たのしい生物学入門(4)-小さな巨人たち-楽しい生物学

 では、植物たちの種はどの程度なのか? 動物よりずっと多いのか、同じ程度か、どう予想しましたか。読者の皆さんからのお便りにあったのですけど、いろいろなサイトにいろいろな数が記載されている、ということもあります。なので〈たの研〉のサイトでは「より信頼度が高いと思われるもの」を探して紹介しています。注意しなくてはいけないのは「~~種はいると考えられる」という〈推定〉で記載された数字です。その数は予測する学者によってかなりの差が出てきますから、気をつけてください。

 このシリーズ「小さな巨人たち」で採用した数字と異なる数字がいろいろなサイトに書かれていても、それが科学的な研究をおさえているものなら〈多い・少ない〉が逆転することはないでしょう。

 前回の問題《動物と植物はそれぞれどの種が多いのか》について見ていきましょう。 環境書のwebサイトには「維管束植物の数27万種」とあります。維管束植物というのは、私たちが普通にイメージする〈植物〉、光合成を行い、水や養分を運ぶシステムのある生物です。

 日本科学協会の研究論文の中に「植物は名前がつけられているものだけで27万7千種」とありますから信頼しても良い数字でしょう。

 どういつのグラフに表示してみましょう、一番下の棒が植物の数です。

 動物と植物では、動物が多い。
 そして「〈昆虫〉の種の数だけで植物の種の数を三倍以上上回っている」のです。

 そろそろこのシリーズも終わることにしましょう。

 この地球上の種の多様性について、つまり進化の多様性についてみれば、昆虫は圧倒的な強者です。

 大きな環境の変化が起こった時も昆虫たちが生き残る可能性は、他の生物種よりずっと大きいといってよいのです。

私たち人間は?

 私たち人間は哺乳類の一つの種〈ヒト族〉の仲間です。〈ヒト族〉にはもっと他の種もいました。〈ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)〉〈ホモ・エレクトゥス〉〈ホモ・ハビリス〉などです。サイモン・シンの著書を読むと、それらの他種を私たちホモ・サピエンスが滅ぼした結果だといいます。その真偽は別にして、私たち人間(ホモ・サピエンス)は、昆虫たちとは逆に種の数を減らしてきた種族です。
 ネコ族には〈ヨーロッパヤマネコ (Felis silvestris)〉〈ホームネコ(イエネコ)(Felis catus)〉〈サンドキャット (Felis margarita)〉〈ブラックフットキャット (Felis nigripes)〉〈ヒョウネコ (Prionailurus bengalensis)〉〈ツシマヤマネコ (Prionailurus bengalensis iriomotensis)〉〈ヨーロッパリンクス (Lynx lynx)〉〈カナダリンクス (Lynx canadensis)〉〈スペインリンクス (Lynx pardinus)〉〈クーガー (Puma concolor)〉〈ジャガランディ (Puma yagouaroundi)〉〈マヌルネコ属 (Otocolobus)〉〈オセロット (Leopardus pardalis)〉〈マーゲイ (Leopardus wiedii)〉〈アンデスネコ (Leopardus jacobita)〉ほか40種くらいいるというのに、〈ヒト族〉は私たちホモ・サピエンス一種です。

 ホモ・サピエンスという種の中でどういうことが行われているかというと「できるだけ多彩な人を育てよう」ではなく、教育の現場をみるとわかるように《似た様な行動様式・同一の学習内容etc.》、できるだけ同じ様な人たちを育てようとしています。

 地球環境も社会環境も、人の行動も発達も一様ではありません。
 時の流れとともに、いろいろな場面でいろいろな人たちが自分の能力を発揮していくことが大切なことは、これまでの歴史がいくつも証拠立ててくれています。

 一つの種しかいなか私たちだからこそできるだけ多様な人たちが育っていくことが大切だとは思うのですけど、みなさんはどう思いますか。

小さな巨人

 タイトルにある〈小さな巨人〉というのは種の多様性でみれば昆虫たちのことです。我が物顔で地球を激変させていく人間たちの行為のもとで、絶滅の危機にさらされている種もあるのでしょう、それでも全体としてはたくましく生き続けています。この地球という惑星は昆虫たちが進化を広げている星であるといってよいでしょう。

 もう一つ、この地球の中ではヒト族のたった一種というホモ・サピエンスの未来を託すのは子どもたちです。

 子どもたちはこれから多彩な方向に力を伸ばしていける可能性に満ちています。生まれたての赤ん坊は、英語を話す人として、中国語を話す人として、そして日本語を話す人として伸びていく可能性を持っています。

 小さければ小さいほど、可能性が大きいということであるのです。

 小さな巨人〈子どもたち〉が多彩な方面に伸びていく様に、大人たちが本気でチャレンジしていく必要があると思います。

〈小さな巨人〉は種としてみれば「昆虫たち」、ホモ・サピエンスの中でみれば〈子どもたち〉、いずれも多様性にみちた生命体です。

 みなさんからのお便りをみながら、またいずれこのテーマでかかせていただきます、今回のシリーズはここで終わっておきましょう。

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たのしい生物学入門①-生物の種の数ってさ

 生物の進化というテーマで似た様な内容を紹介したことがあるのですけど、夏や海の自由研究の講座向けにいろいろアイディアを出している中で浮かんだ一つの教育プログラムです、軽く紹介しましょう。

 みなさんも予想を立てながらたのしんでください。

質問1.
一般に、生物の種類を大きく分けると「動物と植物」に分けられます。
動物は背骨がある動物とない動物にわけられます。
背骨のある動物を「脊椎動物/せきついどうぶつ」といい、5つのグループに分けています、〈哺乳流〉〈鳥類〉〈ハチュウ類〉〈両生類〉です。
 骨のない動物にはたくさんのグループがあるのですけど、代表的なものが〈昆虫〉です。

 まず私たちの仲間である〈哺乳類〉について予想してみましょう。
 犬や猫、ウマやゾウなどは哺乳類の仲間です。
 哺乳類はこの地球上におよそ何種類くらいいると思いますか?
 ※何匹いるかではないですよ
 選択肢なしで、パッと頭に浮かんだ数を上げてください。

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予想してからね

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予想してからね

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予想してからね

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哺乳類の数はおよそ6000種だと言われています。
現生種は5,416種~6,495種(最近絶滅した96種を含む)wikipedia.

グラフで表してみましょう。

 ではその哺乳類の数を元に次の予想を立ててみてください。

質問2
 ハトやスズメ、カラスや白鳥などを〈鳥類〉といいます。
 鳥類は何種類くらいでしょう、私たち哺乳類と比べて多いのでしょうか少ないのでしょうか、それとも大体おなじくらいなのでしょうか。

 選択肢なしで、パッと頭に浮かんだ数を上げてください。

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予想してからね

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予想してからね

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予想してからね

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鳥類は約10000種類だと言われています。
9930種から1万530種 wikipedia
哺乳類よりずっと多いですね。

質問3
 トカゲやヘビ、カメ、ワニなどの仲間をハチュウ類といいます。
 地面をはって進むから〈ハチュウ類〉です。
 では、地球上にはどのくらいのハチュウ類が存在しているでしょう?

選択肢なしで、パッと頭に浮かんだ数を上げてください。

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予想してからね

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予想してからね

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予想してからね

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The Reptile Database によると爬虫類の数は10700種、約10000種です。
鳥類とほぼ同じですね。

 

質問4
 カエルやイモリなどの仲間を「両生類」といいます。
 水中でも陸上でも活動できる生き物たちです。
 両生類は何種類くらいでしょう、私たち哺乳類と比べて多いのでしょうか少ないのでしょうか、それとも大体おなじくらいなのでしょうか。

 選択肢なしで、パッと頭に浮かんだ数を上げてください。

 

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予想してからね

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予想してからね

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予想してからね

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 AmphibiaWeb によると〈両生類は約8000種〉です。


 これまでみてきた脊椎動物の種の数は6000~10000種くらいです。
 これらの生物はたいてい陸上で生活しています。

 地球の陸と海はどちらが広いでしょう?

 3:7で圧倒的に海が広くなっています。

 では、その広い海に住む〈魚類〉の種類はどのくらいでしょう?

 背骨がある動物の仲間ですから、イカやタコなどは含まれません。またエビやカニなども含まれません。マグロやカツオ、グルクンやタイなどの様に私たちが普通にイメージする魚たちの種類です。

 6000~10000種類の幅におさまるのでしょうか、それとも魚の仲間はもっとたくさんいるのでしょうか?

 みなさんはどう思いますか?

 長くなったので、次回の記事に続けることにしましょう。
 まず予想を立てていてください。
 予想を立てると当たっても外れても必ず賢くなります、そして何よりたのしく学ぶことができますよ。

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黄金のキャンドルが照らす野山の彩り-楽しいアウトドア

 自治会長さんたちや、地域で活動している方たちの活動をお聞きしながら、最後に必ず尋ねていることがあります。
「このあたりで見た方がよい場所はありませんか?」

 おかげで最近は、今までいったことのない魅力的な場所をたくさんみることができます。
 以前紹介した〈コスモス畑〉もその一つでした。

 さて数日前のこと、教えてもらった場所で、雨模様の空の下で黄金色(おうごんいろ・こがねいろ)に輝く植物に出会うことができました。

〈ゴールデン・キャンドル〉〈キャンドル・ブッシュ〉です。
ウィキペディア⇨ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%87%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AB
 和名は〈ハネセンナ〉および〈ハネミセンナ〉。

 キャンドルの下の方で花が開いて、中におしべが見えていますね。

 今まで知らなかった美しいものに出会うのは快感です。

 台風も去ったので、また野山を歩くことができそうでワクワクします。

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イチゴの謎:あのツブツブはタネじゃないの?②-楽しい科学・楽しい植物学

 みなさんの考えはどうだったでしょうか。「いちごのツブツブはタネではない」という議論についてです。※前回のページを未読の方はひとつ戻ってお読みください! 

 詳しく書くと

「イチゴの表面のツブツブは〈痩果:そうか〉といって、タネではない」というわけです。

 〈たの研〉の子ども心は、そういうケムにまくような議論が苦手です。

 タネっていうのは何か?

 おおざっぱにいうと「その粒をまいて水やりしていると芽がでてその植物になるもの」ですよね?

 たとえばこれは公園でみつけたトックリキワタのタネです、綿(めん・わた)に包まれています。風で離れたところに飛んでいって、落ちてからも水滴をタネの周りに包んでいて発芽しやすい条件を整えてくれます。

 もともとタネというのは一般的ないい方で、科学的には〈種子〉といいます。

 「痩果」というのは何か?

 ブリタニカ大百科事典にこうあります。
「小さな乾いた果実で,果皮は硬くて裂開せず,中に1種子をもっているもの。キク科キンポウゲ科などに多くみられる」https://kotobank.jp/

〈乾いた果実である、中に一つの種子をもっている〉というのですね。
 あの粒一つひとつが〈くだもの〉である、ということもまた、子ども感覚からはるか遠いものです。
 だってイチゴそのものがくだもので、あの粒をくだものとは考えられません。
もしもスーパーで「くだもの-イチゴ」と書いた箱の中に、そのツブツブを入れて売り出したら、誰も買わないでしょう。間違って買ってしまった人がいたら、スーパーに苦情がいくことでしょう。

 そこで科学者を連れてきて「みなさんは知らないかもしれませんけど、このツブツブは〈かわいた果物〉で、痩果と呼ばれています。ですから《くだもの-イチゴ》と表記するのは正しいのです」と説明させたら、みなさんは納得しますか?

「果物はあの三角の赤いものをいうのでしょう!」と反論するでしょう。

苺・いちご・イチゴ  wikipediaより

 すると科学者は「いえいえ、皆さんが果物だと思っている部分は、茎の先端の花床(かしょう)が膨らんだ偽果(ぎか)というものなんです」とかぶせてくる。

 学校で先生からそういう話をきいて「なるほどそうなのか、お母さんにも教えてあげよう」と素直に納得するのは、覚えることが好きな優等生の子ども達でしょう。
 大抵の子ども達は、心の奥の方で「つきあってられないよ」と感じて理科が嫌いになっていく・・・

 子ども達に何かを伝えようとする時、私たちが心しておかなくてはいけないことは「一般の人たちの感覚を大切にする」ということです。

 その人が納得のいくような説明をすっとばして「これはこうなんです」では、大抵の子ども達はそれが嫌いになっていくでしょう。

「だって犬は犬で猫は猫と覚えているわけだから、それが教育でしょう」という人がいるかもしれません。

 例えばこう教えるとどうでしょう。

「これを犬といいます」

「これをネコといいます」※たの研のメンバーネコ〈ア~ル〉が好物のヨーグルトを食べているところ

 みんなが「は~い」と言ってくれたところで、こう語る。

だましてごめんなさい、実は最初の写真は犬ではないんです。

オーストラリア原産の動物で、通常の家庭犬とは異なる種なんですよ、〈ディンゴ〉といいます。

似てるよねぇ~

これから一緒に、どういうところが違うのか調べていきましょう。

その中で、同じ種なのか違う種なのかはどうやって決めているのかわかるようになると思います。

 これならたのしく学べる気がしませんか。

 とはいっても「イチゴのツブツブはタネではない」という説明が成り立つかははなはだ疑問です。だってタネというイメージは、その粒をまいて育てて発芽してその植物になるというイメージですからね。
 痩果はタネではない、というなら、たんぽぽの綿毛で飛んでいくのもタネではなくて、ひまわりのツブツブもタネではなく、稲の米粒もタネではないということになります。

「タネに薄皮がついた状態」というなら、まぁ納得いくかもしれません。

 そういう過程すっとばして「皆さんにはこれは犬に見えるけどディンゴといいます。よく覚えていて間違わないようにしてくださいね」ということでよいのでしょうか、教育といういとなみは、コンピュータに情報を打ち込む過程とは違うと思うのですけど、どうでしょうか?

 たのしい教育はそういう流れと根本的に異なる教育方法です。

 興味のある方は、ぜひたの研の講座を受講、スーパーバイズなどを受けることをおすすめします。

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