楽しく実践的な〈ものの見方・考え方〉@森博嗣『集中力はいらない』から/たのしい教育メールマガジン

〈たのしい教育メールマガジン〉で紹介している『たのしい ものの見方・考え方』の章は先生たちだけでなく、お母さんお父さんたちからも人気です。今週号は森博嗣(作家)さんの『集中力はいらない/SB新書』を紹介しようと考えています。久しぶりに読み直すと、やはりいいところ突いてくれている、とおもうところがいろいろあります。
 少しだけ紹介しましょう。

森博嗣

「集中」や「集中力」は求めるべきもの、高めるべきものと信じて疑わない社会的な傾向が既にあって、その理想に向けて鍛錬しなければならない、と教えられる。それに合う人はけっこうだが、僕のようにタイプが合わない人間には、むしろ逆効果になりかねない。

 自分に合った生き方をすれば良いだけのことだ、と言ってしまえばそのとおり。だが、言葉でいうほど簡単ではない。なにしろ、自分の本来のタイプが自分でもはっきりとはわからない。子どもであればなおさらだ。体重や視力のように測定器で測れるものではないから、本人以外には知りようもない。たとえば、運動神経のような肉体的なものは、外部から観察が比較的容易であり、客観的な評価も可能だが、集中のし方というのは、肉体的な特質ではなく、いわば頭脳の活動である。それを意識できるのは自分だけであり、たとえ自分自身であっても、簡単に見極められるものではない。

 運動に向き不向きがあるように、頭脳の働き方にも向き不向き当然ある。画一的な教育や指導を受けると、タイプの合わない人は、自分は間違っていると自己批判し、それだけでも多大なストレスを感じるだろう。酷いときには病気になり、不健康な結果を招くにちがいない。そうならないように、違うタイプの人間がいることを、まず知ってもらいたい。
 集中をやめると本来の力が生まれるそして、それ以上に、むしろ集中しないことで、機械にはできない人間本来の能力を発揮することもできる…

ここまで

 私は私なりの集中理論があります。

 それはいつか「たのしいものをたのしく生み出す力」としてまとめたいと考えています、ご期待ください。

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自由研究〈水と油と酢としょう油〉@たのしい教育を応援してくださる企業「ろうきん」に感謝を込めて

 先生たちの勉強会で身近な化学プログラム「水と油と酢としょう油」の実験をとりあげました。この先生たちがいろいろな処で化学のたのしさを伝えてくれるでしょう。

 これがその時のワンシーン、今回はそのための基礎になる実験をY先生が実演してくれています。

 ことわざにもあるように、水と油がまざらないことはよく知られていると思います。

 油としょう油は混ざると思いますか?

 以前、理科の授業でとりあげたとき〈混ざらない〉と予想するたくさんの子どもたちの中でSさんという女の子が

「しょう油という言葉には〈油〉ってついているでしょう、近い仲間だからだと思います。近いとすると二つは混ざると思います」

と自分の予想を発表してくれて、「確かにそうかも」と何人もの子が予想変更したことがありました。

 みなさんはどう思いますか?

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興味のある方はぜひ自分で実験してみてください。

 子どもたちと予想を立てながら、実験し、混ざるものと混ざらないものを確かめて、その理由の一つが実は〈分子のもつ電気の性質〉が大きいという本格的なもので、静電気とかエアコンをつけたりするばかりではなく、混ざるとか混ざらないという身近なところにも影響するという気に入りのプログラムで、ラストのお話に手をくわえれば、完成する段階まできています。

 さて、実演してくれているY先生の前には〈たの研/たのしい教育研究所〉を応援してくれている企業『ろうきん』の表示があります。
「ろうきん」がこういうところにまで力を出していくれるということを知らない方たちも多いと思います。
 そうではないんですよ、しっかり応援してくださっています。こういう活動ができることに感謝をこめて、いろいろなところで掲示させてもらっています。 

 いろいろなところで笑顔と賢さを生む活動に、企業・団体の力は必須です。

〈たの研/たのしい教育研究所〉の活動に賛同してくださる企業・団体のみなさんが、明るく元気な沖縄をつくる活動に一緒に力を注いでいただけたら幸いです。

 

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たのしい国語:うさぎの足跡 by 高村光太郎『雪の冬』から

 気に入りの高村光太郎のエッセイを久しぶりに読んで、「そうだ調べようと思っていたことがあったんだ」という記憶が振り返ってきました。

 まず『雪の冬』の、この文章を読んでみてください。

 山のけものは多く夜の間に出てあるく。

 朝になってみると、いちめんの白い雪の上にたくさんその足あとがのこっている。

いちばん多いのはヤマウサギの足あとで、これはだれにでもすぐわかる。

いなかにすんでいた人は知っているだろうが、ウサギの足あとは、ほかのけもののとちがって、おもしろい形をしている。

  ちょうどローマ字のTのような形で、前の方によこに二つならんで大きな足あとがあり、そのうしろに、たてに二つの小さな足あとがある。

 青空文庫の努力に感謝して引用 https://www.aozora.gr.jp/cards/001168/files/43784_25643.html

 

 もちろん雪ふるのは記録的な現象で、積もということなどない沖縄にいるので、雪の上のうさぎの足跡などみたことがありません。雪国では普通にみられる風景なのでしょうか…。わたしには「うさぎの足跡はTのような形だ」というのが不思議で、ピョンピョン跳ねながらT字型になるってどういうわけだろう? 「見ようによってはTに見えないこともない、というくらいなんだろうな」と考えていました。

 みなさんはどう思いますか?

 やっと調べてみるゆとりができました。

 これがうさぎの足跡です、確かにT字形だといってよい。タテヨコの線が真っ直ぐスタンプで押したようです。

 

 横並びの2本が後ろ足、タテの2本が前足の跡とのこと…

 とすると右から左に向かって移動したのだな!

 と思っていたらびっくり、左側から右側に向かって移動した跡とのことです。

 光太郎の文章を引用しましょう。

うしろにあるたての小さい二つがウサギの前あしで、前の方にある大きいよこならびの二つがウサギの後あしである。ウサギの後あしは前あしよりも大きく、あるく時、前あしをついて、ぴょんととぶと大きな後あしが、前あしよりも前の方へ出るのである。このおもしろい足あとが雪の上に曲線をかいてどこまでもつづく。その線がいく本もあちらにもこちらにもある。小屋のそとの井戸のへんまできていることもある。井戸のあたりにおいた青ものや、くだものをたべにきたものと見える。

青空文庫の努力に感謝して引用 https://www.aozora.gr.jp/cards/001168/files/43784_25643.html

 知らない世界を深く味わうことができる、それは文学の醍醐味です。写真にうさぎの足跡と書かれていただけでは「これはおもしろい」と感じることはなかったでしょう。

 光太郎のエッセイは

 そのウサギをとりにキツネがくる。キツネは小屋のうしろの山の中にすんでいて、夜になるとこのへんまで出てくる。キツネの足あとはイヌのとはちがう。

と続きます。

 え、狐の足跡ってどんな形をつくるんだろう?

 とはいっても、そもそも犬の足跡ってどんな感じだったのか?

 頭はどんどんたのしい方向に回転し始めます。

 たのしみはまだ続きそうです。

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子どもの感覚を持つ大人たちが教育をすすめる/たのしい教育の進化論

 たのしい教育研究所のメンバーはみんな大人です。ただし〈こども感覚〉を忘れない大人たちです。〈たの研〉でのプログラム作りは、学校でみるような研究授業や教材研究の場面とはとても違っています。

 これは〈モノとモノがぶつかるとき〉のプログラムづくりの様子です。

 その実験に至る過程でも

「わたしの子ども感覚だと、うまくつかめないなぁ」

「その説明だと、よいこちゃんは〈わかりました〉って言ってくれるかもしれないけど…」

「〈わかりましたか?〉は押し付け言葉だからない方がいい」

という意見が飛び交います。

もちろん

「あ、それはよくわかる」

「今の実験はすばらしい」

「こういう説明なら、次の実験とセットで理解できる感じがある」etc.

Good評価もたくさん飛び交います。

 お互いを信頼しているからこそ、こういうことができるのだと思います。

 そうやってできていくから、〈たの研〉のプログラム満足度も99.9%を維持しているのでしょう。

 夏の自由研究の講座に向けて、今回もたのしいプログラムがどんどんできあがってきています。

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