楽しい教育の発想法@板倉聖宣「この教育の曲がり角は、いつからの曲がり角なのか?」月刊たのしい授業から①

 今からほぼ40年前、板倉聖宣が「せっかく正月なんだらか〈十年先、百年先のこと〉を考えてみよう」と書き始めた話があります。
 長い歴史の流れの中で今の教育を眺めるという意味で、今でも全く古い内容ではありません。
 1984年1月の「月刊たのしい授業」からです。

 今でも古くない話だと思います。それはつまり、日本の教育があいかわらず同じ問題・課題を抱えたままだということ、あるいはその問題・課題がどんどん膨らんでいるということなのでしょう。

 ものの見方・考え方はあまり必要ない、「ノウハウ」を知りたいんだと考える人がいたとしたらもったいないことです。実践力に〈理論〉が加われば、未知の状況へ対応する力も高まるからです。
 読んでみてください。前半部を校正し「楽しい教育の発想方@板倉聖宣「この教育の曲がり角は、いつからの曲がり角なのか?」と題して二回に分けて紹介します。

 個人的な話を加えさせてください、板倉先生のこの話の3ヶ月後、私は自然豊かな小学校に採用されることになりました、個人的にもエポックとなる年です。

追記:『月刊たのしい授業誌』は私が座右にしていた頃とだいぶ違ってきたようですけど、刊行は続いています。興味のある方は手にしてみてください https://amzn.to/4epAXkm

板倉聖宣 1984.1
 1年にいっぺんぐらいは、十年先、百年先のことなども考えてみるといいのではないかと思います。そんな大風呂敷はふだん考えてもしょうがないのですが、せっかく正月というのがあるのですから少しのんびりと考えていただけるといいと思うのです。
「新年だとかなんだとか、そういう行事にとらわれるのはけしからん」という意見もありますが、私は「行事も行動のキッカケとして大いに活用すればよい」と考えているわけです。

 

曲がり角のむこうは……
 最近いろんな所によばれてお話することが多いのですが、そこに集まる人たちの多くが、教育の未来をきわめて暗いものとしてイメージしているように思われます。
 500人とか1000人といった幅広い人たちの集まる集会にもよばれたりするのですが、そういう所の主催者のあいさつなどを聞いていても「教育は今、重大な曲がり角にきている」と考えられていること、そして「曲がったその先は暗い」という感じをいだいていることがわかります。
 みんなが未来を暗いものとしてしか考えられない時に『たのしい授業』なんていう雑誌を出したりするのは馬鹿みたいに思われたりもするでしょうが、しかし「こんな時だからこそ少しは明るい話を聞きたい」という期待もあって、私なんかがよばれるのかもしれません。
 そのせいか「これからの教育」といった題を、しばしば与えられます。
「教育が大きな曲がり角を曲がろうとしている」あるいは「すでに曲がったのかもしれない」ということは、はっきりとではなくとも多くの人が感じていると思います。私もそう思います。しかし多くの人は、「曲がった先が見えない」ということで大きな不安をいだいているように思われます。自分たちが曲がるという心配よりも「子どもたちが曲がらされる」という心配ですね。
 年配の先生たちは「戦後、自分たちが築いてきた民主教育というものが崩されてゆくのではないか」という不安、また若い人も意欲的な人たちは、民主主義の流れを守ろうという気持ちから、同じような不安をもっています。
 そして、現在の不安が深刻なのは〈これまでのような論法では未来を明るく展望することができない〉というところです。いろいろな問題に対して「政治の中枢が悪いのだ。社会全体に問題があるのだ。これらから子どもたちを守るのは、大変だけれどもそれは可能だ。がんばろう」ということで、かろうじて未来に明るさを見出してきました。
 そういう先生も親も「自分たちこそ本当に子どもたちの立場に立っていいことをしてきた」という誇りをもってきたんです。
 ところが最近の情況はちょっと違ってきました。
 子どもたちは、政治や社会に対しての抵抗もあるわけですが、もっと直接的に学校とか先生や親に対して抵抗を示すようになってきた。それが校内暴力とか家庭内暴力とかいわれるものです。
 今まで「いいことをしてきた」と思っていた人々にとって、この問題はショックです。
「それもやっぱり政治や社会のせいだろう」といってもまじめに考えればそれだけではすまない問題だということがわかりますから、それで自信をうしなってしまう人が沢山いるわけです。「どうしていいかわからない」ということになれば、曲がり角の先は一層モヤモヤして、暗いものにならざるを得ないわけです。

 

はじめての大きな曲がり角
 この問題を解くカギは、曲がり角といわれるものが「いつからの〈曲がり角〉なのか」というところにあるように思います。

次回に続く

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楽しいのが自由研究⇨問題「水と油と氷」@メルマガでとりあげた授業から

 自由研究についての記事がたくさん読まれる頃になってきました。そのせいもあるのでしょう、前回のメルマガ〈授業の章〉のタイトルに興味関心をもった方達からいろいろ問い合わせがとどいています。
 たのしく賢くなっていく教育に興味のある方はまず一年〈たのしい教育メールマガジン〉を購読してみてください。こどもたちと一緒にたのしく賢く元気になっていく方法、ものの見方考え方などを毎週学ぶことができます。県内だけでなく他の県の方たちにもたのしんでもらっている人気のメルマガです。

 さて「水と油と氷」という第266号の記事に興味をもってくれた方からとどいた問い合わせに答えて、紹介しましょう。

 前半を再校正して紹介します。

〈たの研/たのしい教育研究所〉の授業は特別な道具・器具や技術を必要としないものです、このプログラムも学校だけでなくキッチンでたのしむことができます。まず自分で予想を立てて実験してみて、これは子どもたちにも伝えたいと思ったら利用してください。その時には「たのしい教育研究所のプログラムである」と伝えてぐさいね。

はじめに

夏休みなので、キッチンで簡単にできる実験を紹介します。
コップと水と油と氷があればOKです!

みなさんは「水と油は混ざり合わない/混ざりにくい」という話を聞いたことがありますか?

はじめにこういう実験をしてみましょう。
そうです「まず予想を立てること」が大切です。

問題1
コップに同じ量の水と油を入れると、コップの中はどうなるでしょう。
水と油は上下にはっきり分かれるでしょうか、それとも混ざりあってしまうのでしょうか。
ホンの少しは混ざるとか虫めがねなどで確かめると混ざっていることがわかる、というようなことではなく、見た目で「ここは油が集まっている、ここは水があつまっている」というように分かれてみえるのかどうかで判断しましょう。

 予想
  ア 油が下、水が上
  イ 水が下、油が上
  ウ 最初に注いだものが下、次に注いだものが上
  エ 混ざってしまってどっちが上だかわからない
  オその他 右と左に分かれる・シマシマ状にわかれる など
   〔                       〕

 どうしてそう思いましたか?

実験1.

①まず油を注ぎました。


②次に水を注ぎます。

さぁ、どうなるでしょう、予想変更もOKですよ!

⬇︎

⬇︎

⬇︎

⬇︎

 [結果]

真ん中あたりでハッキリと層が分かれていることを確認してください。
上が油、下が水とわかれています。

実験2

次は、はじめに水をそそいで、あとに油をそそいでみます。

2-① 水をそそぎました。

2-② 次に油をそそぎますよ、さぁ、どうなるでしょう。
 予想変更OKです!

⬇︎

⬇︎

⬇︎

⬇︎

 [結果]
 あらら、何だかぐちゃぐちゃになっていきますね。
 もしかすると〈オ.その他〉が正しいのかもしれません・・・

 しばらくするとおちついてきましたよ⇩

今回もハッキリと〈油が上〉、〈水が下〉に分離しました。

 ⭐️結果⭐️
どちらを先に入れても、水が下、油が上になります。

問題2 水と油の入ったコップ(すぐ上の写真)の中に〈氷〉を入れてみましょう。氷はどうなるでしょう。

 予想 氷は
  ア コップの底に沈む
  イ 水と油の中間で止まる
  ウ 油の上の方に浮かぶ
  エ その他

 どうしてそう思いましたか?
 あなたの考えを聞かせてください。

 これは学校の先生たちを集めたワークショップでも、とてももりあがりました。
 興味のある方は、予想を立てて、自分で確かめてみましょう。

〈たのしい教育研究所〉夏の講座8/11(日)はたのしい自由研究の題材になるプログラムが満載です。来週あたりから申し込みがスタートする予定です。
 興味のある方は日程の調整をしておくことをおすすめします。

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自由研究@国語:梅の季節でもないのにどうして〈梅雨〉?/〈芒種〉と紫陽花

 沖縄は梅雨の季節に入りました、今日はしとしとと降っています。教師をしていた頃「先生、どうして梅の花の時期ではないのに梅雨っていうんですか?」と聞かれたことがあります。

 皆さんは不思議に思ったことはありませんか。

 沖縄に梅は少ないとはいえ、桜の前に梅の花が咲くことからすると、二月前後に咲く桜の花をみれば、五月六月が梅の花の季節ではないことはわかります。

 よその県では五、六月に〈梅〉が咲くのか?
 いいえ、北海道でも〈桜〉は五月前半です。温暖化で開花が早まっているとはいえ、教科書的には古くから《桜は四月》ですから、梅の花はその前の三月あたりでしょう。

 すでに雑学本などでどうして「梅の雨」というのか、その理由を知っているかもしれません。

 今回書くのは雑学本の引用ではありません、私がいろいろ調べて、その子に答えた内容を思い出して、再び調べ直して書いています。

         「いらすとや」に感謝して

読み方から不思議

 考えてみると梅雨(つゆ)という文字は発音からして不思議です、音読みでも訓読みでもありません。「ばいう」という

 読み方もあるのですけど、多くの人は普通に「つゆ」と読んでいます。
 梅は〈つ〉とは読まないし、雨を〈ゆ〉とも読みません。

 中国語読みかな、と思ってA.I.で調べてみると梅雨は中国で〈メイユー〉です。中国語の発声はイントネーションが独特とはいえ、雨が〈ユー〉ということですから「つゆ」の〈ゆ〉は中国語からきたのかと考えられないわけではないのですけど、半分だけ中国語読みというのは無理がありそうです。

 梅雨をどうして「つゆ」と読むかに関しては三つくらいの説があって、その二つは

 1.梅の実が熟し潰れる時期だから「潰ゆ(つゆ)」
 2.カビのせいで物がそこなわれる「費ゆ(つひゆ)」

です。
私はその説からとるとすれば3つ目の

 3.露(つゆ)にぬれる時期だから

をとることにしています。
〈梅雨〉という文字に、雨や湿気でしたたる「露」の読み方を〈当て字〉したというわけです。

どうして〈梅雨〉?

 では梅の花の頃ではないのにどうして「梅」と「雨」なのか?

「梅雨」という言葉は中国から入ってきました、遣唐使が持ち帰ったという話です。

 その頃、中国で栄えていた長江下流でした。その中国の長江下流地域で梅の実が熟す初夏の時期の長雨なので梅雨という字になったというのです。

 なるほど『梅の花』ではなくて梅の実か・・・

 それなら日本でも同じです。

 農林水産省のページに、こうあります。

梅干しや梅酒、梅シロップ等様々な料理に使用される梅ですが、梅の旬は5月~7月とまさに今が旬です」https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/kansho/kakudai/ume.html

 

 中国から来た五月頃の長雨の〈梅雨〉という言葉は、日本でも〈梅の実の熟する頃の長雨〉ということで受け入れられて、「露」の読み名を被せて『つゆ』と読んだ、というのが、私の理解です。

 一つの言葉でも、その語源をみていくと、いろいろなことに気付かされる。いにしえ(古)の人たちの思いや発想の面白さを味わうことができます。

 みなさんが疑問を感じる言葉があったら、たどってみるとたのしく賢くなりますよ。

 

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エイリアン プランツって知っていますか?/たのしい植物入門

 エイリアン(1979年アメリカ)という映画を観たことがあるでしょうか。宇宙船ノストロモ号がある星で異星人の卵を発見し、その後エイリアン(下図)に次々と襲われていくSF作品の傑作です。

 その映画に登場するエイリアンは恐ろしい怪物です。

 ではエイリアン・プランツ(Alien plants)とは何でしょう?

 plants(プランツ)は植物を意味する英語です。エイリアン プランツというと何か恐ろしい植物をイメージするかもしれません、たとえばアカイカタケ⬇︎(wikipediaより)のように。

 違います。

 エイリアンというのは本来〈外国人/外来種/外来生物〉を意味する言葉で、入国管理局などでは外国籍の人物として使用されることもあります。

 帰化植物をエイリアン・プランツと表現することがあります。

 けれどそれは侵食してくるイメージを伝えることがあるので、naturaized-plants(ナチュライズッド-プランツ)と表現した方がよいでしょう。

 最近、たのしい教育研究所(RIDE)の応援団員Hさんが、とてもおいしいトウモロコシを持ってきてくれました。

 トウモロコシは沖縄原産の植物ではありません、アメリカ大陸原産です。

 ではゴーヤーは沖縄原産でしょうか?

 いいえ、インド原産です。

 外来種を入れない、ということになるといったいどういう植物や動物が残っていくのでしょう。

 そもそも私たち人間も、日本にとって外来種です。

 地球上に多様に広がる人類は、もともとアフリカに住んでいた類人猿とホモサピエンスの中間アウストラロピテクス・アファレンシスのルーシーが起源です。

ルーシーの骨の化石 wikipediaより

  外国からやってきた人たちをエイリアンと呼んでいる人がいました。
 フォーリナー(foreigner)という普通の言い方があるのですから、あえてエイリアンと呼ぶことはないのに、と感じてしまいます。

 以前も書いたことがあるのですけど、種というのはいろいろな交流の中で、よりその環境に適したものたちがその生命を受け継いでいくわけです。

 地球上のいろいろな問題を見るにつけ、よそから来た者たちを排除するのではなく、よそから来た者たちとともともと住んでいたものたちが仲良く融合して暮らすということがとても大切なことだと思えてなりません。

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