たのしい教育の発想法@板倉聖宣「願えば叶うのか?」

 今回は板倉聖宣先生(たのしい教育研究所 初期から支援者/仮説実験授業研究会初代代表/元文科省教育研究所室長/元日本科学史学会会長)が語った「願いと結果」という話を紹介します。かなり前(メールマガジン2012年)に書いた記事なので、メルマガの読者の方たちも新鮮に読むことができると思います。
※以前書いた「星唄の提案」について、たくさんの熱いメールをいただきました、ありがとうございます。届いた便りはかなりず目を通し、何らかの形で誌面づくりに反映させています。今後も気軽にお寄せください。

いっきゅう
 人間は「願ったものは叶う」と考えたい生き物です。けれど、思いというものがそのままで実現することはありません。もし願っただけで叶ったとしたら、思いと関係なく実現したのです。
 人間は願った考えた上で、いろいろなことをしています、そういうことが加わって、願いが実現するのです。もちろんいろいろなことが加わっても実現しないことがたくさんあります。

 願えば実現するのか、それは冷静に実験すればいくらでも結果が出てきます。自分たちで実験しなくても、世界中のほとんどの人たちが「戦争がなくなりますように」と願ってもなくならない現状からも、そのことはハッキリしています。

 1997年2月に「私の科学啓蒙運動」と題して板倉先生が語った文章があります。
 仮説実験授業の研究会ニュース1997年2&3月号で紹介された文章です。読んでみませんか。※文責はいっきゅう

<科学の大衆化>といっても、科学の大衆化を望む人がやるとそうなるのだ、とは言えない。それは非常に当たり前なことです。大衆化を望めばそうなるのなら簡単な話なんですね。
<人間性が豊かになる>ということを望んで教育すれば、子ども達はそうなるのか? 
 自然科学は「そうではない」ということを教えているのです。
「科学の法則を発見したいと切実に望めば見つかる」というのはおめでたい考えです、そんな風な見つけ方はないのです。
 科学の法則を発見するには、科学の法則を発見できるように仕組まなければならないのです。

 人々を幸せにするためには、人々が幸せになるように願えばいいのではない。科学の大衆化についても,「私は大衆化したいのだ。だから大衆化する為には、私が思うようにこうすればいいに決まっている」と考えたら間違いなんです。

 しかしどうも自然科学についてすら<願いが結果に影響する>と思っている人がたくさんいるようです。

 わたしは「それは間違いだ」ということについて,昔はかなり熱心に教育したんです。「願ったって科学の法則は見つからない…願ったって自分の思うようにはならない」と。

 公害がなくなるように願った って公害がなくなるわけではない。
「公害というものはどうやっておこるのか?」
 そういうことを具体的に明らかにしていかなければいけないんです。

 社会の問題もそうなんです。

 しかし、社会の問題はすごくわかりにくいんですね。ついつい「願いが結果をもたらす」というように思いやすいのです。
 自然の事物については「願ってもそうならない」ということがわかっている人でも、社会についてはなかなか分かりません。あきれたことに、社会の法則についてわかっていると思える人でも全然だめですね。

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災害について予想を立てて調べる〈地震・雷・火事・台風〉

 江戸時代から、恐ろしくて、いつ起こる(怒る)かわからない、逆らえないというものを「地震・かみなり・火事・親父」と並べました。「島言葉」の取り組みの中でも伝えてきたことなのですけど、言葉には、その頃の人たちの価値観・想いなどがハッキリと残されています。過去の認識博物館のようなものです。
 「地震・かみなり・火事・おやじ」という言葉から、日本では伝統的に父親の暴君的な立ち位置がわかります。チャンスがあったらいずれ書くとして、今回は災害の話。

 今ふつうに考えると「地震・かみなり・火事・台風」と並べるでしょう。かつての日本で〈台風〉は大して恐ろしいものとは捉えられていなかったのでしょう。日本の中心の江戸・東京にはほぼこないものだったのでしょう。

 では「地震・かみなり・火事・台風」の中で、最も人的災害が大きいものは何でしょう、過去100年の死者数で予測してください。

「ケガをした人の統計でもいいのでは」と思う人もいるでしょう、でも時代の流れをさかのぼっても統計的に確かだ、と考えられるものは〈死者数〉です、詳しくは機会があればいずれ。

質問:地震・かみなり・火事・台風の中で、過去100年の死者数をみて、もっとも大きな災害は何だと思いますか? 2位以下も順位で並べてみてください。

あなたの予想

一位は〔        〕
二位以下の順位は 〔    〕>〔    〕>〔    〕

どうしてそう予想しましたか?

お 話

 台風は毎年のように来て命を奪っていくのですけど、地震は毎年ということではありません。ところが過去100年間の地震による死者数を考えると、大規模な地震の破壊力は大変なものです。※関東大震災はほぼ100年前だということで算出

    • 1923年の関東大震災: 約142,800人の死者​(Wikipedia
    • 1995年の阪神淡路大震災: 約6,400人の死者​(Wikipedia
    • 2011年の東日本大震災: 約19,747人の死者​((Wikipedia
    • 2024年の能登半島地震  死者281人(NHKニュース

 これらの大規模な地震だけで年間の平均死者数は約2,000~3,000人程度となり、災害の死者数でみると地震がトップです。それにしても関東大震災の被害者は桁違いだったのだと驚かされます。

 残念ながら「地震は予知できない」というのが現時点での科学的な見解です。地殻内での岩盤の急激な動きによって発生する地震が、どのように始まり、どの時点でエネルギーが放出されるかを予測するのは極めて困難だからです。

 とすると地震予知、予測ではなく「この地域にはこの程度の地震が50年以内に発生する確率が70%程度」という《長期的な地震リスク評価》で、その程度の地震が来た時に、できるだけ被害を減らす対処に取り組むことが大切でしょう。

 二位からについては、〈たのしい教育メールマガジン〉でプランとしてまとめようと考えています。興味のある方は調べてみてください。

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生き物と触れ合う体験はデジタルの世界では味わえないたのしさ@夏の講座2024「たのしい自由研究」②

 今回の夏の講座はいくつかのプログラムの中から自分のチョイスで受講するスタイルを導入しました。

 いろいろなコーナーを楽しむためにも、まずリラックしてもらうことが大切です。いつもよりたくさん入った会場で、さくら先生がたのしいゲームを実施して、心と体をほぐしてくれて、そのあと自由研究のワークショップがスタートしました。

 選択型プログラムの一つが〈生き物たちでたのしく自由研究〉のコーナーです。動物と植物とに分けて〈たの研/たのしい教育研究所〉の仲良しまーよ先生とじゅん先生が協力して担当して、大賑わいのブースの一つになりました。以前二人一緒にアメリカの自然動物園にまで出かけていったくらいの生き物好きで、たくさんのたのしさを伝えてくれました。

 

 

 予想をたててたのしく自由研究をすすめられるように、希望者にセットをプレゼントしました。
  

 ミムラ先生のアイディアで実施した「おたまじゃくしすくい」コーナーも大ヒットで、たくさんの子どもたちが来てくれました。

 環境教育が大切だといわれてかなりの年月が経ちました。

「自然の魅力を体感する子どもたちが育ってこそ本物の環境教育だ」というのが、たのしい教育研究所の流儀です。

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おたまじゃくしたちがカエルになって旅立つ/たのしい環境教育

 たの研ではいろいろな方たちが持ってきてくれたオタマジャクシが200匹以上暮らしています。

おたまじゃくしはカエルの子なので、育てていくうちにどんどんカエルになっていって水槽から飛び出しそうになるので、ふた付きの入れ物に移します。

 成長したカエルたちはほぼ毎日、川や池に帰しています。カエルは生きた虫たちを食べるので、室内で育てるのは至難だからです。もちろん、おたまじゃくしの時にとってきた場所です。

 前に「どうして沖縄でこんなにオタマジャクシがとれなくなったのか」という記事を書いたとき「農薬の問題が大きい」と指摘した方がいました。

 確かに田んぼや畑の水たまりにたくさん観られたカエルやオタマジャクシ、カエルの卵たちが、こうやって探していくとほとんど見られないことに気づきます。

 カエルたちが元気に育っていく環境は、人間にとっても健康的な環境だとおもいます。

 オタマジャクシをきっかけに、環境について考えることにもなるでしょう。
 夏の講座では休憩時間を利用して「おたまじゃくしすくい」というゲームをしようと考えています。
 講座が終わって、あまったおたまじゃくしたちは、獲ってきた場所に返す予定ですけど、今回の講座でキャンセル待ちの方たちが大量に出てしまい、逆にキャンセルの方はほとんど出ていないので、参加できない人たちがいっぱいいます。その中でほしい方たちに分けてあげられないか、などいろいろ考えているところです。

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