「メルマガで元気になりました」というお便り@たのしい教育の方法論

 たのしい教育の最先端の内容を満載している情報ソースが『たのしい教育メールマガジン/週刊』です。12年目に入り、ますます充実した内容になってきたことを、はじめの時から購読してくださっている方たちからのたよりで実感しています。           

 このメルマガは、自分の子どもと、自分のクラスの子どもたちとたのしめるプログラムもあって、教育に興味のあるみなさんから厚い信頼を寄せてもらっています。実はそれだけではありません。

 何かにつまづいたり、心がくじけてつらい日を過ごしている時、「このメルマガで元気になりました」という方たちもいます。先月は県外の読者の方から「メルマガに救われました」という熱いたよりをいただきました。メンタルにも効く、といっても間違いないでしょう。

 メルマガの今週号を例に紹介しましょう。

 たいていのんびりした話からはじまりまるのですけど、今週は、日本の気象庁の「台風が沖縄を直撃する」という進路予測(下図)と、〈たの研〉がイベントの時の天気予測に利用しているヨーロッパのWindyの「沖縄の上をかすめと通り、強風にさらされる時間は少ない」という予測のどちらが当たるかという予想実験の話からはじまりました。

 テレビのニュースでは「台風はこのあと、きょう夜遅くに沖縄本島地方にかなり近づく見込みで、1時間に40ミリの激しい雨が予想されることから、土砂災害などに十分な注意が必要です」と出ていました。https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1433221?display=1

 これはwindyの予測図です。少しの時間北部で風が強くなるのですけど、しばらくするとおだやかな風になるという予測(下図)です。赤が強風域で、クリックすると風速を数字で表してくれます。しかも動画で時間ごとの変化もみせてくれます。

 結果についてはここでは、詳しく書かないことにします。

 windy は無料で利用できます、いくつか前の記事に載せてありますから、興味のある方はたどってみてください。

 今回の授業プログラムは「ヤッフォー/矢四」です。
 

〈たの研〉に来てくれた方たちに実施したところ100%の満足度でした。楽しみ方と作り方を解説しています。
 画像をたくさん使って説明したので長くなりますから、一枚だけにしておきましょう。

 これは発想法の章です。

 今週は「自分に都合の悪いデータを集める」という話でした。こうはじまります。

はじめに(いっきゅう)
人間は何かを主張するとき、自分に都合の良いことを並べるのが普通です。
(親)「そんなにゲームばっかりやっていると、行きたい高校入れないよ」
(教師)「いろいろな教科をバランスよく勉強しておかないと、進学で苦労するよ」
それは本当でしょうか?
 本当のことなのかどうか、どれだけのデータを手に語っているのでしょう。もしかするとゲーム中心の生活をして行きたい高校に入ることができるかもしれません。二、三教科に力を入れていたおかげで、入りたい大学に行けるようになるかもしれません。
 登校拒否が問題になってきた頃、教師や文科省の多数派は、自分たち(学校生活・学校教育・学校システム)のせいで学校にこれないという可能性を考えず、それを「学校恐怖症」と呼び、病院での治療をすすめていました。
 学校教育やシステムに対する都合のわるい情報は入っていたはずです、でもそれを見ないふりしてしまった人たちが多数派だった。
 その都合の悪い情報を正面からとらえて、「それにも一理ある」と取り組んだ先生たちの場合には功を奏して学校で学ぶようになった子もいたはずです。
 親として一人の大人として、教師として自分の見方・考え方に都合のわるい情報が目の前に現れたとき、それも一つの選択肢として正面から向き合う、「もしかするとそれも一理あるのではないか」「いや、それはやはり考えられないな」というように考えをすすめることができるかが大切です。
 そういうことも考えながら、今回の板倉先生の話を読んでみませんか。

 他にも、野山さんぽの話あり、

 

 寺田寅彦の「珈琲哲学序説」をGoogleマップ&ストリートビューで深くたのしむ話あり、

 アイディアセッションの話あり…

 およそ10000文字程度、文庫本で20ページいかない程度のボリュームでお届けしています。

 疲れた先生たち、大人も元気になり、それだけでなく子どもたちの笑顔も増えてくる、そういうメルマガです。

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さぁ、秋がまたハッキリと近づいてきた/秋の名随筆をたのしむ 「山の秋」@楽しい国語

 この頃は台風が去っていくごとに秋のグラデーションが少しずつ濃くなっていく感じがします。そうしてついつい秋の映画をみたりエッセイを読んだりしています。もう何度も開いた、高村光太郎の『山の秋』をまた開いてみました。

 私は学生の頃から妙なクセがあって「この作家は世界でただ1人、私だけのためにこの作品を書いた」と勝手に思い込んで読むことがあります。そうやって読むたびに、作品の世界に深く入り込むことができます。今回も高村光太郎が見た世界、心の中に近づけた感じがしています。青空文庫に感謝して引用させていただきます。

 高村光太郎『山の秋』

 山麓さんろく)()ゅょから低い山にかけて東北には栗の木が多い。

 栗の木は材の堅いくせに育ちが早く、いくらってもいつのまにか又林になる。

 そして秋にはうまい栗の実をとりきれないほど沢山ならせる。

 山口部落の奥のわたくしの小屋はその栗林のまんなかにあるので、九月末になると殆ほとほと栗責めである。 

 秋に向かう東北の山や自然公園を歩くとこういう感じで、たわわに実った栗をたくさんみることができます。後で出てくるように、東北の山の栗はシバグリ(柴栗)と呼ばれていて、小ぶりな実がたくさんできます。

「四季の山野草」より

 日中はまだ少し暑いが、朝の空気はむしろ肌さむいほどの清涼さ。そのきれいな空気を吸いに朝の戸口をとび出すと、眼の前の地面に栗いろの栗がころころ落ちている。

 この落ちて間もない栗の実の色とつやとは実に美しく、清潔な感じで、殊にお尻の白いところがくっきりと白く、まったく生きている。

 しっとりとした地面の上にこれが散らばっている黒と褐色との調和は高雅である。

「お尻の白いところがくっきりと白く」というのはこういう感じでしょう。

 

 拾いはじめると、あちらにもこちらにも眼につき、繁ったニラの葉の中や、菊のかげ、ススキの根もとなどに光っている。毎朝ざるに一杯ずつ拾い、あとはすてて置く。

 拾っているうちにもぱらぱら落ちてくるし、小屋の屋根には案外大きな音をたてる。クマザサの中にもばさっと落ちるが、下草のある中に落ちた栗の実はなかなか見つけられないもので、不思議にうまくかくれてしまう。

 山の栗は多く実が小さいシバグリだが、小屋のあたりのはタンバグリとシバグリとの間くらいのもので食うのにあつらえ向きだ。

 タンバグリは丹波栗、シバグリ(柴栗)と違って大きな栗の種類です。

 光太郎さんの小屋の周りには、その2種類の中間くらいの大きさのクリも多かったわけです、それを毎朝ザルいっぱい集める。
 食べるのがたのしみだったことでしょう。

 毎日栗飯を炊いたり、うで栗にしたり、いろりで焼栗にしたりする。

 ぬれ紙につつんで灰の中で焼く焼栗を電灯の下でぼつぼつ食べていると、むかし巴里(パリ)の街角で、「マロンショウ、マロンショウ」と呼売していた焼栗の味をおもい出す。

 あの三角の紙包をポケットに入れて、あついのを歩きながら食べたことを夢のように思い出す。

 あれはフランス、ここは岩手、なんだか愉快になったものだ。

 焼き栗はパリの風物詩のようです、パリの栗はかなり大きいですね。
 左側に三角の入れ物があります、光太郎さんの頃から変わらずこういうスタイルだったかもしれません。

上野真弓さんのサイトに感謝して引用 これはイタリア

 部落の子供や小母さんらがよくかごを持って栗ひろいにくる。

 裏の山の南側のがけに取りきれないほど落ちているが、自然にどこの木が一番うまいというようなことがあるようである。

 栗拾いには随分山の奥の方まで出かけるが、そういう時に時々熊のいる形跡に出あって逃げてかえってきた人がある。

 熊も栗やドングリが好きで、この季節にさかんに出没する。

  熊は木のまたに棚というものをこしらえて、そこに坐って食べるらしい。

 この「クマが棚をこしらえて座って栗を食べる」というのがおかしいのと、本当なのかと思ってしまうだけど、「どこどこの栗の木がおいしい」というのは本当でしょう。
 沖縄にも栗の木があるとよいなと、心から思える読書のひとときでした。

 上質のエッセイを私に残してくれた光太郎さんに感謝。

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一つの情報で判断しないことは〈ものの見方・考え方〉の基本

 『すべてはFになる』という小説でデビューした森博嗣(もり ひろし)さんという作家がいます。本人は仕事も作家業も引退したと語っているので、作家と呼ばない方がよいかもしれません。

 ミステリーフィル(ミステリー作品を愛するもの)の個人的感想として、森さんの小説には心動かされるところがぜんぜんないので、前述の作品のあと一冊読んで離れました。けれど森さんの〈ものの見方考え方〉は実におもしろく、おそらく全て読んでいます。

 その中のどれで読んだのか定かでないのだけど、森さんの「デザインはde-sign、〈de:捨てる、sign:見える〉が語源である。無駄な物を排除して浮かび上がってくるもの、鮮明になってくるものがデザインである」という説明に「なるほどいろいろ注ぎ足すのではなく、削ぎ落としていくのがデザインなのか」と感動してメモしてありました。

 久しぶりにそのメモをみたので、このサイトでさっそく紹介しようと思って、ChatGPTやいくつかのサイトで複層チェックしてみたらびっくり。

森博嗣さんの引用にある「デザイン」の語源に関する説明、「de-sign(de:捨てる、sign:見える)」という解釈は、非常に興味深いものですが、語源的に厳密な事実ではありません。

実際の語源

「デザイン(design)」の語源は、ラテン語の**「designare」**で、これは「計画する」「指し示す」「描く」といった意味を持つ言葉です。ラテン語の「de-」は「完全に」とか「方向」を示す接頭辞であり、「signare」は「印をつける」「記号化する」ことを意味します。したがって、「designare」は「何かを指し示す」「目的に向かって形を決める」といった意味になります。

 他のサイトでみていくと…

「デザイン」とはもともとラテン語の「designare(デジナーレ)」という言葉からきています。 デッサンと同じ意味を持ちます。 言葉の意味を見てみると「ある問題を解決するために思考、概念の組み立てを行い、それを様々な媒体に応じて表現すること」と記されています。

 

「デザイン」(design)はラテン語の「デシグナーレ」(designare)からきています。
これは「示すこと」(to designate)と「描くこと」(to draw)の両方の意味を持つと言われています。
英語では「design」という名詞がこの2つの意味を持っているということです。
これに従って日本語で意味を考えると、「示すこと」(to designate)= 意図、計画、目標。「描くこと」(to draw)= 描画、モデル、スケッチ。

など、開いたものはすべてChatGPTの説を裏付けるものばかりでした。

 私が感動してメモしたものを、ここにそのまま書いたら、私の紹介した森さんの見方・考え方に感動した人が、周りの人たちに広げたことでしょう。

 みなさんも、「これはおもしろい」と感じたことはたくさんあると思います。

 それを周りの人たちに伝える時には、複層チェックしてみてください。それが正しいようだと思えた時点で広めるようにしましょう。
 ものの見方考え方の基本中の基本です。

 とはいえ、森さんの発想は個人的におもしろいと思っています。デザインには、そういう側面も間違いなくあるでしよう。削ぎ落として削ぎ落として出来上がる優れたデザインもたくさんあると思います。

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心動かされないさんぽはない/たのしい花さんぽ〈ゴールデンブッシュ/ゴールデンキャンドル〉@植物で自由研究

 目的地があって歩いている時でさえ「お、面白い」と立ち止まることがあるくらいです、目的地なくのんびり散歩していて心動かされないことはありません。

 ウォーキングしていても特に心動かされることはない、といった知人がいました。でもその人は、運動のために時間を決めて歩いているわけで、それは私がいうさんぽとは違うものだと思います。

 みなさんには心動かされるさんぽをおすすめします。

 先週は雨続きの日々でした、とはいえ時間によっては晴れ間もあります。傘を手に、たのしい花さんぽをしました。

 あるいていると、まずこの花に心惹かれました。

 雨が降るか降らないかという空模様なのに、その花の周りが明るく輝いてみえたからです。これまでもどこかで目に入っていたのでしょう、でもこの天気だから離れている場所からも、より目立ったのだと思います。

 おもしろい花です。

 調べてみと、和名ゴールデンキャンドル、別名キャンドルブッシュ・ハネセンナ、学名は Senna alata.でした。たしかに台にのったキャンドルたちに似ています。

 形状的なものだけでなく、もしかするとその色で周りが輝いたように見えるから、というのも名前の由来になっているかもしれません。

 葉は肉厚で、羽状複葉(うじょう ふくよう):一枚の鳥の羽のような形状です。

 タネもできていました。
 立派なサヤができています、マメファミリー(マメ科)ですね。

 とすると、マメファミリーの花の特徴で〈蝶〉の形をしているわけだ…  と探そうとした時にパッと雨が降り出して、帰途につきました。

 雨模様の日もたのしい時間を過ごすことができました。

 この花の別名「ゴールデンブッシュ/Candle bush」のブッシュは〈低木・茂み〉という意味で、大きな木になる種類ではないということです。

 私がみたのは2mくらいはありました、これくらいが限界なのでしょう。

 随分前に大ヒットした「ブッシュマン」という映画がありました、そのブッシュも低木性の植物たちを意味します。
 カラハリ砂漠に暮らすネイティブの暮らしを面白おかしく描いた作品で、欧米・日本を含む人々の傲慢さ感じさせる作品でした。確かにそこに巨木はなく、あっても低木ですから、そこに暮らす人々だという意味でブッシュマンと呼ばれてきたのでしょう。

 たのしいさんぽをすると、身体だけでなく頭もよく動くよあになります。

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