たのしい国語・たのしい英語-「分かるから分けられる」ということ-〈科〉という言葉②

 さて前の記事で触れた牧野富太郎の《植物記》の、ある言葉に目が止まったと書いたその部分を書き抜きましょう、いつもの様に読みやすく手をいれました。

   

 

 植物学上でもまた動物学上でも科の字は今日普通に使用し誰れでもよくこれを知っている。

 すなわち植物学では、以前には、例えば Order Magnoliaceae という様な場合の Order に適用したが、今日では一般にそれと同位の Family が用いられている。

牧野富太郎「植物記」青空文庫より

 

 〈科〉はもともと〈Family:ファミリー〉を訳したものだったんです。
 ファミリー:family の方がずっとイメージしやすいな。

 もちろん私は植物学の本や資料をいろいろ読んでいますから、その単語も目にしているはずなのに、頭には入ってなかったわけです。

〈バラ科〉は「バラ・ファミリー」です!

 当然、庭に咲くバラは〈バラ・ファミリー〉

wikipediaに感謝して参照

「実は〈さくら〉も「バラ・ファミリー!」


「え~?」

私いっきゅうもそうだったのですけど、「桜はバラ科なんだよ」といわれると「学者たちは〈科〉という特別な分け方をしているんだろう」という様に、煙(けむ)に巻かれた様な、ぼやけたイメージをもつ人も少なくないでしょう。

「桜はバラ・ファミリーなんだよ」といわれたら
「え、一族なの? DNAがかなり近いわけ?」と理解が深まると思うのですけど、どうでしょうか。

 牧野さんの文章を読むと、〈 明治期、中国語をそのまま採用して、門とか科という分類用語になった〉ことがわかります。

 同じ漢字文化とはいえ、私にとっても多くの人にとっても科よりファミリーが身近な感覚として理解できるでしょう。

 私は今後、積極的に〈科〉から《ファミリー》に移行しようと思います、学術用語的にも完全に正しい利用の仕方です。表記的には「サクラ・ファミリー(科)」でいきましょう。

追記
 牧野さんは中国語をそのまま分類用語に利用したことに反対していて、やまと言葉で〈科〉を表記しようと提案しています。

 どういう提案だったか・・・、少し考えてみますか?

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 世が移ってもしも科の字を日本語にしなければならない場合に立ち到ったなら、私はこれをナカマ(仲間)としたいと考えている。

 そしてこの語は縁を有つ者の集りを表している科の意味と合致するものだと信ずる。

 タグイ(類)ではその限界が余り厳格に感じなく、またこの語は余り通俗に用い過ぎていてどうも特用してある科の名としては適しない感があるので私は採らない。

 そしてもしもこれをローマ字で書く場合には Kiku-no-Nakama, Tade-no-Nakama, Yanagi-no-Nakama, Mame-no-Nakama, Yuri-no-Nakama などと書けばよいのである。あるいは no を省いて端的に Kiku-Nakama, Yanagi-Nakama という様にしてもそう悪くは無いと思う。

牧野富太郎「植物記」青空文庫より

 

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たのしい国語・たのしい英語-「分かったから分けられる」ということ① 牧野富太郎

 最近ひとつの言葉から〈ものの見方・考え方〉が広がることがありました。考えてみると〈ことば〉というのはほとんどが、新しい扉を開いてくれるものなのでしょう。

 牧野富太郎が著(あらわ)した『植物記』という本があります。「青空文庫」に力を尽くしているボランティアの方たちのおかげで、webで気軽に読むことができます。ほんとうにいい仕事をしてくれていると思います、心より感謝⇨
https://www.aozora.gr.jp/cards/001266/files/51368_56013.html

 今回はその中の一つの言葉に目を開かれた話をさせてください。

 子どもたちに理科を教える様になった頃から『動植物の分類』に関心が深まって、たとえば

「どういうワケで植物Aと植物Bが同じ〈科〉に分類されているのだろう?」

ということが気になることもでてきました。

 そういう問題意識をもちながら資料を読んでいくと

「AとBは同じ〈科〉で分類されていたのに、研究がすすむにつれて異なる種に分類された」

という様な事例があることも知る様になります。
 当然とはいえ生物は〈神〉がつくってそのグループに従っているわけでもなく、〈研究者〉の分類に従っているわけはありません。
「進化していく多種多様な生物を研究者たちが〈便宜上、強引に分類〉している」のです。

 そもそも〈分類〉つまり『わける』ことは《分かる》の語源です。ものごとを理解することと同義でした。

 あかちゃんが〈お母さん〉と〈お父さん〉が違う人だと分かることは知的にかなり大きな成長です。
 最近私が「違う」と思っていた〈ユウナ・オオハマボウ〉が、実は同じ木に咲く同じ花だと分かったことも、知的な高まりです。

 分かったから〈分けることができる〉、分類する行為は私たちの認識の深まりと強く結びついているのです。

 いろいろな学者たちがいろいろな考えを元にして生物を分類していたものを、現在の様に統一的な見方・考え方で体系化したのは「カール・フォン・リンネ」さんです、いつもの様にwikipediaから引用させていただきます。

 

 分類の基本単位は〈種:しゅ〉です、基本的には同じ種同士でなくては子孫をつくることができません。

 私たち人間は〈ホモ・サピエンス〉という種です。

 リンネさんは生物を

[門(もん)]
[綱(こう)]
[目(もく)]
[科(か)]
[属(ぞく)]
[種(しゅ)]

という様に分類しました。

 たとえば〈犬〉は〈イヌ科〉、種は〈オオカミ〉です。

門:脊索動物門 Chordata
綱:哺乳綱 Mammalia
目:食肉目 Carnivora
科:イヌ科 Canidae
属:イヌ属 Canis
種:オオカミ C. lupus

 なので、オオカミと犬は〈同じ種〉で、子孫を作ることができます。
 日本ではオオカミを〈ヤマイヌ〉、人間と一緒に暮らす犬を〈イエイヌ〉と呼んでいた時代もあったほどです。※たとえばウィキペディアで「イヌ」と検索して読んでみると、そういう話も出てきます

 今回はその分類法の「科」という分類について書かせていただきます。

つづきをおたのしみに

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オオハマボウ(ユウナの花)の秘密「見れども見えず」その2-たのしい植物学

 タンジェリン・オオハマボウとイエロー・オオハマボウの話の続きです、この二枚の写真は私いっきゅうが最近撮影したものです。

 みなさんはどっちをよく目にしているでしょうか。

いっきゅう撮影2023-07

いっきゅう撮影2023-07

 多くの人は一枚目の写真だと思います。

 この二つはチューリップの様に、黄色、赤という様に別れているのでしょうか?

 先日〈たの研〉のA先生が
「ユウナは朝はきれいな黄色で、夕方に近づいていくにつれて濃いオレンジ色に変化していくんです」と話していて
「え、全部そうなるんですか?」と驚いてしまいました。

 A先生も全てがそうなるのか不確かな様です。

 そもそも朝と夕方で花の色が変化してしまう植物があるという話は聞いたことがありません。

 みなさんはどうでしょう、1枚目が午前中、夕方になると2枚目になるという話は本当だと思いますか?

⬇︎

予想タイム

⬇︎

 実はそれは本当のことでした、1枚目の黄色いユウナの花も2枚目のユウナの花も、私が同じ日の同じ〈ユウナの木〉で午前11時と午後4時に撮った写真です。

いっきゅう撮影2023-07

いっきゅう撮影2023-07

 しっかりと色が変わっています。

 それだけではありません。

 下側を見ると・・・
 タンジェリン色の花がたくさん落ちています。
 黄色い花の状態で落ちているものはみあたりません、どういうことでしょう。

いっきゅう撮影2023-07

 ※

 ユウナ(学名:オオハマボウ)は1日で黄色からタンジェリン(オレンジ)色に変わるのだけではありません。

 朝開いた花が夕方には落ちてしまうのです。

 なんと・・・

 色が変わっていく花というとアジサイもそうです、しかし1日で変わっていくという花は聞いたこともなく、毎年ユウナの花を見てきたのに、全く気付きませんでした。
 まさに「見れども見えず!」、見ていたけれど見えていなかったのです。

 それにしても、花が1日で落ちてしまうということになると「実・タネ」はどうなっているのでしょう。

 これが花が落ちてあとに残っている実・タネです、すでに成熟してように見えます。

いっきゅう撮影2023-07

 この様子から予測すると、花のツボミの状態でどんどん実・タネも成長し、花が開くと1日で受粉してしまうので、花を落としたあと、どんどん実・タネが成長していくということなのでしょう。

 ここから先は、みなさんが自由研究してみませんか。

 その変化に感動すると、この写真が夕暮れに近づいた頃撮られたものか、そうでないのかわかる様になります。

 タンジェリン色にかたむいていくのは、太陽が最も高い位置を越してからなのか?
 それとも気温が最も高い時が変わり目なのか?
 1日、定点観測して「あ、色がかわりはじめたぞ」という研究もたのしいと思います。

 webなどで調べるのもよいのですけど、そもそもこういう研究した人がいるのかどうか・・・

 まず今の時期、ぜひ海岸沿いでユウナ・オオハマボウを直接眺めてみてください。
 花の中の濃い色など、味わい深い花です。

 可能なら午前中と夕方近くの両方の時間に、ぜひ。

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オオハマボウ(ユウナの花)の秘密「見れども見えず」その1-たのしい植物学

 オオハマボウ(ユウナの花)は沖縄の海岸沿いで普通に目にする樹木です。以前勤めていた恩納村の学校そばの国道にはたくさん植えられていて、暑い日差しを避けながら子どもたちと見に行ったものです。

 和名の正式名称は「オオハマボウ」、沖縄の地域名が〈ユウナ〉です、私はユウナというやわらかい、やさしい呼び方が好きです。

wikipediaより

 ところで、ユウナ(オオハマボウ)の花には2種類の色があることをご存知でしょうか、濃いオレンジ・タンジェリン色(https://www.marcheaozora.com/?pid=126570579)の花です。
 花のつくりも葉の形や大きさも同じ、どちらもオオハマボウです。

ユウナ・オオハマボウ いっきゅう撮影2023-07

 木に咲く〈ゆうなの花〉の一つがタンジェリン系なのではありません、この木をみるとわかるとおもいます、全部がタンジェリン色です。

いっきゅう撮影2023-07

 はじめにみてもらったものがイエロー・オオハマボウで、2番目がタンジェリン・オオハマボウ・・・

 という別の種類だったのか?

 実はA先生に教わって最近知った秘密がありました。

 長年この花をみてきたのに、実は見えてなかったのだということがおもしろかったので、後半、紹介しましょう。
 この花を知っている人の多くも、私と同じ様に知らなかったのではないかと思うのですけど、どうでしょう。

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