モーターと内燃機関(エンジン)はどっちが先に発明されたと思いますか?〈楽しい工学〉と〈科学の歴史〉-楽しい学習・自由研究ネタ・たのしい授業・楽しい授業・楽しい自由研究・楽しい学力・楽しい教材・楽しい学力向上

 以前書いたエンジンの話を気に入った方たちからいろいろなお便りやお話が届いています、学生の方から届いた便りへの返事を起点にして書きましょう。

 みなさんは〈モーター〉と〈エンジン・内燃機関〉はどちらが先に発明されたと思いますか?
 モーターは〈電気〉を流して推進力を生み出します、エンジンは〈燃料〉を燃やして推進力を生み出します。 
 感覚的にでよいので、どちらが早く誕生した気がするか、予想してみてください。

問題)モーターとエンジンは

ア.モーターが先に発明された

イ.エンジンが先に発明された

ウ.ほぼ同時に発明された(10年くらいの誤差)

エ.その他

 どうしてそう予想しましたか?

 内燃機関・エンジンの発明はいくつかの説がみられます、その頃、企業の利益とも関係したからでしょう。

・1801年: フィリップ・ルボンが2ストロークガスエンジンの特許を取得

・1862年にドイツの発明家フレデリック・オットマンがガソリンエンジンを開発b)

・1867年にオットーが〈ガス〉を利用したエンジンを開発

 いずれも1800年代、日本でいうと明治維新の8年前、江戸時代の終わる頃です。
 オットーのガスエンジンの図がありました。

https://www.webcg.net/articles/-/36567 に感謝して引用

 

 1831年、発電・電磁誘導に関わる研究の中でモーターの原理がみつかり、すぐにいろいろな人たちの手が加わってモーターが開発されました。これも諸説ありです。ちなみにファラデーは実に魅力的な科学者で、このサイトにもいくつか書いてあります、興味のある方はぜひ検索してみてください。

 

 みなさんの予想はどうでしたか?

 モーターの様なシンプルで機能的なものが登場したのは今からほんの100年くらい前だと予想した人もいたようです。
 逆にエンジンの様な込み入ったものが登場するのはシンプルなモーターの後だろうと予想した人もいるでしょう。

 一説ではモーターが30年くらい早いという様にも結論づけられるのですけど、もしそうだとしても、人類の歴史の中では30年というのは大きな違いではないと思っています。

 どちらも1800年代だということに注目してみたいのです、話はここからです。

 1800年代あたりの科学の歴史をみると驚くことがいくつもあります。

 以前書いたのですけど科学だけでなく宗教にも大きな変革を与えた「ダーウィンの進化論」は何年だったか?

 1859年に発表されました。

〈新型コロナ〉でも手洗い消毒が励行されていますけど、目に見えない生き物のせいで病気になることをはっきりさせたパスツールの研究はいつだったか?

〈目に見えない菌・病原菌〉の存在をはっきりさせたパスツールの実験はいつだったか?

 1861年です。

 長くなるので分けて書かせていただきます。

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楽しい理科-色の感覚 寺田寅彦の〈物理学と感覚〉から/楽しい学習・自由研究ネタ・たのしい授業・楽しい授業・楽しい自由研究・楽しい学力・楽しい教材・楽しい学力向上

 寺田寅彦の『物理学と感覚』のはじめの部分にこういう文章が出てきます。

 人間がその周囲の自然界の事物に対する知識経験の基になる材料は、いずれも直接間接に吾人の五感を通じて供給されるものである。生まれつき盲目で視神経の能力を欠いた人間には色という言葉はなんらの意味を持たない、物体の性質から色という観念をぬき出して考える事がどうしてもできない。トルストイのおとぎ話に牛乳の白色という観念を盲者に理解させようとしてむだ骨折りをする話がある。雪のようだと言えばそんなに冷たいかとこたえ白うさぎのようだと言えばそんなに毛深い柔らかいのかと聞きかえした。

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 寺田寅彦は好きな科学者・文学者です、このサイトやメルマガでも複数回取り上げてきているのですけど、寅彦が残したもの全てを肯定的にうけ入れているわけではありません。

 みなさんは上の文章で、何か気になるところはありませんか?

 この頃の日本ではハンディのある人たちへの言葉は配慮されていないところがあって、そういう表現も気になるのですけど、科学的な部分ではどうでしょう。

「生まれつき盲目で視神経の能力を欠いた人間には色という言葉はなんらの意味を持たない」

 というのは本当のことでしょうか?

 ※

 生まれつき目にハンディがある人たちにとっても色は重要な意味を持ちます。パーティーに参加する時には明るい色、悲しい場に参加する時には黒系の色というようにコーディネートする必要が出てくるでしょう。

 そういうことだけではありません。

 色によって温度に差が出てきます。

 似た様な服でも白系は涼しく過ごすことができて黒系は熱く感じます。真夏の陽の下を歩く時、黒系は熱中症の心配をしなくてはいけません。

 これは国立環境研究所の研究データです。同じ様な条件で5分間日光に当てると、白のシャツの温度が30度だったのに対して、黒は45度です。

https://www.nies.go.jp/social/navi/colum/topics_blackmask.html

 2011年8月の晴天日に茨城県つくば市の(独)国立環境研究所敷地において、日中屋外(建物等による日影のかからない場所)で色彩以外が同一規格の衣料(U社製、同一素材・デザインのポロシャツ、色違いの9色)を用い、表面温度の経時変化を観測(赤外線サーモグラフィで最高温度を読み取る)した。色には明度という概念があり、標準的な原色(教育用折り紙)で比較した場合、白(明度1.0)、黄(1.0)、赤(0.8)、紫(0.7)、青(0.7)、緑(0.6)、黒(0.0)という数値が得られるが、この明度が可視光の反射率を代表していると考えられる。ポロシャツを使った実試験に先立ち、教育用折り紙で同様の試験(2011年7月6日午後:快晴)を行ったところ、ほぼこの順番(14時に白44℃、黄49℃、赤54℃、紫57℃、青59℃、緑62℃、黒71℃)で低温から高温に並ぶ結果が得られたため、折り紙の場合は可視光の反射率が表面温度を決める支配的要因の一つであると考えられる。

https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282680673539584

 色は見た目の違いだけでなく、温度にも関わります。

 服の色一つとってみても、目の不自由な方たちに「今日は暑いから白系がよいとおもうよ」とか「今日は寒いから、黒系だと暖まりやすいと思うよ」という様に声をかけてあげられます。

 もちろん家の屋根の色も同じ様に温度と強く関係します。

 視力面でハンディのある方たちも色を意識することは大切なことだと思うのですけど、どうでしょうか。

 寺田寅彦が生きていたら、議論したいことの一つです。

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ボランティア活動というのは自分の頭で考えて行動すること-東北大地震ボランティアの経験から

 東北大地震から12年経った3月11日、ひとりしみじみ、その時のボランティア活動の様子を想い出していました。

 その時の経験は心のどこかの回路をスイッチして、今のたのしい研究所の設立につながっていますから、ボランティア活動に止まらず人生の大きな変化を生んだわけです。

「今は危ないですよ」という人たちが圧倒的でした。中には私が行くことを耳にした県外の知人の知り合いの方から「今は危険で消防や自衛隊が活動する段階だから、行ったら迷惑です」「その旅費を募金した方がよい」という強い言葉も届いたのですけど、あの映像を目にした私は居ても立ってもいられず、地震から約10日後、クラスの子ども達を送り出したその日に飛行機に乗りました。
 岩手空港は壊滅的な打撃を受けていて飛行機で入ることはできなかったのですけど、幸い秋田空港が開いていたので、そこから宮城県に入りました。
 まだ大規模火災もおさまってなく、気仙沼あたりの火の手が西の空をオレンジ色に染めて上がっている頃でした。※写真は全て私が撮ったものです

 水は引いたとはいえ、こういう光景が360度広がっている中で何ができるのか、まずは頭をクリアーにしなくてはいけませんでした。

 選んで撮ったわけではなく、ボランティアに入った地はどこに目線を向けても圧倒的な打撃のあとが広がっていました。

 行っても迷惑だと語ったその言葉はすぐに間違いだとわかりました。
 これは塩釜市で担当した時の一枚です、私が運転していた車に載せていた表示が偶然フロントガラスに映っています。
 鏡文字で読みにくいかもしれません、「緊急車両 高齢者安否確認中です」という表示です。

 家が潰された人たちが膨大な人数でしたから、自分の生活をどうにかしないといけません。他の人たちのために時間を注ぎたいと思っていても、身内の行方が分からなくなった人たちがたくさんいましたから〈安否確認〉の人手も足りませんでした。

 昼食をとっていると「手を貸して欲しい」と呼ばれて汗を流した場所がここです、。各地からたくさん届く支援物資の保管庫です。

 ボランティア活動というのは、誰かに言われてやるものではありません。それと同じように、誰かに〈やめなさい〉といわれて「はいわかりました」と簡単にいうものでもありません。

 自分の心の奥から「やりたい」「やらなくては」と湧き上がってくるものなのです。

 安全についても、自分が食べるもの、飲むもの、寝るところについても全て自分の責任で準備していく必要があります。もちろんどこからもお金をもらうことはありません、全て自腹です。
 もし本当に自分の活動が邪魔だということになったら、持っているお金で全てカイロや食べ物を買って避難所に届けようと思いました。三月とはいえ東北は寒く、避難所は底冷えする状態です。
 そういうことも自分の責任できりもりする必要があります。

 自分の頭で考えて行動する、そういう子ども達を育てたいという人はたくさんいるでしょう。
 ぜひ、そういう子ども達を本気で育てて下さい。

 そういう子ども達が増えていくことで、日本はきっとよくなっていくと思います。
 困難な状況も突破していけるでしょう。

 そういう教育には夢と希望が詰まっています、それはつまりたのしさでもあります。

 答えが準備されているのではなく未知の状況で活動できる子ども達をたのしい教育研究所は全力で育てていきたいと思います、そしてそういう子ども達を育てることができる先生たちを着実に広げていきたいと思います。

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たのしい工学・エンジニアリング〈電気自動車(EV)のエンジンはどうなっているんですか?〉②-楽しい学習・自由研究ネタ・たのしい授業・楽しい授業・楽しい自由研究・楽しい学力・楽しい教材・楽しい学力向上

 電気自動車とガソリン車の仕組みについて前回の続き「モーターは電気を流せばまわるけど、ガソリン車のエンジンはガソリンを流せば回るのか?」です。
 子どもにわかりやすく、どう伝えたらよいでしょう。

 私が中学一年の頃、感動したところが伝わる様に書きたいと思います、基本構造をシンプルに紹介します、難しくありませんから安心して読んでください。

 エンジンを日本語にするとなんというか、ご存知でしょうか。

「内燃機関」といいます。 内部で燃やしているんです。

 そうです、ガソリン車は〈ガソリン〉を燃やして走っている、ディーゼル機関車は〈軽油〉をもやして機関車を走らせている、飛行機は〈ジェット燃料〉を燃やして飛んでいるんです。

ディーゼル機関車 wikipediaより

「燃やしている」という言葉には焚き火の様なゆっくりしたイメージがあるのですけど、内燃機関・エンジンは「爆発させている」というイメージです。

 これが実際に車のエンジンの中でガソリンを爆発させている映像です。
 ね、爆発しているでしょう。

 エンジン内の爆発させる部屋をシリンダーと呼んでいます。※シリンダーは本来〈円筒形〉という意味
 爆発すると爆風が広がりますね。
 シリンダーには上下する〈ピストン〉がついて、シリンダー内の爆風が広がる力がピストンを強く押します。

カーライフ・サポートネットに感謝http://www.carlifesupport.net/engine%20kiso_pistonring.html

 上下する直線運動だけではここも実に巧みです、爆風が広がる力を直線運動ではなく、角度をもたせて回転を生んでいます。この構造を〈クランク〉といいます。
 クランクは〈爆発力〉をシリンダー内で動力に変えるシステムに比べると地味な感じがするかもしれませんけど、〈直線の動力〉を〈回転の動力〉に変えてしまうシンプルな仕組みは秀逸です。私が中学の頃エンジニアリング系の学校に進もうと考えたのは、このクランクのシンプルな発明に魅了されたことが大きかったと思います。

 ※

 以上、かなりシンプルにしてまとめたのですけど、エンジン・内燃機関の基本構造は
〈爆発:シリンダー〉⇨〈上下運動:ピストン〉⇨〈回転運動:クランク〉
の三つです。
 ※マツダ社が開発したロータリーエンジンというとても画期的な内燃機関があるのですけど、それはいずれまた

 ここでwikipediaの動画をご覧ください、何がどうすごいのかを知らずに単に動画をみているだけでは、見えなかったものが見えてくると思います。みたらまた戻ってきてくださいね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/

 この基本構造に加えて、効率的に爆発させるためにガソリンをうまく空気にまぜてシリンダー内に噴射するシステムも必要です。

 何しろ爆発させているわけですからすごい熱量です、それで水を循環させて冷やさなくてはいけません。

 一つの部屋で爆発させるよりいくつかの部屋(シリンダー:気筒)に分けた方がよいことがわかったので、今の車は4気筒とか6気筒という様になっています、それぞれのシリンダー・気筒の爆発と回転のタイミングをうまく調整していく必要もあります。

 爆発させたあと残ったガスを外に出して、新しくガソリンを含んだガスを吸入しなくてはいけません。

 爆発させたガスは高温で臭いもありますから、マフラーといってそれをうまく処理して排気するシステムも必要です。

 そういういろいろなことを連続でどんどんすすめていくので、エンジン・内燃機関はとても複雑な構造をしています。
 

 
 その結果、ガソリン車のエンジンルームはいろんなものがぎっしり詰まっています。下の方にも複雑な仕組みが連なっています。

 それに比べて、EVのモーターは小さくシンプルです。上のガソリン車と同じ大きさの車ですけど、そのエンジンルームに比べて、モータールームはスカスカな感じがしますね、左側やや前方の四角いヘッドになっている部分がモーターです。

 モーターははじめから回転運動になっているので、エンジンの様な複雑な構造を組み合わせていく必要がないからです。爆発させている訳ではないので排気ガスも出ませんし、熱も内燃機関の様な超高温になることはありませんから、付随するシステムもシンプルです。

 もちろんその分、故障も少なくなります。

 というようにここまで書いてきて電気自動車の構造のシンプルさと内燃機関の構造の複雑さの違いを感じていただけたと思います。

 もちろん時代はシンプルな方、電気駆動の時代にすすんでいくでしょう。

 電気自動車の課題は動きそのものではなくエネルギーを供給する〈バッテリー〉側です、これからさらに進化していく必要があるでしょう、それについても機会があればいずれ。

 とはいえ工学系の私が、より心動かされるのはエンジン・内燃機関側です。

 人間が生み出してきた複雑で美しい構造だと感じるからでしょう、その進化した構造が〈ロケットエンジン〉です、巨大なこのエンジンの前にたつといくらでも眺めていられます。
 これは日本が開発したH2Aエンジンです。

wikipediaに感謝して

 工学系にすすむ人たちがどんどん減ってきているといいます。

 ぞくぞくする様なエンジニアリングを伝える人がとても少ないからでしょう。

 以前〈沖縄から宇宙飛行士をプロジェクト〉を推進していた時、たくさんの子どもたちが工学を目指しました。

 たのしい教育研究所がとても忙しい頃、またあのクラスのイベントを実施したいという申し出がありました。残念ながらお受けすることはできなかったのですけど、またそろそろああいうビッグイベントもまたやってみたい気がしています、興味関心のある方達がいたらオファーしてください、真剣に検討します。

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