉第100号(2014年5月)で紹介した「子どもに支持される授業をやれば大丈夫」という板倉聖宣先生(仮説実験授業研究会初代代表/元文科省教育研究所室長/元日本科学学会会長/たのしい教育研究所 初期から支援者)の話を紹介しましょう。

いっきゅう

 仮説実験授業研究会のメンバーの中で「この人に会いたかった」という願いが叶わなかったお一人が北海道の加川勝人さんです。加川さんが書く板倉先生の話が秀逸で、会員レポートなどで欠かさず読んでいました。好きな話がいくつもあって、その一つが「子どもたちが支持してくれる授業をすれば大丈夫」という話です。

 出典は〈1981年仮説実験授業研究会洞爺湖大会〉の記念ガリ本『教育・科学・研究のイロハ』です。その頃のレポートの多くは手書きで味わい深いものがあります。今はほとんど目にしないことでしょう、貴重なので加川さんの手書きの文章をほんの少しご覧ください。

 私いっきゅうは約30年教師を続け、満を持して〈授業一本で暮らす〉という道に入りました。教師をしている時テーマにしていたのが「子どもたちがたのしんでくれて自分もたのしい授業」です。
〈子どもたちのためにやってあげている〉という高みからの感覚はありません。「これをしなくては」というのは少しあったとはいえ、ほとんどがたのしさをテーマにした授業です。そのおかげで、たのしい思い出に満ちた教師生活を過ごすことができました。結果的に、この板倉先生の言葉をたどっていたからでしょう。
 これは加川さんがメモしていたという板倉先生の言葉です。

 板倉
 皆さん、大丈夫なんです。
 子どもに支持される授業をやれば大丈夫なんです。
 文部省でさえ認めてくれます。
 これまでの日本の教育の伝統がそうです。
 今まで、日本の教育を変えて来た力というのは、そういう人達の実績なんです。
 そうやって文部省の指導する教育も進歩したんです。

※板倉先生の話のエッセンスを大切にして、いっきゅうが校正

 私は現場でたくさん出会ったのですけど、子どもたちが支持してくれる授業というのをたとえば「ディズニーアニメをみせてあげる授業だ」と勘違いしている人たちがいます。普通の授業は苦しい、その息抜きにアニメを借りてきてみせてあげる、というのです。

 それは授業ではありません。

 面積の授業がたのしい、ワクワクする。
 まど・みちおさんの詩に感動する。
 青森県の魅力を味わう etc.
 それが授業です。

 そういう授業ができる先生たちをゆっくり増やす、それが〈たのしい教育研究所〉のテーマの一つです。

 今は新しいプロジェクトで、直接こどもたちにアプローチする時間を増やそうという話が進んでいます。

 子どもたちがワクワクしながら植物を育てる、動物に触れ合う。
 身体にいいおやつ作りを学ぶ。
 ボランティア活動の魅力を味わう。
 散歩しながらたのしく英会話を学ぶ。
   etc.

学校では難しくなってきた、そういうたのしい教育を子どもたちにたっぷり味わってもらう。その保護者の方たちにも味わってもらう。現場の先生たちにも協力してもらう、そういうことを考えています。

 一緒に協力したいという方がいたらお問い合わせください。

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