おすすめブックレビュー『存在のすべてを』/あえて「人情ミステリー」と名付けたい

 本好きのメルマガ読者の方からすすめられて読んでみたら、すぐにのめり込んでしまいました、おすすめの一冊『存在のすべてを/朝日新聞出版』を紹介します。
 あえて〈人情ミステリー〉名付けたのだけど、ラストまで読んだら同意していただけると思います。

「本屋大賞」とあるけれど、私はその権威を感じていません。『月の満ち欠け』や『コンビニ人間』などで懲りていて、最近も「成瀬は天下を取りにいく」も途中でやめたし。やはり最も頼りになるは、息の通じたビブリオ・フィル(biblio phile/本を愛する者)からのおすすめです。

 Google Booksの紹介を引用しましょう。

平成3年に発生した誘拐事件から30年。当時警察担当だった新聞記者の門田は、旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「今」を知る。

再取材を重ねた結果、ある写実画家の存在が浮かび上がる。

質感なき時代に「実」を見つめる者たち。

圧巻の結末に心打たれる、『罪の声』に並び立つ新たなる代表作。 Google Books

 まとまったボリュームで試し読みできますよ⇨ 試し読み『存在のすべてを』

 骨太のミステリーだという感じがすると思います。それを〈人情ミステリー〉と書いてしまったら、〈長屋人情もの〉のような話に思えてしまうかもしれません。でも私の読後感はまさにそれでした。

 表紙の帯をとると、絵画がデザインされています。重要な登場人物たちが生きる世界が、美術界です。かつての名司会者 久米宏さんが推薦していることを知らずにいる人たちも多いことでしょう。

 読んだ人のほとんどが「デパートで絵画の個展を開いた時、売上の4割がデパート、4割が美術商、残りの2割が画家、10万円で売れた絵も、画家の手に渡るのは2万円」という話に驚くでしょう。しかも親分子分的な縛りが恐ろしく強く、世に出るためにはかなりお金がかかってしまう。小説家が下調べなくそういう話を挿入することはないだろうから、きっとそういう世界なんだ・・・

 とはいっても小説家も印税は10%だから、クリエイターの方達がそれだけで食べていくというのはとても厳しいということがわかります。

 のめり込めるミステリー小説を探している方は、この作品を手にしてはどうでしょう、ビブリオふィルの私がおすすめします。

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私たちの意識は全体のホンのわずかな部分しか認識しない/たのしいPEALカウンセリング入門

 PEALカウンセリングをした時、クライエントさんが「どうして今までの悩みが大したことではなく、こうやって動いていけばよいとわかっていくのか」と感動し、カウンセリングのことを学びたくなったと話していました。今回はカウンセリングのことを書きましょう。

 1900年のこと、F氏が「人間には意識することのできない領域、無意識という側面があって、それが行動の多くを支配している」という考えを提唱しました。

 そうです、ご想像通り世の研究者はこぞって批判・反論しました。

「コーヒーに砂糖が欲しいと意識するからスプーンで砂糖を入れてかき混ぜるのであって、無意識が行動の多くを支配するって何をいってるのさ」というわけです。

 みなさんもそうおもいませんか?

 ですよね、暑いと意識するからエアコンのスイッチを入れるのだし、お腹がすいたと意識するから何かを食べるわけです。

 ところがですよ、脳科学が進んでいくうちにF氏の言っていることが随分正しいのだということがハッキリしてきました。

 人間の意識は脳の活動全体の1~2割程度で、8~9割は意識でコントロールできない部分だというのです。

 暑いからエアコンをつけようと意識する前後で、脳は膨大な情報処理をしています。汗腺の開きをコントロールして体温を調整したり、心臓の鼓動をコントロールしたり、エアコンのスイッチを取るために歩く動きもものすごい量の情報処理をしてバランスをとり、しっかり◯歩でスイッチまで着き、絶妙な動きで手に取りスイッチを押しているわけです。

「よし、まず右足を25cmくらい軽く前に出して、足の裏の70%くらいつくころ、左足をひょっと40cmくらいすすめて・・・」と意識しながら動いている人はほとんどいないでしょう。

「かゆいぞ」と意識するまでもなく何となく手の甲を掻いたり、木の枝にぶつかりそうな予感でサッと頭を下げたりetc. 意識して動いていたのではぜんぜん間に合わない行動に満ちているんです。

 でもそういうことが脳研究によってハッキリしたのはF氏の無意識理論の提唱より後のことで、F氏はそういうことを知りません。F氏はそういうこととは別に、思考や感情の分野で独立して、そのアイディアを提唱したわけですから、天才的だと思います。

 人間が過去に、強い心の痛手を受けていたとしたら、その後、何か言葉で説明できないような不安に支配されることがあります、つまり無意識的な不安です。

 朝起きて、特に意識することなく珈琲を入れていたりすることがあります。

「この人は安心できそうな人だ」「この人は危険ではないか」という無意識的な感覚があります、つまり言葉で考えて判断しているのではなく、意識の奥の方の感覚です。

 ある香りをかいだ時、さっと何十年も前の記憶が蘇ったりします、これも「よし、あの時のことを思い出すぞ」という意識でたどったものではありません。

「人間の思考や行動の多くも、意識ではない無意識の部分の大きく依存している」それは間違いないことです。

 F氏はその無意識的な行動の多くを「性」と結びつけて説明するようになっていったので、その部分でPEALカウンセリングと共通することはあまりないのですけど、「無意識的なもの」つまり「言葉にならない思いや感覚、行動」といったものはPEALカウンセリングのテーマとして重要なものの一つです。

 何となくのその思いや感覚、行動といったものが、納得いくように言語化できた時、悩みや目標の正体が明らかになって、一歩先に進むことができるようになります。

 長くなりました、このくらいにしておきましょう。

 いつかPEALカウンセリングの具体的な話も書きましょう。

 あ、そうそう、F氏というのはフロイトさんのことです。

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「四文字熟語を使うと頭がよい感じがする」という不思議な感覚/脳の不思議

 以前、ある先生が「いっきゅうさん、学級だよりとか、四文字熟語使うとなんだか頭がいい感じがするよね」と話しかけてくれたことがあります。私は少し考えてから「ないですねぇ~」と答えたのだけど、私が少数派なんだろうか、まだわかりません。

 も三十年くらい前のことで、その後全く思い出したことがないのに、突然それを思い出したのはなぜか?

 ある人が自分の部下がプロジェクト関係者にcc一斉送信した文章の終わりに

今後も満身創痍でがんばります。

と書いてあった、というエピソードに大笑いした時に、その記憶の回路が開いたからです。

 それにしても脳というのはとても面白い、不思議な器官です。今この記事を書いているのは私の「脳」の働きなのに、意識している部分は、この脳全体のほんの少しの部分で、ほとんどは意識でコントロールできない部分です。

 教育者としてだけでなく、カウンセラーとしても重要なテーマです。

 意識と意識の下にあるもの、という視点でこういうことを考えてみてください、実話です。

 2006年7月、俳優のメル・ギブソンがロサンゼルスのMalibu(マリブ)で28日、規定速度の2倍の140キロのスピードで運転していた上、カリフォルニア州の規定である合法血中アルコール濃度0.08を超える0.12の血中アルコール濃度が見つかり逮捕されました。

 その際、メル・ギブソンは警官に「世界で起こっている戦争は全てユダヤ人の責任だ」「お前はユダヤ人か」と発言したことがマスコミに取り上げられ、大きな非難の的となりました。

 ユダヤ人委員会の代表はそれに対して「あの発言により、事実の関連性に関係なく、人種差別が行われていると考えざるを得ない」と語り強く非難しました。

 それに対してメル・ギブソンは「とても恥ずかしく思います。私が反ユダヤ主義でないことを、どうか分かってください。私に偏見はありません」と公式に謝罪しました。

 では、謝罪したメル・ギブソンが本物のメル・ギブソンなのでしょうか。それとも酔って暴言を吐いたメル・ギブソンが本物なのでしょうか?

 いろいろな考えがあるでしょう。 

 それくらい、脳というのは研究し甲斐のある対象です。

 いずれメルマガのテーマの一つにしたいと考えています。

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不思議話をどう理解したらよいか(抜粋)/たのしい発想法入門

〈たのしい教育メールマガジン〉の発想法の章に書いた記事に反響がいろいろ届いています。

〈たの研〉のメンバーから質問された「タレントKさんの不思議体験をどう捉えたらよいか」という話への答えです。Kさんの不思議体験というのは〈友人が亡くなってあと、はっきりとした姿で自分の目の前に現れて、家族への伝言をお願いした〉ということです。Kさんの話は、嘘を言っているようにはぜんぜん思えないとのこと…

 私の答えの一部を切り取って紹介します。

廊下に人影が見える
 以前勤めていた小学校にいた頃の話、霊感が強いことを自認するC先生が、一人残って成績処理をしているとき、廊下に人影が見えることがたまにあるという話をしていました。
暗い状況で光源が限られていると、何かの影が強調されて見えることはよくあります。風でゆれるカーテンの影が人物にみえることもあります。
 人間の意識というのが完全でないことは、脳科学者たちが数々の実験で確かめてくれています。

 たとえば下の二つの中心の円(青)は明らかに左の円が大きく見えてしまうのに測ってみたら同じです。

「いや私が見たブルーの円は左が絶対大きかった」と主張しても、それはそのように見えてしまっただけで、実際測ってみたら、ぴたりと同じ大きさです。

 意識・脳は勝手にいろいろな判断をすすめるので、思い違いがたくさん起こってしまうのは、避けられません。

つづく

 結局なにが正しいのかをはっきりさせる方法は、板倉聖宣が明らかにしたように〈仮説実験〉の手法しかありません。それが無理なら、科学的に証明されたことをベースに考えていくことです。

 どちらの方法もとらない、とりたくない、としたら「あのおじいさんが灰をまいたら枯木に花が咲いたんだよ」という、おとぎ話と同じところにおいていた方がよいでしょう。「わたしは寝ている間にUFOに乗せられて宇宙人から世界の秘密を授かった。来る◯年◯月にはとんでもないことがおこる」と語る人たちもいます。その人が嘘をついているように思えないなら信じないといけないのか?
 そういう問題と一緒です。

 例示したように、人間の意識・脳はいろいろな思い違いをするものだし、そのうち、時間が経てば真偽が見えてくることもあります。

 世の中には不思議話、霊の話、スピリチャル系の話にあふれています。

 たのしい教育の発想・原子論者の発想をはっきりと書く人はとても少ないので、こういう話を求めている人たちもいます。私の感覚では、ゆっくり増えているように思います。

 何しろキリスト教の国アメリカでも無神論者が増えてきているということですから、こういう見方・考え方に注目してくる人もいるのでしょう。

 毎週発行のメールマガジンでは、さらに詳しく解説しています。興味のあるかたはお問合せください。

 原子論的な見方・考え方は板倉聖宣先生の『科学的とはどういうことか』の中にわかりやすく書かれています。『スプーン曲げ事件の反省 マスコミ操作に踊らされないための科学』『コックリさんはなぜ動く 自己催眠のおそろしさ』『「超能力で当たった」という話 追試が出来なければ科学にはならない』など、今回の不思議話とダイレクトに関わるテーマも取り上げられています。

古本で500円くらいで入手できます⇨ https://amzn.to/3X5uJPU

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