計算だったら電卓がある、漢字だったらスマホでキレイに打てるよね、何で勉強してるの、今の人?/学ぶ意味があるのか、勉強する意味があるのか?

 珈琲を手に座った時、たまたま近くのテレビで不登校の子どもたちと、それに取り組む学校の様子が流れてきました。オールドメディアと揶揄されるTVだけれど、こういう重厚なものはYouTuberでは作ることができないでしょう。
 「今からはデジタルの時代だ、紙の本はなくなっていく」といわれて30年くらい経ちました。少なくなったとはいえ、紙の本がなくなることはありませんでした。
 オールドメディアだと貶されるものは、見る側を「この程度の連中だ」と考えてつくる番組などであって、人間や自然、文化に敬意を表して、これを伝えたいと真剣に考えている人たちが創ったものは、いつまでも新鮮な感動をよぶでしょう、負けないでください。

 閑話休題

 番組の中、ある女の子が不登校のきっかけを「先生が疲れている感じがわかって、教え方がイライラしていて、ときどき怖い顔をする、それで気分が悪くなったりして学校にいきたくないな、と感じ始めた」と話ていました。

 教員を長年続けていると、そういうことはあるでしょうから、全ての教師にとって気になる話です。とはいっても子どもたちは優しいので、一度二度でそういうことになることはほとんどありません。そういう日々が続くと、学校から遠ざかる子どもたちが出てくるわけです。

 その子は鋭くて「計算だったら電卓がある、漢字だったらスマホでキレイに打てるよね、何で勉強してるの、今の人? って感じだった」と話していました。
 小学生でこれだけシャープなことを考える、語ることができるというのは、やはり感覚的に他の子どもたちより進んだところが多かったのだと思います。それだけに先生のイライラが何倍も痛く感じたのでしよう。

 さてみなさんは、この子の問いに何と答えるでしょうか?

計算だったら電卓がある、漢字だったらスマホでキレイに打てるよね、何で勉強してるの、今の人?

「いやいや、たとえば漢字にも〈帰す〉と〈返す〉とかいろいろあるから、その意味に合った漢字にするには、やっぱり自分で勉強していないと困るんだよ」

                ですか?

 だとしたらA.I.が発達してほぼ99.9999%の確立で正しい漢字を出してくれるとしたら、もう漢字の勉強は要らなくなるということでしょうか。
 読む時には、今の時点ですでにかなり正しい読みをしてくれるサービスが出ていますから、読み方すら学ばなくてよくなってしまうのでしょうか?

 感動と結びつく学びが人間の可能性を高めていくのです。

 漢字の学習やかけ算九九が苦しくてもがんばれ、テストに出るぞ型の学習でなく、たのしさ・感動に結びつくものとして伝えることができれば、やはり学ぶ意義があります、学ぶたのしさがあります、そうやって育っていけば、人間の可能性はどんどん高まっていくでしょう。
 それは私たちのDNAに深く刻まれた〈たのしさ〉です。

 A.I.がやってくれるから要らない、程度の学習が横行していくとしたら、人間は新しいものを生み出す力がなくなっていって、困難な状況ならずっと困難なまま、治療法の見つからない病気は、そのままずっと見つからない、そういう停滞の社会になっていきます。

 これまで人間は困難な状況をどんどん突破してきました。

 そういう力を身につけるのはたのしさしかありません。

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教師でなくても役立つ〈インクルーシブ教育と合理的配慮〉の話@読者の方からの相談に答えて

 某県の教育センターで研修員として学んでいるという方から、以前ここに書いた「合理的配慮」についての記事に驚いたという話が届き、いくつか意見を交換しています。

 私が受けた講習の中で講師が「保護者の話を聞いてあげてください、それが合理的配慮なんです」と言い切ったことに驚いた

という記事です。

 その方とは共有できている情報なのですけど、教育関係者でなくてはよくわからないこともあったかもしれないと感じたので、それを補完する内容を書きたいと思います。

 インクルーシブ教育というのは、ハンディのある子もそうでない子も一緒に学ぶ教育です。

 文科省のサイトから引用しましょう。https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1321668.htm

日本での取り組み

 国連での「障害者の権利に関する条約」採択を受けて、日本でも共生社会を目指すべく、文部科学省は2012年に「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」という報告書を発表しました。

 本報告書では、①障害のある者と障害のない者がともに学ぶ仕組みであること、②障害のある者が教育制度一般(general education system)から排除されないこと、③個人に必要な「合理的配慮」が提供されること、が必要であるとされています。
 2014年に日本は「障害者の権利に関する条約」を締結しましたが、2022年に国連は、日本では障害のある子どもの分離された特別教育が永続しているとして、日本に対して分離教育を止めるように勧告しました。日本においてインクルーシブ教育が十分に進んでいないことが、課題として浮き彫りになったのです。
 インクルーシブ教育を理解していくためには、通常の学校はインクルーシブな方向性を持たねばならず、全ての学校がインクルーシブであるべきと考える必要があります。

 また、インクルーシブな方向性を持つ通常の学校という存在が、差別的な態度と闘い、インクルーシブな社会を構築し、万人のための教育を達成する上での最も効果的な手段となり得るものであるとの認識も必要になります。インクルーシブ教育を理解して普及してくためには、まず、私たちの考え方自体から変えていかなければならないでしょう。

合理的配慮の義務化

 2012年の文科省報告書にもあった合理的配慮の提供について、日本では2016年に障害者差別解消法の施行により、どの学校においても障害のある子どもたちに必要な合理的配慮を提供することが求められるようになりました。私立学校における合理的配慮の提供は努力義務にとどまるものでしたが、2021年には障害者差別解消法が改正され、共生社会の実現のため、2024年4月よりすべての事業者において、合理的配慮の提供が義務化されました。これにより、私立学校においても合理的配慮の提供が法的義務になりました。

 「合理的配慮」というのは〈具体的な対処行動〉です。

 文科省のサイトにはこういう具体例があげられています。

 

別紙2 「合理的配慮」の例 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1297377.htm

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板倉聖宣の発想『人の生き方の半分は宿命、半分は選択』

 最新のメルマガに載せたタイトルの言葉に反響がいくつも届いています。
 発想法の章で紹介した、板倉聖宣先生(元国立教育研究所室長/たのしい教育研究所 初期から支援者/仮説実験授業研究会初代代表/元日本科学史学会会長)が1990年に「党派性と認識と科学」の中で語った言葉です。

板倉
〈人の生き方〉の半分は宿命です。
 ボクは貧乏人の子どもという感じがあります。
 そりゃあ、ボクの世代は戦争の時代に育ちましたから経済生活の上ではほとんど同じです。
 ところが東大に来る同級生なんかを見ると、父親が何かのエリートだったり、叔父さんが東大を出ていたりと、ボクみたいに父親が小学校しか出ていない奴はほとんどいません。
 でも生き方の半分は自分で選択することができます。
 職人の息子に生まれたり、インテリの息子に生まれたりするんだから、自分ではそこは決められない宿命の部分です。
 でも出世しようとするか、しないようにするかは、もう一方の半分だから自分で決められるんです。

☆⭐︎⭐︎☆⭐︎⭐︎☆⭐︎⭐︎☆

 生き方を決める、決められる子どもたちを育てることはとても大切です。
 〈たの研/たのしい教育研究所〉は、もう半分の部分、子どもたちが選べない半分の部分、たとえば親が頑張っている中でもいろいろな事情で経済的に苦しい家庭の子どもたちへ、塾や習い事など高いお金を出して通う場所よりもずっと楽しく可能性を高めてあげられる〈たのしい教育〉を無償で提供したいと考えています。

 協力してくださる方たちがいたら、お問合せください。

 現在稼働中の〈たの研〉では無理なので、まず拠点づくりとして一軒家を探しています。無償あるいは格安で貸していただける方、あるいはそれを紹介してくださる方がいたら、ぜひごあんなください。

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何だこのタワーは?/〈たの研〉のセッションでこれまでのプログラムもグンと楽しくなる

 太陰暦元日後、はじめてのプログラムセッションが開催されました。
 近々、ワークショップで使う可能性があるので詳しく書けないのですけど、これは「ハラハラドキドキタワーづくり」、去年のパーティーを楽しむワークショップで取り上げた時にも、かなりもりあがったゲームです。

 元々は〈5段〉というしばりの中でたのしむゲームです。
 今回のセッションで、前のパーティーワークショップに参加できなかったさくら先生が「どんどん上に段を増やしていこう」と提案してくれて、みんなでやってみました。

 さらにたのしい!

 ハラハラドキドキ感も半端ではありません。

 崩れる時も、高い分、迫力があります、実にいい。

 〈たの研〉のプログラムは、楽しさ度・満足度がアップしていく進化系です。

 2/22の『背を向けたあの子が振り向いてくれる時 Vol.2』でとりあげる予定です、興味ある方はお申し込みください⇨https://tanokyo.com/archives/165174

 

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