わたしが教師をしていた頃「最近の子どもたちは授業しているのに、聞いてくれない」と文句をいっている教師が何人もいました。身分的に安泰な教師という仕事をしていると、授業は〈やればよいもの〉〈すすめればよいもの〉で《子どもたちは自分の授業をちゃんと聞いてあたりまえ》と考えてしまう人がたくさん出てくるのも無理はないかもしれません。
子どもたちが学校を拒否する様になり、学校は子どもたちに魅力あるところでないとまずいことになると気づいた教育行政の人たちは、教育を改革しようとし、たとえばそれは、修練的な部分を多く持つ教育内容を精選して授業時数を減らし、創造性・自主性が生まれるもの、子どもたちの好奇心を高めるものにしようと考えました。教育課程(カリキュラム)を見直して「生活科」が生まれたのも「総合的な学習」が生まれたのも、その動きの一つです。
その改革の流れは学校を落ち着かせ、登校拒否の子どもたちの数は減っていったのですけど「日本の子どもたちの学力は低下している」という、根拠がよくわからないキャンペーンで、数年後にはまたキツキツの教育に戻りました。敬愛する遠藤先生は「全国学力テストの得点結果を下げるのは簡単だよ、そういう問題をつくればよいのだから」と話していました。世界的な学力テストの結果が下がったという話もあったのですけど、教育課程が変わってしばらくはそういう混乱も起こるものです。もっと長期でみないと効果はわかりません。しかも、そういう混乱の中にあっても日本の子どもたちは世界の中でトップ集団の中にいたのです。いくらかの低下をとても大きくアピールし「子どもたちは円周率も言えなくなった」と騒ぎ、多くの人たちは「それは大変なことになったぞ」と考える様になりました、今もその揺れ戻しの中にいます。
これは文部省の事務次官(官僚のトップ)をしていた前川喜平さんが対談の中で出したデータと、その時の言葉です、引用させていただきます。
前川:本当にざっくり言えば、ゆとり教育でなだらかになった。脱ゆとり教育でまた増えたと。
おおた:踊り場みたいなところが、ゆとり教育が始まった2000年前後で、脱ゆとりだって言い出したのが2006年ぐらいでしたよね。
前川:その辺からなんですよね。
おおた:なるほど、あ、ちょうどそういう時期なわけですね。
前川:実際には、一番底をついたのは2012年度。13年度から増え始めてるんですね。そこで政権交代がありました。
https://gendai.media/articles/-/101624?page=2
教育が大きく変わろうとしていた時にその教育を受けていた子どもたちは「ゆとり世代」とレッテルをはられ、イヤな思いをしているという話を耳にします、かわいそうなことです。
もっと先生たちと子どもたち、保護者ににゆとりができて、選択肢の幅が増えていかなくては、疲弊が続き、大きな問題も起きるだろうと真剣に心配しています。
そういう時代の変革を待つのではなく、教師一人ひとりが魅力ある教育ができるようになることを目指して、たのしい教育研究所は活動しています。
では、教師が自分の授業を魅力あるもの、子どもたちが受けたくなるものにするために、どういうことをすればよいのでしょう?
長くなりました、続きは次回にしましょう。
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