楽しい面白い自由研究から広がる世界〈最も古い劇はどれくらい前か?〉

 電子出版の2作目で『授業書@たの研:すごいぞ、レンズの力」を出そうと準備をすすめています。

 何年か前の夏の講座用に作ったプログラムで、おおよその流れは出来上がっています。今は出版するにあたってのファクトチェック(事実確認)をすすめて、4月には完成させたいと思います。

 今調べているのは、最も古い〈人間がレンズを利用したことがハッキリとわかる記録(文献)〉です。
 いったいそれはどれくらい前までたどることができるのでしょう?

 レンズという物体を探すのではなく、記録を探すわけです。

 世の中ではいろいろな「劇」が演じられています、ミュージカルも劇です。劇団四季ほかたくさんの劇団があります。
 学校でも学芸会などで「劇」が定番ですよね。
 劇には台本(戯曲)があって、同じものを何度も上演することができます。
 ちなみに私も学芸会の劇の戯曲(台本)を書いて監督をしたことがあります。

 さてみなさん、人間はどれくらい前から「劇」を演じてきたと思いますか?

 100年くらい前でしょうか、いやいや500年くらい前からでしょうか、もっと古くて1000年くらい前までたどるることができるでしょうか。いやいやそんなものではなくもっとずっと前でしょうか?
 日本だけでなく世界で考えてみてください。

予想してみてください。

 ア.100年くらい前

 イ.500年くらい前

 ウ.1000年くらい前

 エ.1500~2000年くらい前

 オ.その他

どうしてそう予想しましたか?

 ちなみに私いっきゅうは、学生の頃『文学論』の講義の中で、世界最古の劇は『日本の〈能〉』だと学んできました。
「室町時代に観阿弥・世阿弥の親子によって完成された日本を代表する舞台芸術が能だ
」というのは中学・高校で〈テストに出るぞ的〉に教え込まされてしまった知識です。

 「能」は今から1600年くらい前にたどることができますから、それが正しいとすると〈エ〉が正解になりますね。

 でも日本は中国からたくさんの文化が伝わったという歴史をみると、中国にはもっと古い〈劇〉があるのではないだろうか?

 レンズの自由研究をしている時に、実はその知識が間違いであったことを発見しました。

 実は「レンズ」のことが古い劇の台本つまり戯曲として残されています。

 アリストパネスの『雲』という劇で、実際に何度も上演されていたことをA.I.のディープリサーチ機能で発見しました。

 その英訳をweb上で読むことができます⇨https://classics.mit.edu/Aristophanes/clouds.html

 もちろんweb上には翻訳サイトもありますし、AIも翻訳は得意ですから、その気になれば中身を味わうこともできます。

 読んでみるとなかなか面白い劇です、ソクラテスを茶化した内容で、しっかりとレンズということばが出てきます。

SOCRATES(ソクラテス)

You mean a crystal lens.(つまり 水晶のレンズってことだね)

wikipediaに感謝して引用

 ストーリーの中で〈ロウをとかす〉ために使われていますから、機能としてもしっかりレンズのことといって間違いありません。

 ではそれが書かれたのはいつのことか?

 紀元前500年くらいです、つまり今から2500年前になります、古代ギリシャで演じられてきた劇です。

 私たちのイメージしている劇と重じであることがわかると思うので、はじめの部分の和訳を少し書き出してみましょう。

『雲』 ※アリストパネス作
紀元前419年執筆

 

【登場人物】
ストレプシアデス(STREPSIADES)
フィディッピデス(PHIDIPPIDES)
ストレプシアデスの召使い(SERVANT OF STREPSIADES)
ソクラテスの弟子たち(DISCIPLES OF SOCRATES)
ソクラテス(SOCRATES)
正論(JUST DISCOURSE)
不正論(UNJUST DISCOURSE)
パシアス(PASIAS、金貸し)
アミュニアス(AMYNIAS、別の金貸し)
雲のコーラス(CHORUS OF CLOUDS)

【舞台】
背景には2つの家が見える。一つはストレプシアデスの家、もう一つはソクラテスの**「思案堂」**(Thoughtery)。後者は小さくて薄汚れている。ストレプシアデスの家の内部が見え、2つのベッドがあり、それぞれに人が寝ている。

【第一場面】
(夜明け前、ストレプシアデスがベッドで寝返りを打ちながら独白する。)

ストレプシアデス
「偉大なる神々よ!この夜はいつまで続くのだ?
朝はまだ来ないのか?
鶏の鳴き声はとっくに聞こえたのに、奴隷たちはまだいびきをかいている。
ああ、昔はこんなことはなかったのに!
戦争め、呪われよ!
私にこんな災難をもたらすとは!
今や私は自分の奴隷すら鞭打てない始末だ。
それに、このろくでなしの息子!
夜通しぐっすり寝ているくせに、五重の毛布にくるまって、好き放題に屁をこいていやがる。」
(再び横になる。)
「さあ、私も寝ようとしてみるか……
いや、無理だ!
借金や家畜のこと、フィディッピデスのせいで増え続ける出費のことが頭から離れない!
あいつは長い髪の手入れや、馬車で見栄を張ることばかり考えている。
私はというと、月の終わりが近づくたびに支払い期限が迫って死にそうだ……
奴隷よ!灯りをつけて、私の帳簿を持ってこい」
(召使いが命令に従って明かりを持ってくる。)

 ね、劇ですよね。

 この頃から『雲』以外にもいろいろな人物による劇の台本が残されています。

 わたしはこんな軽やかでこっけいな劇が、これだけ古い時代から演じられてきたことに驚いてしまうのですけど、みなさんはどうでしょう?

 劇の歴史をもっと前にたどれないか?

 いろいろなサイトをみると

紀元前2500年頃 エジプト・アビドスの「オシリス神話劇」というのがあって、それが世界最古の劇です

と書かれているものもあります。
すると5000年前にたどることができます。
どこどこのなになにはもっと古い、というような記述もあります。
でもそれらはどうも「宗教儀式」のようなもので、踊りのようなもののようです。

 私たちがイメージする「劇」ではないと思うので、私にはその説はとれません。
 しかも「台本・戯曲」が残っているわけでもありません。

 レンズの自由研究が人間の文学的なたのしさの歴史にもつながります。
 いろいろなものはつながっているので、当然のことです。

 みなさんも自由研究をたのしんでみませんか。

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楽しい島言葉「行く」と「来る」/県外の先生の怒りが和らいだ時

 恩納村の学校に勤めている時のことです。県外から嫁いできたA先生と職員室で珈琲を呑みながら語り合っていたとき、なんの拍子にかA先生が「私、沖縄の人たちの言い方で、とってもイヤなことがあるんです」という話を始めました。ずっと溜まってきた思いだったのでしょう。

 曰く「沖縄の人たちは〈行く〉を〈来る〉というでしょう、それがもうずっとイヤで・・・」

 なるほど「あとで行くからね」を「あとで来るからね」という親類のおばさんとか、確かにいるなぁ~

 独特の島言葉なら「これはそういう意味か」と理解できるのに、標準語の「行く」と「来る」が逆の意味として使うことが、A先生には許せなかったのかもしれません。

行く⇨    来る⇦

 なるほどね、すみません。

 と感じつつ、実はその話については、以前、別なシチュエーションで話をしたことがあって、それを伝えてみることにしました。

わたし
「沖縄の表現ではなく、たとえばこれまで学校で勉強してきた英語の表現で〈これ、ゆるせない〉というのはありませんか?」

 しばらく考えたA先生は「いや~、無いですね」

「アメリカ人って〈そっちに行くよ〉って言う時 I’m coming. って言うんですよ。相手の立場にたったいい方で、ごく普通に使ってるんです。
 沖縄の人たちって、アメリカ人の感覚に近いのかもしれませんよね(´ー` 」

 さすがのA先生も「アメリカ人の感覚はゆるせない」とは言いませんでした。

 きっと琉球・沖縄の人たちが、自然に相手の立場に立つことができる感覚ということも理解してくれたような気がします。

 言葉には、それを使う人たちの、ものの見方・考え方がダイレクトに残されています、まさに知的文化財です。

 すてきな表現、すてきなものの見方・考え方を、いろいろな人たちに伝えていきたいものです。

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琉球の地図 300年くらい前の姿/無料で利用できます〈国立公文書館デジタル資料〉

 国立国会図書館や国立公文書館では著作権の切れたものを中心に無料で閲覧、印刷できるコンテンツをたくさんそろえていて、「私たちの税金で嬉しいことをしてくれている」という感じがします。
「私たちの税金で建てた公共施設なのに、なかなか利用できません」という相談があったりして残念な思いをしていたのですけど、こういういい仕事をどんどん増やしていってほしいものです。

 さて今回は300年くらい前の琉球の地図を紹介しましょう、国立公文書館が公開している「元禄国絵図/げんろく くに えず」の中に入っています、江戸幕府が1700年ごろにまとめた地図です。

 今から300年前の地図というのは、現在の最新の地図と比べてどれくらい似ているのでしょう?
 かなり形が違っていたり縦横の比が違っていたりするのでしょうか。
 みなさんはどう思いますか?

 これが300年くらい前の地図です、どうですか?
  全体的にみて、かなり現在の地図に近い形を描いていることにおどろいたのは私だけでしょうか?

 拡大してみていくとおもしろいことをいくつも見つけることができます。

 平安座島などもしっかり描かれていることは当然として、勝連半島から平安座島までは「干潟」と書かれています、潮が引くとこれだけ長い距離を歩いて渡ることができたわけです。
 もう一つ、達筆で読めないところもおおいのですけど「平安座」という名前はこの頃からあったわけです。

 勝連半島の根元には「具志河間切」という言葉も見えます、具志川(河)という名前はこの頃から定着していたわけです。

 今の那覇市あたりはかなり広い湖状態だったこともわかります。
 海と繋がっているので、海水が入り込んでいたのでしょう。
 海の魚もとれたのだと思います。

   
 みなさんも自分で開いていろいろ眺めてみませんか。

 ⇨ https://www.digital.archives.go.jp/DAS/pickup/view/detail/detailArchives/0301000000/0000000232/00

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読者の方からの嬉しいたより/賢治さんの「星めぐりのうた」考

 嬉しいことに公式サイトの読者の方から質問や問い合わせがたくさん届きます。
全て目を通し、直接返事ができない場合でも、その方がわかるように、記事内容に反映させています。

 今日も元気がでるたよりを受け取りました。

 いつもこのサイトを楽しく拝見しています。毎回毎回、新しい視点に刺激を受けています。

 今回も

 どこかの文献に残っていたものではなく、実際の言葉として伝える力のある子どもたちが増えていってくれることは、素晴らしいことだと思うのですけど、どうでしょうか。
 たとえば、焦っている、慌てている、困っている友だちに「よんなー よんなー どー」
そう言ってくれる子どもたちが増えてくる。
そういうことも、たのしく学んでくる子どもたちから広がっていくことでしょう。

という内容に深く共感しています。

これからもお身体に気をつけて、素敵な発信を続けてください!

 ありがとうございます。
 きっと沖縄県内にお住まいの方なのでしょう。

 こういう質問も届きました。

賢治さんの「星めぐりのうた」の詩の最後に「こぐまのひたいのうえは 空のめぐりのめあて」とあります。
こぐまのしっぽの方角に北極星があるのでは・・・
と気になります。
どうして「ひたいのうえは 星めぐりのめあて」とあるのでしょう?

 宮沢賢治作詩「星めぐりのうた」をご存知ない方もいると思うので歌詞をのせておきます。

あかいめだまの さそり
ひろげた鷲の  つばさ
あをいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。
オリオンは高く うたひ
つゆとしもとを おとす、

アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち。
大ぐまのあしを きたに
五つのばした  ところ。
小熊のひたいの うへは
そらのめぐりの めあて。

 曲はwikipediaで聴くことができます、作曲も賢治さんです ⇨ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%9F%E3%82%81%E3%81%90%E3%82%8A%E3%81%AE%E6%AD%8C

 その方には直接、こういう内容の返事を送りました。

いっきゅう

いつも読んでくださってありがとうございます。
さて「星めぐりのうた」に出てくるその歌詞は、賢治さんの間違いだという人がほとんどです。

小熊座のひたいの上ではなく尻尾の先に〈ほしめぐりの目当て〉になる「北極星」があって、賢治さんは尻尾と頭を間違ったのだろう、というわけです。

他にも怪しいところがあるから、きっとそうだ、ということになっているようです。

でも、次の画像にあるように、こぐまの額の上には大熊座の「北斗七星」があります。
北極星はあまり明るい星ではなくみつけにくいので、たいてい「北斗七星」や「カシオペア」を目印にして北斗七星を探します。理科の星空の授業でも「まず北斗七星かカシオペアを探して、その星をめあてにして、こっち側に何倍すると北極星がみつかります」というように教えています。

ということで「こぐまのひたいの上」は北斗七星という「星めぐりの目当て」になる星座があるんだよ、というようにもよめると思います。
私は勝手に、そう考えています。

◯◯さんはどう思いますか?

 みなさんも、気軽にお便りをください。

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