楽しい福祉&教育「こどもの事故事例」を学んでおくことはとても大切/全国農協観光協会「ふるさと夢学校 安全管理マニュアル作成のポイント」は優れもの

 最近ある教頭先生からの相談が来たとき、全国農協観光協会がまとめた、「ふるさと夢学校 安全管理マニュアル作成のポイント」という冊子を紹介しました。

 〈たの研〉が企画するアクティブな活動の企画の時でも時々この冊子を開きます、安全に関するものをかなり実践的にまとめたすぐれものです。

 

 相談のあった教頭先生に紹介したのは、2つの事故事例の裁判の内容です。長いので一つにしておきます。

2 事故・トラブルのケース
事故の判例は,指導者が何も注意を与えていなかったのではなく,事前に注意を与えていたが,その行為の時点で注意を与えるなどの安全管理を行わなかった場合に争いになるケースが多くみられます。

【事案】~事前に注意を与えていただけでは足りない~
市立小学校4年生の児童が,教室の清掃の際に,ガスストーブのゴムホースに足をとられて転倒し、ストーブの上にあった金ダライの熱湯をあびて受傷した事故につき, 担当教諭に過失があるとされ、 市が敗訴した事案(京都地裁平成6年4月18日)(判例タイムズ891号 112頁)

【事故態様】
教室の清掃のため児童らが一斉にそれぞれの机と椅子を後ろに下げていたところ,本件児童は,椅子を机の間に入れたまま,体を後ろ向きにして机の両端を持って引きずって後ろに引いて行ったところ, ストーブのホースに乗り上げて体がストーブの方向に倒れ, ストーブ上にあった金ダライが落ちて熱湯を右背中に浴びた。
【判旨】
(確かに)
①同小学校では,毎月1回,安全指導の時間があり、12月には「冬の安全」として, ストーブを使うときの注意事項についての指導が行われていたこと。
②またストーブの使い方については, ガスストーブが各教室に配られる際に学校側からB4くらいの色画用紙に,気をつける事項として,「教室で暴れない。ガスの元コックとかスイッチをさわらない。 燃えるような物を近づけない。」などの注意書が配られ,これは教室に貼られていたこと。
③日常の生活でもA教諭が危険と認識したときはその都度児童に声をかけていたこと。
④本件ストーブの周りには,児童が近付かないように,チョークで一定範囲の四角を書いたり,ナイロンテープでくくったりしており,チョークが消えたりしたときは,書き足していたこと。
⑤これまで,同小学校では同種の事故が発生したことはないこと,を認めることができる。
  ↓
しかしながら,…多数の児童が往来する教室の中央部に,熱傷を生じる程の湯が入った金ダライが置かれたストーブが置いてあり,しかも,ガスホースが教室内を横切っているという状況のもとで、教室の清掃活動のため児童らが机・椅子を移動する際には,児童が無意識にこれに足を引っかけ,金ダライの熱湯をかぶる事故が生じることは十分予見可能であると認められ, 右事故の発生を未然に防止するため,学校として安全柵を設けるか,又は担任の教諭がストーブの本体,ホース若しくは金ダライを予め移動しておく等の安全配慮義務を被告側に課したとしても特段不合理な義務を被告側に課したものと考えることはできない。
  ↓
本件ストーブの周囲に安全柵が設けられていない本件状況のもとでは、担任の教諭としては,児童らに掃除作業を命じるに際し,本件ストーブ, ストーブのゴムホース又は熱湯の入った金ダライをまず別の場所に移した上で,児童に対し,机や椅子の移動作業をさせるべき安全配慮上の注意義務があったところ,同教諭は右義務に違反し,漫然とストーブ上に熱湯の入った金ダライを置いたまま,掃除のための机及び椅子の移動作業を児童らに行わせた過失がある。
ただし,児童に2割の過失あり。

【コメント】
上記のような子どもの行動を予測できるかは争いがあるでしょうが、裁判所は上述のように予見すべきと捉えています。また,事前に注意を与えていただけでは足りず、行為の時点で安全管理を実践すべきことを求めています。
ストーブやゴムホースを別の場所に移動することは現実的であるかは疑問ですが,少なくとも,熱湯の入った金ダライを別の場所に移動させておくべきであったと考えられた事案です。
研修会などでは,この事案を読んで,アンケートをとると,当然に予測すべきと考える方々と酷だと考える方々とに分かれます。それ故,裁判でも最後まで争われています。
上述の裁判所の考え方を知っておくことはとても大切です。
また, 安全管理マニュアルにおいて,「危険な物は予め排除・移動しておくこと」などと書かれていることもあると思いますが,その具体的な意味をこの裁判例を通じて噛み締めていただければと思います。

 子どもたちとアクティブな活動をするみなさんには一読をおすすめします。

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楽しい福祉&教育『聾唖者というアイデンティティ』、オレンジカード(ヘルプ掲示)の提唱ほか

 はじめてアメリカに行ったときのことです。見るもの聞くもの初めてのリアル体験で、映画で覚えた英語を何とか駆使して周りの人たちとコミュニケーションを取ろうと頑張ってみたのだけど、さすがにネイティブとの会話はハードルが高く、わずかな単語がかろうじて伝わるくらいでした。

 そんな私のつたない言葉を聞き取ろうとしてくれる人たち、頑張って思いを伝えようとしてくれる人たちもいました、それはとてもありがたいことでした。そして言葉の重要性を強く感じた日々でした。

 聴力や発声にハンディのある、聾唖(ろうあ)の方たちがいます。

 みなさんは、こういう言葉をご存じでしょうか。

私たちは障害者ではなく、日本語と違った「手話」という言語を使う、言語的少数者です。

 元来「障害」という言葉が嫌いな私は、この言葉に感動しました。

 私は映画で知ったのですけど、おそらく出典はこれだと思います。

ろう文化宣言–言語的少数者としてのろう者(聾文化宣言)
現代思想 23 (3), p354-362, 1995-03
東京 : 青土社

 私が初めてのアメリカで感じたことは、この〈言語的少数者〉と似ているでしょう。

 聾唖の方たちの使う「手話」を理解して使える人たちが増えることはいろいろな人たちの可能性を広げます。

 そしてもう一つ、聾唖の方たちが気軽に〈文字〉を書いて伝える方法をもっと多用した方がよいと思います。A.I.やI.T.を駆使する必要はありません、メモ帳と鉛筆でいいんです。
 それを街中で気軽に私たちに利用して伝えるようにしてはどうだろう。

 たとえばヘルプを意味するものを「オレンジカード」に指定して、みんながそれを認識できるようにする。ハンディのある方がそれをあげたら、見た人が近づいていく。
 聾唖の方が手帳にメモする⇨「バス停がありませんか?」⇨シンプルに「バス停は?」
 私たちもそれにメモする⇨「どちらに行きたいのですか?」⇨シンプルに「どこへ行くの?」

 他にも楽しい福祉のアイディアがいろいろあります。
 興味のある福祉関連の方たちがいたら、協力しませんか。

 

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楽しい福祉&教育〈たのしい教育研究所〉ハラスメント防止マニュアル-子どもの安全編-

 たのしい教育研究所には、子どもたち・スタッフの安全を守るためのハラスメント防止マニュアルがあります。

 どんどんバージョンアップを重ねているので、「これです」と提示しても、すでにそれは古くなっている可能性が高いので、中心メンバーで確認し、子どもたちと関わる場合に、それをベースに組み立てています。

 前の部分を少し紹介しましょう。

〈たのしい教育研究所〉ハラスメント防止マニュアル-子どもの安全編-

「子どもたちの可能性を笑顔でたのしく広げていく」という〈たのしい教育研究所の理念〉が効果的なハラスメント防止につながっていることは、これまでの「参加者満足度約100%」「クレーム0」「事故発生0」という結果から明らかである。
 とはいえ、新しいスタッフや〈たの研〉で学びたい、ボランティアとして関わりたいという人たちに協力してもらう際に、明文化したマニュアルが必要であり、ここに子どもたち、職員スタッフ間のハラスメントを防止する具体的規定を記載する。
 このマニュアルは年に一度というスパンでなく、必要に応じてどんどんバージョンアップしていけるよう、〈たの研〉のメンバー全員が意識しておく必要がある

 以下、基本方針、行動のルールほか、具体的な文面が続きます、これはその一枚目です。

 福祉の場にいる方たちから〈たの研〉への相談もたくさん届きます。
 その方たちにも、このマニュアルにある文面つまり具体的な手立てを伝えています。

 子どもたちの安心で安全な福祉の場、教育の場をつくることは、とても大切です。
 協力していきましょう。

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楽しい福祉・楽しい教育@多くの子どもたちが好きになってくる

 福祉の場で頑張っている方たちからたくさんの相談を受けてきました。その中で時々とどくのが「居場所等にくるAさんがよく文句をいってくる、苦手だ、どう対応したらよいか」という相談です。学校でも担任の先生たちが頭を悩ませることでもあります。今回は、そのことについての、ものの見方・考え方を紹介します。

 たのしい教育は授業だけでなく子どもたちとの関わり、保護者、同僚との関わり、ものづくり、読書、文章づくりetc. いろいろな分野があります。その「授業」の中で、かなり信頼しているのが板倉聖宣先生(仮説実験授業研究会初代代表/元文科省教育研究所室長/元日本科学史学会会長/たのしい教育研究所 初期から支援者)が作った仮説実験授業の授業書です。

 〈たの研〉もたくさん学ばせていただきました。

 その板倉先生が語った言葉を紹介します。
 たのしい教育・楽しい福祉活動をすすめていく人たちにも大切な話だと思います。以前、メルマガで取り上げたものに手をいれてあります。

板倉

 先生だって人間だから、子ども達の好き嫌いがありますよね。

「ああいうタイプの子どもが好きで、こういうタイプの子どもは苦手だ」なんて事があります。

 そして、その好きなタイプの子を見つめながら授業をやっている事が多いんです。
 一方、嫌いなタイプの子ども達を敬遠し、恐れながら授業をやっている事が多いんです。
 ところが仮説実験授業をやっていると、先生方が嫌いなタイプの子ども達が活躍してしまうわけです。

 そういうのをみていて、はじめは「こんちくしょう」と思ったりするかもしれないけど、やっぱり活躍してしまうわけだから、それを認めざるを得ない、という事になります。
 次第に「あの子は苦手だ」「好きになれない」と思っていた子どもたちが好きになってくる。そうやっているうちに教師は、すべての子どもが好きになるんです。
 おそらく仮説実験授業をやって、教師が上達する一番のみそは、そういう点にあるのではないか、と思います。
 もっとすばらしいと思う事は、「あの子は苦手だ、嫌だ」「あんな優等生は嫌いだ」と思っている子ども達同士が、相互に交流を行うという事です。

 そうやって子ども同士がお互いを好きになる、という事がおこります。
 仮説実験授業をやっていくうちに、科学というものが分かって、仮説実験という論理が分かって、それですばらしくなるという事は、私はやっぱり欠かせない事だと思います。しかしそれと同時に、授業の中で活かされる事によって、まず教師がすべての子どもを好きになる、そして子ども同士が全ての友達が好きになる、それが本当の平和教育ではないかと、感じます。

1988年3月30日「仮説実験授業25周年記念フェスティバル」内での講演から

 魅力的な福祉活動の中で、指導する側がやんちゃな子どもたちの魅力を感じるようになる。子どもたちが好きになる。子どもたちも「この先生なかなかいいなぁ」と感じてくれるようになる。

 そうやって仲良くなってくると、ますますたのしい活動になってくる。

 たのしい福祉活動、たのしい教育活動、それは子どもたちの可能性が生き生きと伸びていく楽しい内容を提供することによって実現できます。

 たのしい福祉活動、教育活動のスーパーバイズ&相談は随時行なっています。経済的に支援が必要な方には無料で実施しています、気軽にご相談ください。

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