手段ではなく目的としての楽しさ/たのしい教育の発想法@板倉聖宣が遺した言葉たち

 ノートパソコンを新調したのでデータのコピーをしています。〈たのしい教育メールマガジン〉の全データを整理していると創刊当時の記事に見入ってしまいました。レイアウトの工夫もほとんどなく、画像も少ない文字中心の直球勝負の内容ですけど、編集した本人の私が時を経て読み行ってしまうほど濃い中身でした。
 今でも書きたいことに溢れているとはいえ、メルマガを配信したばかりのころは「何をおいてもまずこれを」という状態だったのでしょう、私自身が強く影響をうけたものたちが目白押しだったはずです。
 創刊第二号に〈たの研/たのしい教育研究所〉を強く応援してくれた板倉聖宣先生(仮説実験授業研究会初代代表・元文科省教育研究所室長・元科学史学会会長)の「手段でなく目的としての楽しさ」という原稿を紹介しています、その一部を分割して紹介しましょう。

 〈たのしい教育メールマガジン〉を古くから購読してくれている方も、きっと新鮮に読むことができると思います。

 出典は伊良波さんと私が〈たのしい教育〉を学ぶサークルを作ってお互いが気になるレポートを持ってきて読み合わせしていた頃の資料、1992年四條畷小学校の授業公開と研究会の資料集からです。おそらく四條畷の仮説関係のサークルが全国大会などで販売してくれたものだと思うのですけど、文面以外には表紙の画像しか残っておらず、奥付けで特定することができませんでした、ご了承ください。

沖縄の全国大会で板倉先生が講演している時の様子

 

 ※板倉先生の意図が伝わりやすいように私いっきゅうが手を入れています

 

手段でなく目的としての楽しさ

(板倉)

「教育における実験」とはいかなるものでしょう。

 それは、教育の目的において決めなければなりません。
 例えば、ある人たちは「子どもたちが賢くなればよろしい。そのためには、勉強がつまんなくてもかしこくなればよろしい」という考えがあります。
 「もともと勉強というのはつまらないものであるから、それでも耐え忍んで勉強させなければいけない」とこういうふうにいいます。
 またある人は「そうではない、たのしく勉強しなければ勉強というのは身につかないものだ。身につけさせるためにも勉強というのはたのしくしなければいけない」といいます。
 そういう中で、おそらく全ての人が一致することは「子どもたちがかしこくなること」です。「知識が増えいろいろな判断力がつくようになる」ということだと思います。そういうふうにするためにはどうすればいいか、それを実験的に検討するんです。
 ここで思うのは「頭がよくなった」とか「知恵が探くなった」とかいうことはどうやってはかることができるか、どうやったらわかるかということです。これがわからないと、どうやったらよかったのかということが測定できません。

「なんとなく授業をやったら子どもたちがよくなったよ」なんていっても、他の人は認めてくれません。
 大体、先生にはそういう厚かましい人はいない。
 私は、先生はそういう点ではもう少し厚かましくならなければいけないと思うんですが、なかなか自信をもってそういう人はいません。いればいたで、また問題になるんですけれども….

 要するに「子どもたちの知恵が伸びた、賢くなった」ということをその基準を決めて、そして、そのようになるようにするにはどうしたらいいかということを研究していく必要があるんじゃないかと思います。

 その際私は「賢くなるjということと以上に重要なのが「たのしく勉強できる」ことだと考えています。

「たのしく勉強できる」ということは、かしこくなるための手段ではなしに(そのこと自体が大事である)と考えます。

「学校でたのしく勉強できた。そしていろいろなことが身についた」ということでなしに、「勉強というものは楽しいものだ、いろいろな知識を身につけたりしてかしこくなるということは楽しいことだ」ということを身につけることが、社会に出て自分自身で学びとる底力を作る。だとすれば、「たのしく勉強する」ということがひとつの目的ではないか。
 私どもはそのような観点、子どもたちが「勉強がたのしい」「自分たちはかしこくなったと思う」という観点で教育というものを考えていこうと思っています。

前半はここまでにしましょう。

 板倉聖宣先生のものの見方・考え方に興味をもった方は、まとまった一冊を読むことをおすすめします⇨https://amzn.to/3QVGpS1

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沖縄今日この頃(2023-05-20)の楽しい花さんぽ@楽しい環境教育

 午前中、少しの時間を利用して野山を歩きました。沖縄は都会に行くのも野山に行くのも海にいくのもわずかな時間でできるところが大好きです。

 クローバー(シロツメクサ)が咲き乱れていました。

 シロツメクサはとても小さな花(マメファミリー/マメ科)の集まりで、一つの茎の先に米つぶくらいの花たちが美しく咲いています。
 みつけたら、近づいてゆっくりながめてみてください。

 

 この白い花は何の花だと思いますか? 
 シベがたくさん突き出ています。

 グアバ(バンジロウ)です。
 沖縄では〈バンシルー〉と呼ばれています、沖縄方言・琉球方言です。
 まだ熟していません。
 ということは、見に行くのがたのしみになってきます。

 私が今日たのしんだのはわずか30分だったのですけど、それでも他にたくさんの花たちをたのしむことができました。

 まもなく梅雨に入るといいます、晴れ間をみつけて、みなさんも野山に出かけてみませんか。
 野山でなく、近くの公園でもたのしめますよ。

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〈マース〉の謎@A先生の発見 /美味しい「野菜たっぷり無水カレー」の研究すすむ

〈たの研/たのしい教育研究所〉で子どもたち向けの食事やおやつを出すとしたら?
 と考えると、とてもたくさんあって、それはメンバーがみんな食べ物づくりが大好きだからです。
「月刊たのしい授業」にのった〈クイックちんすこう〉や〈きらくカリコリ〉、沖縄県のしまくとぅばプログラムで作成した〈ゆーぬく団子〉、たのしい教育の講座(40年くらい前)からスタートして沖縄中に広まった「べっこうアメ」etc.
 どんどんリストアップされていきます。

 最近はM先生得意の〈野菜たっぷり無水カレー〉づくりに凝っていて、昼食ならこれが最強ではないか、と考えたりしています。※たのしい教育プログラムの時はたいてい「これは◯◯系では最強だな」と感じながら開発をすすめています

 何しろ野菜がとても多い。トマト、ナス、きのこ、にんじんその他 手元にある野菜をなべいっぱい詰めます、もちろん水を加えることはなく、野菜から出てくる水分を利用します。

 一番上に肉系を乗っけます。冷蔵庫に余った食材を中心に利用しますから、バリエーション豊かです。

 仕上げは、市販のルーを利用したりスパイスにしたり、これもバリエーション豊かです。

 さて最近「これは懐かしい」と感じたルーを手に入れました。1962年発売とあます、日本の家庭で簡単にカレーをつくることができるようになったのは、この商品のおかげなのかもしれません。その後、ハウス食品とかSBとかいろいろ会社が似たようなものを出していったのだと記憶しています。

 この「オリエンタル マース カレー」の〈マース〉って、どういう意味なんでしょう?

 沖縄の方言では塩のことを〈まーす〉といいます。
私の友人に「塩カレーって思ってた」という強者がいました。

 わたしは地球を〈アース〉というので、何か天体に関する名称なんだろうと考えていました。

 みなさんはどう思いますか?

 A先生もそのマースに注目していた一人だったようです。

 〈たの研〉にあったマースカレーの箱を手にしたA先生が突然
「マースって〈MARS〉って書いて、マンゴ・アップル・レーズンとスパイスの頭文字なんだって」
 と大きな声をあげました。

 コマーシャルの歌詞に出ていたので、マンゴという果物を使っているのだというのは知っていたけれど、考えてみると沖縄でマンゴをよくみるようになったのは20年くらい前とか、そんなころでしょう、子どもの頃はマンゴがどういう果物か知りません。

 何十年も経って「マースの謎」が解けました。

 人生観が変わるくらいの大きな変化ではないけれど、こうやって謎が解かれていくのはたのしいことです。

 ちなみにオリエンタルマースカレーで作ったカレーは、今まで他のルーで作ったカレーに引けをとることはなく、美味しい「野菜たっぷり無水カレー」ができました。

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人間が優しく豊かになっていくと同時に使う言葉も優しく豊かに進化する@楽しい国語

 人間が優しく豊かになっていくと、使う言葉も優しく豊かに進化していきます。言葉は人間の心の中を表現するわけですから当然のことといえば当然のことです。

 わたしが大学で今の特別支援教育の授業は〈特殊教育〉といいました。

〈特殊〉から〈特別な支援〉の教育に変わったわけです。

「それまで〈視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱〉の5つに分かれていた特殊教育が束ねられたという構造に変化したから」というのが教員採用試験レベルの解答なのですけど、それなら「統合特殊」と呼んでもよかったでしょう。

 そこには「特殊」ではない「特別な支援」なのだ、という思いがあったのはまちがいないと思います。

 〈特殊〉という言葉と〈特別支援〉とはそんなに違わないと思う人もいるでしょう。
 けれどそこには〈特殊である〉という名詞的なイメージではなく、ニーズのある子どもたちに〈こちらからスペシャルの支援をする〉という動詞的なイメージが加わっています。言葉だけでなく、その中に込められた想いが変わったのです。

 わたしが大学で学んだ頃の〈特殊教育〉の前は何と呼んでいたか?

 衝撃的な言葉です、心臓にもよくないと思います・・・

 「廃人教育」です、その学校を「廃人学校」と呼んでいました。
 今なら訴えられるくらいの表現ですね。

 メルマガには書いたけれどこのサイトには書いていないかもしれません。
 あ、書いてましたね ⇨ https://tanokyo.com/archives/13485

 現代の学校システムの始まり、明治時代の『学制』に出てくる言葉です ⇨ https://tanokyo.com/archives/13485

 ひどすぎるので教育界の記憶から消し去りたいのでしょう、「かつてそう呼んでいた」ということすら語られていません、知っている人はほとんどいないでしょう。
 私も学生時代の授業の中で聞いたことはなく、その後、特別支援の歴史をたどったときに知って驚きました。

 特別支援教育の歴史をみていくと、《差別されてきた》ものであることがわかり苦しくなります。

 人間は過去の歴史を踏まえて今があります。過去の歴史を消し去るのではなく理解して発展していくことが大切です。
 こんなひどい言葉をつかってしまった歴史を知って、もうそこには戻らないという覚悟が大切です。

 過去の歴史を知らないと困ったことが起こります。
 たとえば「戦前の教育に戻せば子どもたちは礼儀正しくなる、犯罪も減る」と発言する政治家もいました。そういう意見が大きくなると、ここまで登ってきた階段を何百段も降りることになるでしょう。

 廃人教育⇨特殊教育⇨特別支援教育 と進んできた歴史は、日本人全体の心の進化といえるでしょう。

 〈障害児〉の〈障害〉という表現も変えた方がよいと思います。
 たのしい教育研究所では、行政用語などを引用する以外では利用することはなく、「ハンディがある」という表現をしているのですけど、もっと優しい言葉になっていくことでしょう。

「認知症」という言葉があります。
 ごく普通に利用されているので、かなり以前からそう呼んでいたと思う人もいるでしょう、でも2005年頃からです。

 その同じ症状を何と呼んでいたか、覚えている人はいますか?

〈痴呆〉です。

 変わってよかったよかった。

「言葉は時代とともに変わっていく」といいます。

 でも違うと思います、「言葉は人々の心の変化とともに変わっていく」のです。

 豊かな方向に優しい方向に変えていきたいものです。

 

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