〈たのしい教育メールマガジン〉を読んでみようかな、というみなさんへ

 発行した当時は沖縄の身近な読者三~四人からスタートした『たのしい教育メールマガジン』は、お陰様で全国に読者を広げるまでになりました。

 この公式サイトでも毎週、内容を紹介する記事を書いていて、それがけっこう人気です。前回の板倉聖宣先生の「文章を理解するとは」にもいろいろな反響が届きました。

 ちなみに板倉先生は〈たのしい教育研究所〉設立期からの大きな支援者で、《たのラボ》にはその時にいただいた熱いメッセージを掲げています。

 板倉先生は大学院を卒業後「文部省 国立教育研究所」に入り、長年〈物理教育推進室長〉を務めました。
 歯に衣着せぬものいいからすると、文科省から遠い位置にいた人物だと思う方も多いのですけど、まさに懐にいた人物です。

 日本人としておそらく最も多くの科学の本を著していて、仮説実験授業研究会の代表を長年務め、晩年は日本科学史学会の会長も兼務していました。

私が教師を務め出した頃『月刊 たのしい授業』を創刊しました。

実は私は「板倉先生が目指したのは《たのしい教育》だった」と考えています。

授業も教育も似てるんだからどっちでもいいんじゃないの、という人がいるかもしれません。

どっちでもよいと考える人はそれでよいでしょう。

言葉にこだわる私は、断固として〈たのしい教育〉です。

  

 授業以外のところで子どもたちに反乱されたり、保護者に追求されたりする先生たちはとてもたくさんいます。

 授業はとても重要ではあっても、教育全体ではありません。


《たのラボ》の教育と福祉はセットです

《たのラボ》は、いろいろな事情で学校に足を運ぶことができない子どもたちの支援も両輪としてすすめていました。

 つまり《たのしい教育》は当初から《たのしい福祉》とセットでした。


 メールマガジンは学校教育で実施できるというのではなく、地域やこどもの居場所、こども食堂、病院などでもたのしめる内容に満ちています。

 これは「先日のシルバーウィークで、メルマガの授業の章でとりあげた〈たのラボ式ちんすこう〉を利用して、老人会の方たちにたのしんでもらいました」というお便りに添えられていた画像です。※いつものように顔はイラスト加工してあります

 

 子どもたちがつくったちんすこうは大好評で「売られているものより美味しい」「自分も家で作って孫たちに振る舞おうと思います」と言ってくれたということでした。

  メルマガで紹介した「絶対安全レインボー」はデイケア施設などでお勤めの方たちにも利用していただいています。

だまされたと思って、一年。

「たのしい教育メールマガジンって、どんなものなんですか?」

そう聞かれることがあります。

一言で説明するのは、なかなか難しいとはいえ、何しろたのしい内容ばかりです。

今とりあげた教育福祉の場でたのしめるプログラムがあります。

たのしい発想法の章もあります。

映画や動画、本の話もあります。

もちろんたのしい教育研究所の活動の紹介もあります。

 

内容が気になる人は

「まず一度読んでみてください」

と答えることにしています。

毎週、水曜日に〈たのしい教育メールマガジン〉が届きます。

現在719号、13年以上、週に一度も休まず発行してきました。

10000文字程度におさめたいと考えているのですけど、ついつい熱を入れて書いてしまい、たとえば今週号は1万7000文字くらいでした。

読み終わったあとに、

「へぇ」

「おもしろいな」

「そんな見方があるのか」

「これ、子どもたちと・家族で・職場でやってみたい」

そんなふうに思えるものが必ずあると思います。

教育の専門家の方も読んでくれています、でも主体は実践する皆さんです。

「子どもともっと楽しく過ごしたい」

「何かおもしろいことをやってみたい」

「学校の勉強って、もっと楽しくできないのかな」

そんな人にも読んでもらえる内容を目指しています。

一号読んで、

「なるほど、こういうメルマガなんだ」

と思う。

それもいいでしょう。

でも、一年52週、読み続けてみたらどうでしょう。

すると、子どもたちとの関係、職場での関係が変わっている自分を発見すると思います。

自分の生き方、周りの人たちを見る目が少し変わる、ということも起こります。

自分自身が何気なく見ていたものが、

「これって、どうなっているんだろう?」

と気になってくる。

そしていろいろな予想を立てたくなる、そういうことも起こります。

それは、かなりおもしろい一年になるのではないかと思います。


これも一つの「実験」です

まず予想する。

そして確かめる。

予想が当たることもあれば、外れることもある。

一年読んで「面白くなかった」という場合は、心からお詫びしたいと思います。

けれどむしろ「おもしろい、たのしい」と感じてくれる場合が多いと思います。

本当にそうなるかどうかは、

あなた自身で確かめてみてください。

だまされたと思って、一年購読してみませんか。

毎週一通。

教育、科学、授業、子ども、映画、本、暮らし――

いろいろなところから「おもしろい」を拾って届けます。

あなたが預ける費用は間違いなく全て、たくさんの人たちの笑顔と可能性を広げる活動に直結します。 つまりあなたの購読が、たくさんの人たちの元気をうむことになります。

最近でいうと、沖縄最北端エリアの子どもたち、保護者、先生たちの笑顔と可能性が広がりました。

この記事を読んでたった一人でも申し込んでくれる人がいたら、こんなに嬉しいことはありません。

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子どもが夢中になる扉―「予想したくなる問い」というスイッチ/板倉聖宣の仮説実験授業のひみつ

授業している時、お話をしている時、多くの子どもたちが授業に集中してくれるか、無関心のままか
その差は何からうまれるのでしょう?
 
その子の特性でしょうか
才能でしょうか
躾でしょうか
もともとの関心度の高さでしょうか?

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 何が原因なのか、と探っていくと何百通りも上げられるでしょう。
そしてそれは実践家ではなく評論家の仕事です。

どうすれば〈うわの空〉の状況を突破できるか?
それを考えて行動に移すのが教師の仕事です。

突破する超強力な方法が
🟢予想したくなる〈問い〉を準備すること です

🌀 🌀 🌀

🎲 どうでもいい勝負に目を離せなくなる

二車線の道路を走らせている時、赤信号で右左にそれぞれ一台ずつ停まっています。
ストップして右にはプリウス、左には軽自動車のN-BOXが停まっています。
プリウスの駆動は電気も併用するので結構速い。
とはいえワゴンRはターポ車です。

わずかな時間で「よし、ワゴンRにかけよう」と判断して、その後ろにつけます。
青になったとき、どっちが速いか、どっちが勝つかという勝手なゲームです。

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信号が変わって走り出す。
「やはり軽が速かったねぇ」

というのが、車好きの私の楽しみの一つです。

予想を立てるとたのしくなります。
ただし〈自分にとって意味のある予想だ〉ということが
肝心です。

じゃんけんもそうです。
勝つか負けるかハラハラするから楽しい。
レストランで隣のテーブルの知らない人たちがじゃんけんしていても
ハラハラもしませんし、楽しいわけでもありません。

この楽しさを授業に取り入れたのが、私の師の板倉聖宣(いたくら きよのぶ/1930〜2018)です。

板倉聖宣は、さっきの〈どの車が速いか〉というような個人的かつ単発的な予想ではなく、科学者たちがいろいろな法則や生命・物質・エネルギー・宇宙の本当の姿を発見し、数々の反論、ダメ出しの中で長い時間をかけて実験的にその正しさを証明して社会的なものになっていった過程を、〈問題 → 予想 → 討論 → 実験〉の流れでみごとに構造化し、1963年に《仮説実験授業》を提唱しました。

授業中につまらなそうにしている子は、興味がないのではありません。
興味関心、心動かされることがないからがまんして耐えている状態です。

こども心がもっと強いと、立ち歩きしたり外に出たりする子もでてきます。

仮説実験授業は〈私たち人類の興味関心〉をとらえたほどの内容を取り上げるので、たくさんの子どもたちの興味関心を惹きつけます。

私を含め、日本中、南から北までたくさんの学校で確かめてきたので、授業の法則だと言ってよいでしょう。

たのしい教育研究所(たのラボ)のプログラムには
仮説実験授業の理論と方法が脈うっています。

9月も満杯状態だった〈たのしい教育Enjoy-Cafe〉が2週間後、10月01日に実施予定です。

準備の関係で席に限りがあります、早めにお申し込みください。

【日時 】2026/10/1(木)18:30-20:00  
お時間のある方は、20:00-20:30までQ&Aやフリートークの時間もぜひご参加ください✨
場所  沖縄市農民研修センター
※高速北インターから10分程でつきます
 
【会費】
参加費1000円➕ 軽食代200円 計1200円
※子どもの参加費は半額となります。

【申込み】

 

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たのしい教育の巨人〈板倉聖宣先生〉の話が最も多いサイトはどこか?@楽しい福祉&教育

このサイトには私の師である〈板倉聖宣先生〉についての質問がいろいろ届きます。他のサイトやSNSでも時折り見かけるので、どういう紹介をしているところがあるのか調べてみました。A.I.で板倉先生の情報がもっとも充実したのはどれか調べたところ、とても興味深いことがわかりました!

このサイトに届く感想や質問の中に
〈板倉聖宣先生〉に関係するものが
一定数あります。

つい最近も大学生から長い感想と質問が届きました。

前から気になっていたので
たのしい教育の巨人〈板倉聖宣先生〉が語った内容が
ネット上でどれくら出ているのか
気になって調べてみました。

こういう機械的な作業は
A.I.にたのむにかぎります。
自分で探すより爆発的に速く
取り残しの数も
人間より遥かに少なくなります。


そこでできた時間は
🟢創造すること
🟢ものをつくること
🟢想うこと
🟢その想いを言葉につむぐこと
🟢作曲すること
🟢絵を描くこと
ほか、自分の感性を花開かせるものに使いましょう。

⭐️

 さてネット上の板倉聖宣先生関連情報を調べた結果、
こういう回答が帰ってきて驚きました。
かなりパワーのあるA.I.で
最高負荷のディープリサーチをしてもらった答えなので
確かでしょう。

とはいえ、よく考えてみると
「なるほど」という結果といってよいでしょう。
「やはり」という結果といってもよいと思います。

Facebook・X(Twitter)は先生ご本人の発信が見当たらず、note.comは139記事あるものの多くが実践者の回想でした。

一番充実していたのは、tanokyo.com(たのしい教育研究所・沖縄)で、書名・講演名付きの直接引用が数多く見つかりました。

ここで取り上げる候補自体が少ないとはいえ、
そこで拾ってくれたものの中に心動かされるものが
ありました。

《たのラボ》関係者にたくさん宣伝・販売した
仮説社の気に入り本『朝の連続小説』の編者
〈杉山亮(あきら)〉さんのブログです。

追悼 板倉聖宣先生

感謝して少し書き抜かせていただきます。

板倉先生の明言はいくつもあるが、

ひとつ紹介すると
「理想を掲げて妥協する」なんてことばは本当に
弁証法的で実践的だ。
スパイラルしながら真実に近づこうとする。
 たとえば教員が式典での国旗や国歌について、
自分の想いを言うのはいい。
立ちたくないし、歌いたくないなら
そのことを言うべきかもしれない。
だが、そんなものと心中してはいけない。
悲壮でかっこいいようだが、
それでやめさせる口実ができて喜ぶのは
雇用者側で、あてつけにもなっていない。

そういう愁いをも持った先生が現場にいて、

しかし子どもたちと楽しい日常を作っていくことの方がはるかに大事なのだ。

ぼくも、たとえば学校でものがたりライブをさせてもらうとき、
「できれば体育館でなく、もっと小さい部屋で
させてもらえませんか? そうするとマイクなしの肉声でやれるし、熱がこもりやすくなりますから」と
自分の理想を伝える。

 だが、そこで「体育館しかないんです」と言われてしまえばしかたがない。

「それでは、やれません」とは言わない。
マイクを使ってすればいいだけだ。

で、全力で盛り上げて、終わってから

「また、呼んでください。
できれば、次は学年をわけて
小さい教室を考えていただけると
もっと楽しくなります」と自分の理想を伝えて
学校をあとにする。

もし、ぼくのものがたりライブがよかったなら
次はぼくを信頼して、その方向で
動いてくれる先生もいるかもしれない。

 そうすると、次は子どもたちともっとおもしろい時間が作れるかもしれない。

「理想を掲げて妥協する」。
こういう考え方は板倉先生にいつのまにか教わっていたのだと今日になって気がついたことだ。

 ※少し略してつづけます

そしてぼくはその著作から学んで
自分がおもちゃを考える時、

ものがたりを考える時、
応用させてもらってきたのだと、

はっきり思う。
ありがとうございました。

と言うばかりだ。

杉山さん、いつか《たのラボ》に来ていただきたいなぁ、来てもらえるかなぁ~

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「ぶれてもいいよ」と言ってもらえるだけで子どもは前を向ける ―ヨシタケシンスケ『メメンとモリ』が教育・福祉・図書館・子育ての現場に贈るもの(2)

前の記事、ヨシタケシンスケ著『メメンとモリ』KADOKAWA の話の続きです

——本質的な問いへの答えを描きたかったということでしょうか。

ヨシタケ


 今までの価値観が根底から揺さぶられる中で、ひとつの揺るぎない正解を言うことに意味があるとは思えないんです。

 僕が描きたいのは考え方のレパートリー。

 人は楽観的になる日もあれば悲観的になる日もあって、こうと決めたようにだけ生きていけるわけではない。

 だから『メメンとモリ』では「ぶれるよね〜」ということを言いたかったんですよね。

 その時々の周りや自分の状況に応じて、使い勝手のいい現実の受け取り方や切り返し方を準備しておけば、なんとか切り抜けて生きていけるんじゃないか、と。

 そのレパートリーを「なるほどね〜」と一緒に面白がってくれる読者がいたらありがたいです。

——子育ての価値観も大きく変わって、親もあたふたしてしまいます。

ヨシタケ


 人は誰しも楽しく生きていきたいわけです。でも頑張れば必ずしも幸せになれるわけではないし、実際は思うようにいかないことだらけ。前向きになれる人ばかりじゃなくて、僕みたいにくよくよ派の人間もいっぱいいるはずで。

 だからといって楽しくて幸せじゃなければ人生は失敗、というわけにはいかない。だから良くも悪くも「思うようにいかなかったね!」とびっくりするのが今のところの生きる目的といえるんじゃないかと。


 
 でも「がんばっても幸せになれるとは限らないよ」なんて、親は子どもに言えませんよね。だから親は子どものためによかれと思っていることを押し付けたっていいんじゃないかと思います。

 子どもにとっては迷惑かもしれないけれど、そのときに「迷惑なんだよな」と感じることが後々、その子の価値基準になっていくはずなので。

 そして親はぶれるしあたふたするものだということを見せ続けるしかない。「申し訳ないけど、親もぶれるものなんだ。その中で、あなた自身が何を取るかを決めるしかないんだよ」と。大人の言うことが絶対に正しいわけではないということに、早い段階で気付かせてあげたほうがいいですよね。

——子どもの頃のヨシタケさんにとって、学校はどんなところでしたか?
ヨシタケ


 小・中学校、高校は楽しくもつらくもなくて、ただつまらなかったんですよね。でも団体行動が苦手だったし、「楽しくなくて当たり前だよね」と。

 学校は僕を楽しませるためにあるわけではないから、まあ仕方がないだろうと思っていました。

 幸いなことに“言うことを聞く”ということは得意だったので、言われたことはソツなくこなしていました。

 相手が求めた分だけをきっちりやっておこうという処世術みたいなものです。

 でもこれは向上心にはつながらないので、我が子に伝えるわけにはいかないんですよね(笑)

——現在、不登校の子どもが増えていますが、それは「つまらなくて当たり前だよね」と思えないからなのでしょうか。

ヨシタケ


 世代が変わってしまって、今の子どもたちがどう考えているのかは僕には分からないんです。

 でも僕が親として考えたのは「学校に行ってほしいわけじゃなくて、幸せになってほしいんだ」ということ。

 難しい問題だけど、行かないという選択をしたら、子ども本人がそれを背負っていく力を養って、自分自身を認めてあげられるようにする。

 周りはそれをサポートしていく。

 「将来、金銭的な援助はできないけれど、あなたがいいと思うなら、いいんじゃない?」という気持ちを子どもに伝えながら、その後の選択肢を増やしていってあげることが当事者にとっては助けになるんじゃないかと思います。

——いまの学校教育では、子どもたちは常に“求められる以上の何か”を求められているように感じます。

ヨシタケ


 それは僕が子どもの頃にはなかった新しい苦しみかもしれませんね。

 昔は正しい答えがすでにあって、ひとりひとりの意見なんて求められていなかったから。

 でも「自分の意見を出しなさい」「個性を出しなさい」と言われても、自分の意見や個性が確立されている子どもはそれほど多くないと思うんです。

 まだできていないものを出せと言われて、なんとか捻り出したのに「それは違う」なんて言われたら、もうどうしていいか分からないですよね。


 
 僕が言えることは「自分だけの意見がなくてもいいんだよ。むしろあったとしても、言うか言わないかはあなたの自由なんだよ」ということ。

 でも大人も悪気があるわけではないんだ。だから本当のことは言わなくてもいいから、なんとかうまいことお茶を濁しておいてくれないかな、と。

「こうすれば明日から楽に生きられるようになりますよ」なんて即効性のある方法はすぐに役に立たなくなる。

 だからこそ「こうやって考えてもいいよね」「こういう考え方だってあるよね」と、お茶を濁しながら生きていく方法を絵本で提示し続けていきたいですね。

【作家プロフィール】
ヨシタケシンスケ
1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。デビュー作『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で第6回MOE絵本屋さん大賞第1位を受賞。絵本のほか、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど多岐にわたり作品を発表している。著書に『しかもフタが無い』(筑摩書房)、『日々憶測』(光村図書出版)、『ぼくはいったい どこにいるんだ』(ブロンズ新社)、『もりあがれ! タイダーン』(白泉社)など。

いっきゅう
ヨシタケさんがこの本を執筆していたのは
ちょうど新型コロナで上を下への大騒ぎの頃でした。
ロシアが仕掛けたウクライナ戦争も起こった頃です。

この本の持つ先行きの見つからないテーマが生まれたのは
私たちの〈これまでの価値観〉が揺らいだ頃だったといってよいでしょう。

ヨシタケさん自身も揺らいだに違いありません。
生きることの意味を問いたくなったのだと思います。

ヨシタケさんはインタビューのはじめで
「〈あれ? よく分からないぞ〉と
子どもたちはきょとんとするかもしれない」
と答えています。

前述したように
私が読んだ時にも同じように感じました。

『ゆらいでもよい』
『ぶれてもよい』
という見方・考え方は子どもたちに伝えたい
大切なことだと思います。

仮説実験授業の中でもたのしい教育の中でも
立てた予想の変更がないか尋ねます。

一度立てた予想、見方・考え方は
いろいろな人たちの予想や見方・考え方に触れる中で
変えてよいのです。

以前このサイトにも書いたように
「一度、野球部に入ったらずっと続けなさい」
という大人がたくさんいます。

そうでしょうか?

そういうこととも関わるでしょう。

この絵本は〈問いかけ〉だと言える作品です。

ヨシタケさんは数年後
この絵本へのアンサーとしての作品を描くことになるでしょう。
それを楽しみに待ちたいと思います。

それにしてもあれだけ天地をひっくり返したように
騒いだ日々が、二、三年たつと、
まるでそういうことが無かったかのような日常になっています。

良し悪しではなく
人間という生物のもつ超柔軟性
超忘却性が成せる技なのでしょう。

2024年の「ヨシタケシンスケ作品展かもしれない(浦添市)」で見たヨシタケさんの作品たちは、元のヨシタケさんの作風に戻っていました。

 大好きな写真家 星野道夫は
『旅をする木/文春文庫』の冒頭の章をこう綴りました。

新しい旅
 フェアバンクスは新緑の季節も終わり、初夏が近づいています。
 夕暮れの頃、枯れ枝を集め、家の前で焚き火をしていると、アカリスの声があちこちから聞こえてきます。
 残雪が消えた森のカーペットにはコロコロとしたムースの冬の糞が落ちていて、一体あんな大きな生き物がいつ家の近くを通り過ぎていったのだろうと思います。
 頬を撫でてゆく風の感触も甘く、 季節が変わってゆこうとしていることがわかります。 
 アラスカに暮らし始めて十五年がたちましたが、ぼくはページをめくるようにはっきりと変化してゆくこの土地の季節感が好きです。
 人間の気持ちとは可笑しいものですね。どうしようもなく些細な日常に左右されている一方で、風の感触や初夏の気配で、こんなにも豊かになれるのですから。
 人の心は、深くて、 そして不思議なほど浅いのだと思います。きっと、その浅さで、人は生きてゆけるのでしょう。

 そのことを思い出しつつ、この話を終わろうと思います。

※〈たのしい教育メールマガジン〉の記事を加筆・再構成しました

 

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