なぜそこまで〈漢字の書き順〉にこだわるのか? 子どもを漢字嫌いにする前に知っておきたい知識

 教員採用試験のワークショップでも〈漢字・文字の書き順〉をとりあげることがあります。毛筆を学んでいた頃は〈書き順〉を強く指導されて育ちました。

 授業で文字の書き順・漢字の筆順を指導しない先生はいないでしょう。
 教師の中にはそれを徹底的に指導する方も少なくありません。

 そもそも〈書き順・筆順〉を指導する根拠はどこにあるのでしょう?

 授業の内容について規定しているものが文科省の〈学習指導要領〉です。
 そこでは〈筆順〉についてどの程度規定されているのでしょう?

 予想してみませんか。

 現行の指導要領も次年度から効力を発する指導要領も〈筆順〉に関しては同じ書き方をしていますから、どちらを想定して予想していただいても結構です。

問題

 学習指導要領には〈筆順〉についてどの程度明記されているでしょう?

 

予想
 ア.ふれられていない
 イ.1つか2つほど説明している
 ウ.それぞれの学年について説明している
 エ.学習する漢字について細かく筆順を説明している
 オ.その他

どうしてそう予想しましたか?

 

お話 指導要領には〈筆順〉についてふれられているのは1カ所のみ

 この事を話すと驚く先生たちが多いのですけど、指導要領に明記された〈筆順〉についての文章は1カ所のみです。
 〈小学校1年生と2年生の内容:知識及び技能〉の項にあります。ふしぎなことに〈34年生〉〈56年生〉の内容には入っていません。

 次年度から施行される指導要領の文面を書き抜いてみましょう。

H29.3告示 小学校学習指導要領
第2 各学年の目標及び内容〔第1学年及び第2学年〕
2 内容〔知識及び技能〕

(イ) 点画の書き方や文字の形に注意しながら,筆順に従って丁寧に書くこと。

 

 では、テストでも問われる筆順;こういう順番で書かなくてはいけません、という筆順は何を根拠にしているのでしょう。

 指導要領をさらに詳しくしたものに〈指導要領解説〉があります。同じく文科省から出ています。
 解説の方には漢字個々の〈順番〉が具体的に記されているでしょうか?

 予想を立ててみてください。

問題

 学習指導要領解説には漢字個々の〈筆順〉について具体的に記されているでしょうか?

 

予想
 ア.学習する漢字についての筆順が具体的に記されている
 イ.数種類の筆順が記されている
 ウ.その他

どうしてそう予想しましたか?

 

お話2 指導要領〈解説〉にも漢字個々の〈筆順〉は記されていない

「小学校学習指導要領解説 国語編H29.6 文部科学省」にも、現行指導要領の解説にも、筆順は具体的にはふれられていません。

 ただし、書き方として大きな概念としてこういう文章が記されています。

 筆順とは,文字を書き進める際の合理的な順序が習慣化したもののことである。 学校教育で指導する筆順は,「上から下へ」,「左から右へ」,「横から縦へ」 といった原則として一般に通用している常識的なものである。

 

 実は漢字の具体的な筆順について記されているものは、1958年、今から60年ほど前に文部省(当時)から出された「筆順指導の手びき」をたどる必要があります。

 しかし、そこまでたどっている教師は皆無でしょう。わたしも学校現場にいる時に、その〈手びき〉をたどったことはありませんでした。

 ところで、大切なのはここからです。
「筆順指導の手びき」にはこう記されています。 ※下線、赤字はわたし

 本書に示される筆順は、学習指導上に混乱を来たさないようにとの配慮から定められたものであって、そのことは、ここに取りあげなかった筆順についても、これを誤りとするものでもなく、また否定しようとするものでもない— 「筆順指導の手びき」(1958年(昭和33年))「1.本書のねらい」より
 
 本書に取りあげた筆順は、学習指導上の観点から、一つの文字については一つの形に統一されているが、このことは本書に掲げられた以外の筆順で、従来行われてきたものを誤りとするものではない— 「筆順指導の手びき」(1958年(昭和33年))「5.本書使用上の留意点」より

 

 つまり文科省の「筆順指導の手びき」をたどっても〈この書き方が唯一正しい筆順です〉と根拠づけることはできないのです⇒ ウィキペディア

「手びき」には「広く用いられる筆順が、2つ以上あるもの」として、「上」「点」「店」「取」「最」「職」「厳」「必」「発」「登」「感」「盛」「馬」「無」「興」が例示されていますし、このほかにも2つ以上筆順がある漢字は少なくありません。
 しかし、わたしを含めて〈2つ以上の書き順・筆順〉を学び、先生から〈どちらの筆順でもよい〉と教えられた人はいないのではないでしょうか。

 

 さらには〈行書〉で漢字を書く際、鉛筆書きと筆順が異なる場合も出てきます。

 義務教育諸学校教科用図書検定基準には、書写教科書について「行書で筆順が異なる字については、適切な説明を加えていること」とあり、「手びき」に準拠することを求めていません⇒ ウィキペディア

 

お話〈筆順〉を強いるあまりに漢字そのものを嫌いに、さらには国語嫌いにしないでほしい

 パソコンやスマホ、ipadなどの端末がどんどん普及していく流れは止まらないでしょう。必然的に筆記用具で漢字を記す機会はますます減っていきます。そういう中でますます大切になって来るのはは〈自分の手で文字を記すたのしさ〉を味わってもらうことだと思います。

 もしも〈筆順〉をとりあげて〈たのしく学ぶ〉ことができるなら、それも大切かもしれません。しかし、ここに書いて来たようなことを子ども達が知識として感動的に知ることによって、もっと気軽に漢字を書くようになれば、それもシメタだとおもうのですが、どうでしょうか。

 いずれにしても、かつてテレビで耳にした〈健康を守るためなら例え命を失ってても構わない〉というお笑いのネタに近い〈筆順指導〉、つまり自分で書くことそのものが嫌になって来るような筆順指導が実施されるとしたら困ったことだと思います。
 漢字を書くことを好きになり、国語も好きになる、そういう授業がこれから必要になってくるのだと思っています。一緒に〈たのしい教育〉を広げて賢い笑顔を育てる活動に参加しませんか! 〈簡単な方法〉があります。このリンクのクリックで少しずつ拡がります!

画期的です:たのしいカラーボード版画・スチレン版画/たのCafe & メルマガで紹介した授業実践

 11月のたのしい教育Cafe、そしてメルマガ最新号で紹介した〈カラーボード版画  ※スチレン版画〉が人気で、その後学校で実践した時の作品が届いています。

 今回は一年生の作品を紹介します。


 カラーボード版画では、彫刻刀は利用せず、洗濯バサミやキャップなどを利用してくぼみをつけて印刷します。
 色は〈絵の具〉利用するのでカラフルな上に簡単にたのしむことができるので、授業参観の保護者の皆さんも一緒にたのしんだということです。

 はじめて学んで、それをすぐに授業にかけることができる、というのは教材の素晴らしさと、その先生の〈子ども達の笑顔を見たい〉という想いもあるでしょう。

 こういうメールを見ても、たのしい先生たちが増えつつある力強さを感じます。

 これは刷り写した紙ではなく、元となる〈版〉の方です。
 紙に刷った作品だけでなく〈版〉も迫力があって、いいなと思います。


 興味のある方はメルマガをお取り寄せください。これまで300号近くの号がありますから〈カラーボード版画の楽しみ方をまとめた号〉と書いていただければわかります。
こちら

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学校帰りに立ち寄って、みんなでたのしく仲良く賢くなってしまおう!

 研究所が月に一週間、地域で自由参加型の〈たのしい教育〉を実施しています。着々と参加人数も増え、公民館の館長さんたちからも大好評です。〈たのしい教育〉の重要さを感じて来てくれていることも感じることができて、嬉しい日々です。

 11月のたのしい教育の様子を一部、紹介しましょう。

 これはA先生がリードする〈スポーツレク〉でたのしんでいる様子です。
 男の子も女の子も手をつないで、仲良く身体を動かしています。

 これはものづくり大好き人間 T先生が〈ふしぎ箱〉のたのしさつを伝えているところです。目の錯覚の話も交えて、みんなたのしく賢くなっていきます。
 〈安全指導〉の後みんなでテーブルでつくりはじめます。

 T先生の右後ろにいるのはリーダーのO先生。
 たのしい教育研究所の財産は〈教員として腕をみがいてきた人たち〉が何人もいることです。その方たちが中心となって教育活動をすすめています。

 ところで完成した〈ふしぎ箱〉をごらんください。
 前の記事で紹介した様に、この箱は真ん中のあたりが凹んでいます。
 ところがこうみると、真ん中のあたりが前に突き出している様に見えませんか。

 こうやって〈たのしく賢くなる教育活動〉を続けているうちに、はじめは数名だった参加者が次第次第に増えていき、今では一クラスくらいの参加者になってきました。うれしいことです。

〈自分の地域でもこういう活動をして欲しい〉と考えている教育関係の皆さんがいましたら、ぜひご相談ください。

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ものづくりの教育で大切なこと:仮説実験授業研究会代表 板倉聖宣〈ものづくり〉について語る

 板倉聖宣(仮説実験授業研究会代表)が〈ものづくり〉について語った内容を最新のメールマガジン「教師は辞めてもたのしい教育はやめられない」に載せたところ、いくつもの反響が返ってきました。

 研究所のメンバーにとっては〈基本中の基本〉としての見方・考え方ですけど、初めて読む人たちにはとても新鮮だったようです。
 少し紹介しましょう。

 たのしい教育研究所で開発した〈ものづくり〉もいくつか取り上げてもらった〈雑誌『たのしい授業』〉に掲載する時の判断について〈1990,12 高知県での講演 たのしさを求める教育の意義〉で語ったものです。

 『たのしい授業』に〈ものづくり〉を載せる時には、原則としてそれを作った人が「できる」といったって信用しません。一番初めに作った人がいくらうまく作ったってそれは怪しい。
 その人が名人かもしれない、だから信用しないんです。

 私どものような最も無器用な人ができたらこれは信用できる。

 私達の雑誌では、ものづくりで〈誰かが作ることができた〉という話があった時に、初めからできると信用のない2-3の人がやってみて楽しくできたら、それではじめて載せるんです。

 誰かができるといっても、それは怪しいんですから。

 『たのしい授業』に載せるようなものはそんな手間をかける。

 そうやって〈すべての人がまねっこしてできる〉ということまでにしてはじめて〈楽しい授業〉ということがうそでなく〈本当〉にできる。

 〈不器用な人にもできる〉ということが分かつてきた段階で『たのしい授業』にも載せていくんです。

 私どもが文部省その他の権威ある機関にお願いするととは〈楽しい授業ができたら教科書とか指導要領とかからはみでたっていいでしょ、そういうことは大目に見て下さいね〉ということです。

 でもその位のことは文部省だってちゃんと言っているんです。指導要領を見て下さいちゃんと書いてあるから。〈現場の教師の創意工夫を持ってやってほしい〉と。

 その位の見識は文部省は持っている。だって私を雇っているんだから。

※板倉聖宣はこの頃、文科省の教育研究所室長

 

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